コミック:機動戦士ガンダム THE ORIGIN(22) 安彦良和 著
とりあえず、ア・バオア・クー戦での一シーン。要塞に潜入し捕虜となったセイラさんのジオン兵士を前にしての一喝の場面。セイラさんは、なんと気高く、美しく、逞しいことであろうか。
さて、私はガンダムは、なんとなく主人公アムロの成長物語だと思っていたけど、じつはアムロは地球連邦軍最強の武器として成長していっているだけであり、結局のところ物語では「極端に強い」戦術兵器としての役割しか果たしていない。
それに対して、敵役のシャアは一貫して物語を動かしており、すなわちガンダムは、一年戦争を利用した、シャアのザビ家復讐とジオン再興の物語だったのである。そのことは原作でも一応語られてはいたのだけど、THE ORIGINを読むといっそうよく理解できる。
第22巻は一年戦争のクライマックス、ア・バオア・クー戦を舞台としており、実質上ここで戦争の趨勢が決まり、ジオン体制が崩壊していくさまが描かれている。
原作では司令官二人のわきの甘さが目立ち、あまりにあっけなくジオンの体制が崩壊するのであるが、本作のほうでは、キシリア殿はそう甘くはなく、体制崩壊にはちゃんとした理由があったことをサイドストーリーとして書いている。
その理由とは、キシリア体制に反感を持った兵士たちが、絶好の神輿としてかつてのプリンセス「アルテイシア・ソム・ダイクン」を得たことである。この僥倖により、反乱兵士たちの士気が一気にあがり、要塞内で体制が崩壊してしまったわけ。
原作でもセイラさんは気丈な女性であったが、本作ではさらに過激性を増して、やたらに攻撃的、戦闘的な女性として登場していた。それこそ、作中で兄のシャアが「あんなの、アルテイシアじゃない」と嘆くくらいに。
その「強いセイラさん」像は、この反乱軍蜂起のときのための、長い伏線であったことがはじめて本巻で分かる次第。
ガンダムファーストは日本アニメ史上に残る名作だったわけだが、それのコミック化である本作は、あきらかに原作より、深くて、面白い。最終巻になるであるだろう、次の23巻がまた楽しみである。
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機動戦士ガンダム THE ORIGIN(22)
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