祖母山ミステリ解決編
このブログはカウンターの動きをみていても分かるように、人訪れること少なき過疎ブログであり、世間の片隅にひっそりと置かれているものなのだが、それでもエントリする記事に、人の興味を引くようなものが時にあるようで、複数の人から直に反応のあった記事がひとつあった。
今年の1月に祖母山に登ったときの記事「祖母山ミステリ」がそれであり、「あれ、真相はどうなんですか?」と幾人もの人からきかれた。
九州の奥山、雪の祖母山で、一人の女性が忽然と姿を消すミステリであり、謎の面白さとともに、解答をほったらかしておいたから、続きが気になったのだろう。
たしかに、世のミステリ、-とりわけミステリ小説はまずは解答編から書かれて、その解答から筋を組立てるのが常道であり、解答は必ず用意されている。
だが、小説とかではなく、現実に存在しているミステリは、はっきりとした解答がないまま終わってしまうのが殆どなのであり、今回の「祖母山ミステリ」も、まさか消えた女性登山者が「真実はこうでした」と名乗り上げるはずもなく、真相は闇のままに終わるに決ってると私は思い、「解答はありません」と答えていた。
しかし、あれから3ヵ月して、ひょいと解答が舞い込んできた。
今回はそれについての話。
「祖母山ミステリ」に出てきた役者は、私・Tさん・失踪女性・山下ガイドツアーの4組なのであるが、失踪女性の目撃者(?)であるT(=しゅぷーる)さんが、たまたま私のweb記事を読んで、コメント(祖母山ミステリのコメント欄参照)を寄せてくれた。感謝である。
それによれば、午後6時半、日の暮れた祖母山の稜線を歩いていた私を、テントのなかのTさんは、なぜか私が女性と二人連れで登っていると勘違いしたとのことで、その勘違いのまま、翌日下山の際に会ったときに、私に「昨日はもう一人女性が登っていましたね」と言ってしまった、と。
このTさんの言葉に加え、私は前日稜線を登っているときに、登山ツアーリーダーの山下さんから「今、祖母山を登っている女性がいる」と聞いていた。
それゆえ、行方不明の女性が一人いると思ってしまったわけである。
今考えるに、山下さんの言った「今、祖母山を登っている女性がいる」というのを、私は現在進行形と思い、すなわち Now one woman is climbing to Mt. Sobo.と理解していのだが、じつは完了形、Now one woman has climbed Mt. Sobo.だったわけだ。
この二つの勘違いにより、実在しなかった女性が、祖母山に出現してしまったわけ。
まったく、当事者の錯覚により、実際には存在しなかった人間が存在してしまったという、ガストン・ルルーの古典的ミステリ「黄色い色の部屋の謎」みたいな話だったわけだ。
(…「黄色い部屋の謎」のネタバレになってる気もするが、あの小説、古典的ミステリの名作というわりには、トンデモ系ミステリだから、それくらいどうでもよかろう。私は小学生のときに読んで怒った記憶があるが、大学生のときに読み直して、もっと怒った記憶もあることだし。)
というわけで、それなりに反響があった「祖母山ミステリ」はこういう解答編があったわけであります。以上、報告。
ただし、私としては、余計に恐くなってしまった感がなくもない。
というのは、夜中に山のなかでテント泊した人は誰でも経験があると思うが、人里から離れた地のテント泊って、すごく感覚が研ぎ澄まされるのが常なのである。
ちょっとした音、ちょっとした雰囲気、ちょっとした樹々の揺れ、ちょっとした動物達の動き、そういうものがテントのなかにビンビンと響いてくる。
だから、雪の祖母山のなか、一人テントにこもって寝ていたTさんが、突如異様な雰囲気に目が覚め、そこでテントの外を歩いていた私を二人連れと認識したなら、…私になにか変なものがついていたことは、十分にありえるんだよなあ。
まあ、その後、山小屋に泊まっていた私に妙なことは起きなかったので、それはそれで完結しているのだろうけど、私にとっては、「Tさんがもう一人いると思ったのは何故だ?」と、当事者としては思ってしまい、個人的にはまだミステリは完結しない、そういう「祖母山ミステリ」であった。
それにしてもあの1月の降雪の祖母山、「マニアな人」しか登らないような雪の祖母山に登ったのは3組のみ。その3組が、それぞれwebページを持っていたというのも面白い話である。
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Comments
ずーっと このミステリー気になってまして、
(ほんとに幽霊かもしれない)と祖母山の幽霊話をネットで探したりもしてました(笑)
それにしても、女性でもこうして、一人で登山を楽しめるというのは 素敵ですね。
Posted by: ホワイトアスパラガス | May 04, 2011 04:54 PM
おや、ここにも祖母山ミステリが気になっていた人がいましたか。
実は幽霊であったという解答も、1%くらいは残っているかも。
ちなみに祖母山の向かいにある傾山は遭難者が出たこともあり、山小屋に「出る」という話は有名です。
女性のテント泊単独行。長野の日本アルプスでは何人か見かけことはあるのですが、九州では初めてでした。
たぶん九州ではこの人だけのような気がします。
よほど体力と精神力が強い人だと、感心しました。
Posted by: 湯平(管理人) | May 04, 2011 11:15 PM