コミック: テルマエ・ロマエIII (著)ヤマザキエリ
コンビニに行くと、この新刊を含め、ずらりとI巻・II巻が売っていた。ローマ時代の風呂が題材という、極めてマイナー部門のコミックだったはずだが、しらぬまに人気作品となっていたのか。
I・II巻では、タイムスリップ能力を持った帝政ローマ時代の風呂設計技師ルシウスが、日本の先進的風呂技術を古代ローマに移植していき、もともと風呂好きな民族であったローマ人たちに、さらなる幸せと喜びをもたらすといった物語であったが、III巻ではこれにローマの政治史が加わっていき、さらに物語の幅が広がってくる。
時代背景はローマの最盛期五賢帝時代であり、ルシウスの実質的なオーナーがハドリアヌス帝という設定がまずよい。ローマの歴代の皇帝のうち「新しもの好き」で芸術家肌の皇帝といえば、第一にこの人だろうから。(ま、ネロ帝もいるけど、ネロ帝の享楽的気質は、真面目なルシウスとはあわないだろうし)
ハドリアヌス帝の庇護のもと、技師ルシウスは風呂文化を改良させていく。ルキウスによって建てられた風呂はとても気持ちのよいものであり、気持ちのよい風呂は、それだけで人々の心と暮らしを豊かにする力をもっている。こうしてハドリアヌス帝治下のローマは平和と繁栄を享受していくわけだが、なかにはそれが気に食わぬ分子もいて、ルキウスの身にいろいろと事件が降りかかってくる、それがIII巻の主筋である。
風呂話にしぼったI・II巻とちがって、III巻ではローマの歴史もからんでくるので、ローマ史好きのものとしてはより面白く感じられる。
そしてIII巻ではハドリアヌス帝に加え、次皇帝アントニヌス・ピウス、その次の皇帝マルクス・アウレリウスもちらほらと姿を出し、どうやらこの物語は長期ものになる雰囲気もでてきたが、さてどうなることであろう。
(おまけ)
このコミック、人気は確かなもので、映画化が決定されたそうである。
技師ルシウス役は阿部寛とのことで、彼のローマ人的風貌はたしかに適役に思える。
しかし、そうなるとその雇い主のハドリアヌス帝が問題だな。阿部寛より威厳がある、彫の深い風貌の役者というと、役者の選択がそうとうに限られてくる。私が思い浮かべるに、渡辺謙くらいしか思いつかんが、…さて誰が選ばれるのか。
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テルマエ・ロマエIII