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April 02, 2011

恐怖:クレーの絵 and 津波実況中継

 パウル・クレーの絵は夢想的、夢幻的なメルヘンチックなものがよく知られているけど、けっこう恐い絵も描いている。
 その恐い絵のなかに、神経を直接キリキリと締めあげるような絵が一枚あって、最初に見たときから、印象深く心に残っている。その絵には、「恐怖」の感情が満ち、「恐怖」の叫び声が聞こえそうな迫真性があり、そして題名もそのまま「恐怖」となっている。
 この絵である。

【クレー作 「恐怖」】
Klee_fear_1


 この絵において、恐怖の叫び声を上げているのは、絵のなかの一点、赤い筋が入った小さな球状の物体なのであるが、形態からして受精卵にしか見えず、すなわちこれは生命の最も根源的な姿である。
 その生命が、今もはや逃げ場もないところに追い詰められている。彼を襲っているのは右方から迫って来る、矢印をつけた、多数の触手のようなものであり、そこには無限の悪意、あるいは無限の暴力が感じられる。
 逃げ場もないところで、己の生命が断たれる時間が確実に迫って来ることの、恐怖、そして絶望が、このシンプルにして整然とした絵からひしひしと伝わって来る。クレーの芸のすごさだ。

 クレーは晩年病気とナチスの迫害に苦しめられ、その感情がこの絵の迫真性になんらかの関わりはあるにちがいはない。


 さて、この種の恐怖について、映像を一つ紹介したい。
 見ると、笑ってはいけないと思いつも、つい笑ってしまうのだが、…まあ撮影者は助かったのが最初から分かっているから、それでいいか。
 この動画は今回の大震災の津波を実況中継したもので、最初は津波 キタ━(゚∀゚)━ !!!!! と面白がって部屋から撮影していたのだが、津波はあまりに早く襲来し、あっという間に家の周りも海水で埋まってしまう。のっぴきならぬ事態に撮影者はうろたえ、死の恐怖に声が裏返ってしまう。余裕から恐怖への、この気持の切り替わりのリアルさは、リアルなものだからとしか言いようがなく、そして滅多に記録に残るものでもなく、まさに貴重な映像である。
 撮影者は、しかし精神力と生命力はたいしたものであり、そんな危機的状況でも実況中継は続け、飼い犬まで救助している。将来は大物になる可能性高いなあ。

【東日本大震災 3月11日地震後の津波】

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