まんくら山撤退記
大崩山山系はアケボノツツジの旬の季節である。
それで咲き誇るアケボノツツジを見に行こうと思った。ただ本日は行動できるのが午後だけなので、さすがに午後に大崩山に登るわけにはいかない。
それゆえ近場の山に登ることにするのだが、それだと「まんくら山」が適切ということになる。
「まんくら山」は私は登ったことはないのだけれど、延岡周囲の山の情報が豊富で、重用させてもらっている行縢探検倶楽部に、まんくら山がアケボノツツジが満開だという記事が載っていた。
まんくら山は登山ガイド本には載っていない山で、正規の登山道はないそうである。そしていくつかのwebページを検索しても、はっきりしたコース紹介は載っておらず、ヴァリエーションで登ることになる。
それでKashmirを開き、地図を検討してみる。
最初のピークである1099ピークへは、青線(1)で示した尾根を行けば、そのまま稜線に入るので、これが登山道としてはもっとも有力であるし、たぶん行縢探検倶楽部で使われた道はここと思われる。
ただし、この道は入り口が分かりにくいとも、別のwebページで紹介されていた。
それで私は以前に気になっていたルートを使うことにした。それは黄色線(2)で示すルートである。この尾根を使えば稜線まで最短距離で登れるし、それになによりも取り付き点がわかりやすい。この取り付き点は、以前に落水の滝まで行ったときに確認していたのである。
そういうふうに計画を立てて、出発。
外は小雨が降っていたが、午後には晴れるとの予報であったから、そのうちに晴れるであろう。
祝子川に沿って車を走らせ、落水の滝への林道をいき、ここが駐車場になる。
右手のほうの草ぼうぼうの林道が落水の滝への林道で、この林道の途中にまんくら山への登山口があるはず。
林道を観察しながら歩いたが、やはりまんくら山への登山口らしきところは見つけられなかった。
それで予定通りにこの、「落水の滝」の標識のある渡渉点から登ることにする。ここをそのまままっ直ぐ行けば落水の滝であり、私はまんくら山を目指して、右の尾根の方に入った。
この尾根を登っていくうちに、荒れ果てた林道へと出た。
この林道が尾根筋を離断しており、小さな崖となっている。その先の尾根が樹々が密集して、ジメジメした感じのなんとも暗い尾根だったので、使う気がおきなくなった。そこで一本ほど左の尾根に入ることとし、しばらく林道を歩き、それから明るい尾根に取りついた。
まんくら山は南側からは形が単純なので、上のほうへと、とにかく尾根を登りつめていく。地図をみればこの尾根は等高線が密なので、かなりの急傾斜のはずだが、その通りにいくつも崖が出てきて、これを木の枝、木の根をつかみながらよじ登っていく。
そして標高が950mを越え、前方が明るくなってきたのでようやく稜線が近付いてきたと思ったら、いきなり屏風のごとき巨大スラブに突き当たった。
ということは1099mピークの頂上直下に出てしまったわけだ。
おかしいな。地図によれば、もう少し東寄りの稜線に出るはずだったのだが、妙なところに出てしまったぞ。
地図でなく写真で示すなら、私は今赤丸印をつけたところに出たわけだ。
一番最初に示した地図の、赤い細線が私が実際に登ったルート(GPS記録)であり、これでみてもここに出るはずはないのだが、それでも現実は現実である。山では現実がなにより優先される。
さて、この岩をやりすごさないと稜線に出られないので、巻き道を探すが、右も左も岩が切り立っていて、巻くことはできなかった。
それでも左に見える草つきを強引に登り、それから右斜め上方向にトラバースしていけば稜線に出るとも思ったが、…今は天気予報が外れて、ずっと雨が降っている。ゆえにスラブは全面的に濡れていて、そんなずるずる滑る岩をトラバースしていくのは命がけの行為になってしまう。いくらなんでも、まんくら山ごとき(失礼)に命をかけるわけにはいかない。
それゆえ稜線に出るには、もう少し高度を下げてから谷を一つ横切り、その次の尾根を登れば問題ないのだろうが、このずっと降り続く雨に、登山のモチベーションもすっかり下がってしまった。そこまでしてまんくら山に登る気もしなくなり、おとなしく元来た道をたどって下山することにした。
まったくもって、全身は濡れそぼり、ズボンは泥まみれになり、そして目当てのアケボノツツジは見られないと、さんざんな登山であった。
う~む、計画性に問題があったか。
それにしても、落水の滝への渡渉点からの、まんくら山登山ルート。地図では使いやすそうなのに、ぜんぜん使われた形跡がなかったのは、ルート自体に問題があったからなのだな。
まったく、このルート使えません。使っちゃいけません。まんくら山の登山道を検索してこのページを訪れた人に、ここは使えませんと、再度重ねて書いておこう。
しかしながら、このルート。渡渉点の少し上に、宝物のような風景があった。それを紹介しておく。
落水の滝へ至る林道は、もはや使われることなき廃道になっているが、それでも以前は活発に林業が行われていたようで、人家の跡が残っていた。
これらの石壁は家々の土台のようであり、ほぼ10軒くらいが建っていたようであるが、今ではそこに建っていた家屋もほとんど痕跡はなくなっており、この石組だけが段々になって残っているのみ。
まわりはブナやカエデの新緑が取り囲み、そして岩々には苔が覆い、人去りしあと積み上げて来た歳月の長さを静かに物語っていた。
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