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April 07, 2011

人類とともにソメイヨシノは滅びる

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 桜の品種は多いけれど、春の桜はいつのまにかソメイヨシノということになっている。
 ソメイヨシノは、花が葉よりも先に出て満開となることと、花弁が大きいことの二つの特徴をもっており、そのため満開のときは、樹が花に満ちる華やかな姿となることから、春のめでたさの象徴となり、日本全国に植えられることになった。

 ソメイヨシノはまさに「見る」ためだけの観賞植物であり、特殊な桜でもある。あくまでも観賞用の特化した桜であり、それ以外の力には乏しく、なんといってもソメイヨシノは自種で交配することは出来ず、すなわち自分の種をつくることが出来ない。
 種をつくれないということは、自分の子孫を残せないということであり、じっさいソメイヨシノは、純系の一種しか存在しない。今あるソメイヨシノは元は一本であり、日本中にあるソメイヨシノは全て同じものなのである。

 結実した種を使って子孫を増やすことが出来ない以上、ソメイヨシノがどうやって数を増やしていったかといえば、これは全て人間がいちいち山なり庭なり公園なりに枝を挿すか接ぐかして育てた結果なのである。他の植物のように種を動物や鳥が運んで行って、自然に増えていったものではない。

 そしてまたソメイヨシノは極めて人工的な植物ゆえ、病弱でもある。寿命はもって100年程度とされており、ソメイヨシノの老木というものは存在しない。
 ソメイヨシノは人間が植え、人間が面倒をみないと、育つことも花を咲かせることもない、その存在がすべて人間にかかっているという植物なのである。

 春の夜など、満開のソメイヨシノは妖しいばかりの美しさを見せ、その美しさに魅了されて、人はソメイヨシノをずっと育て続けてきた。桜を愛でる人によって、ソメイヨシノも栄えて来たのである。

 ただ、この共栄関係も永遠には続かない。

 現在地球の上で活発な活動を行っている人類も、やがては種の寿命は確実に来る。人類が滅亡する日、その日を迎えてから、ソメイヨシノは一本一本と数を減らしていき、100年ほどすれば最後の花が落ちたのち、最後の樹が枯れ、そして永久に地球から姿を消す。
 人類が愛したソメイヨシノは、人類とともに滅ぶのであり、それはまさに人類の弔花として用意されたもののようにも思えてしまう。

 私はその日を迎えることはないが、…しかしその最後に咲くソメイヨシノは、今咲いている、今見ることのできる花そのものでもある。

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雑感」カテゴリの記事

Comments

今年の桜は例年と違って見えます。
あの災害があったからでしょうけど
とても美しいです。
あと兄貴の写真もよろしい・・・。
私の自宅は土々呂にあるのであの
赤い鳥居はよくみてますよ。
あの農道を通って都農ワイナリーにも行けますよ

Posted by: キヨシ | April 07, 2011 10:11 PM

まったくあの災害以来、世界が、自然が、社会が、人生が(…あといろいろ)、違ったように見えてきました。
しかし災害がどうあろうが、いつも通りに季節はめぐり、樹々は芽吹き、花は咲くわけであり、私たちの生きているところは、何か一本の太い確かなものが通っているのは事実であります。

写真の桜は延岡城山公園の夜桜で、今週末くらいがピークだと思います。
週末は天気もよいようなので夜はにぎわうことでしょう。

Posted by: 管理人 | April 08, 2011 12:41 PM

この週末暑いくらいの陽気で、快晴の宮崎でしたが、京都はいかがでしたでしょうか。
京都のソメイヨシノ、楽しみにしてます。

Posted by: ホワイトアスパラガス | April 10, 2011 04:10 PM

京都は訪れる3~4日前から急に暖かくなり、一挙に桜の花が開いたそうで、ドンピシャのタイミングで京都を訪れることができました。
桜色に染まった、京都の風景を、昼編と夜編に分けて、UPする予定です。

Posted by: 管理人 | April 11, 2011 11:25 PM

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