雪の祖母山(1) 九合目小屋は寒かった
4週続けての雪山登山である。
さすがに飽きてきた気もしないでもないが、祖母傾大崩山系にこれほどの大雪が積もることは滅多になく、地球温暖化が進む現在、もう二度と経験できない可能性が高い。
そういうわけで、今週も雪山に行くことにした。
情報では祖母山の雪がすごいことになっているらしいので、祖母山に登ってみることにする。祖母山に登るとすると黒金尾根~宮原ルートが第一選択となるが、稜線上の雪はてんこ盛り状態であろうから、行動時間は無雪期の3倍はみておかないといけず、一泊は必要であろう。一泊仕様で用意を整えた。
さて、今週土曜日は半日仕事なので、尾平の登山口に到着するのは午後2時半くらいになる。登りは宮原ルートを使うとして、その時刻の出発では、おそらく稜線上で日が暮れると思われる。稜線上は風が強くて寒いだろうから、日が暮れての行動は短時間にしたい。その場合、稜線にトレースがあれば、それほど時間をかけずに九合目小屋にたどりつけるであろうが、トレースがなく、一人ラッセルだと時間がかかる。
それで本日はとりあえず標高1400mの宮原まで登り、そこからのトレースがあれば小屋に行き、トレースがなければ尾根を引き返して車中で一泊し、改めて翌日登山を行うという、われながら完璧なプランを立てた。
尾平登山口からみる祖母山稜線。
なかなかの雪の積もり具合である。
登山口駐車場には、九州マウンテンガイドツアーの車「山ちゃん号」がとまっていた。傍にテントが張っていたので、おそらく前泊しての早朝出発と思われる。となるとこの人たちは祖母山頂まで行っているだろうから、これはトレースがある可能性が強まった。
宮原尾根上より見る祖母山。
祖母山上部は巨大な岩塊になっていて、その巨大な岩がカチカチに凍っている。
標高1100mを越えたところで登山道は雪道となり、ここでアイゼン装着。
しばらく登ったところ、下山してくるツアー一行7名ほどと出会った。
あいさつしたのち、リーダーと思われる人から「もう一人今登っている人がいますよ。可愛い女性のかたです」と言われる。
私の他にも、日暮れ間際のこんな時間に雪の祖母山を登っている馬鹿、…もとい山バカがいるのかと、ちょっと驚いた。
宮原に到達すると、ここから縦走路に入る。
稜線の縦走路には、しっかりとしたトレースがついていた。先ほどのマウンテンツアー御一行作成のトレースである。感謝。
日はすでに祖母山の裏に隠れており、日暮れは近い。
宮原ルートの難所、馬の背。痩せた岩稜帯である。
このあたりでもう日は沈んでいて、残照の明かりでルートがなんとか見えた。
この一番の危険帯を抜けたところで暗くなってしまい、ライト装着。ここからライトで雪道を照らしながらのカモシカ登山となる。ま、予定通りではある。
九合目小屋近くのテン場にテントが一つ張ってあった。明かりはついていないので就寝中のようである。
ツアーの人が言っていた先行者の人が張ったテントなのだろうかとも思ったが、…それだと、テント設営・食事をすごい時間でやったことになり、どうも計算が合わない。ま、深くは考えないことにした。
暗闇のなかの雪道歩きというあまりやりたくないことをやったのち、ようやく九合目小屋に到着。音楽が鳴っていないので、小屋番の加藤さんは不在のようである。
雪を払い落し、登山靴を脱いで、小屋のなかへと入る。
やはり加藤さんは不在で、そして宿泊者は誰も居ず。本日は私一人の貸し切りのようである。
小屋に入ると大変寒い。部屋のなかの温度計を見ると、-6℃である。
室内でも氷点下というのがすごいなあ。
ストーブをつけて暖を取りたいのだが、本日は管理人さん不在ということで、いつもは部屋のなかにある灯油ストーブがない。薪用のストーブは入り口のところにあるのだが、着火剤も団扇もないので、少々湿った薪に火をつけるのは私には無理である。
これは寒い一夜になりそうだ。
それはともかくとして、なにはともあれ飯だ、飯。
単純にして、カロリー豊富であり、身体があったまる、豚汁を作ろう。
酒は月桂冠の5合パック。これにしたのは深い理由はなく、コンビニによく売っているからである。
豚汁と、茹でた豆腐をツマミに酒を進めるが、これほどまでに寒いと酒にぜんぜん酔わない。摂取したアルコール成分がすべて体温のために使われていくような感じである。
…それにしても寒い。
部屋の温度は-6℃であり、冷凍庫のなかで暮らしているようなものだ。
壁にかけておいたアウターや、帽子、手袋が知らぬまにパリパリに凍ってしまった。金属製のものなどもう素手で触れないくらい冷たくなっている。
北国では室内が氷点下ということはザラかもしれないが、九州人にとってこの寒さは常識外れである。まさに生命の危険まで感じてしまう。
この寒さは耐えがたく、室内にツェルトを張って少しでも暖かくしょうかと本気で思ったが、避難小屋じゃあるまいし、通常の山小屋のなかにツェルト張るのも変な話だと思いなおし、小屋備え付けの毛布をたくさん身体に巻いてさっさと寝ることにした。
痛く感じるまでに冷たい空気に何度も起こされながら、なんとか朝を迎える。
目を覚ましての最初の感想。「やっぱり、すごく寒い」
昨日は夜なのでよく分からなかったが、朝みると、小屋周囲はすごい量の雪である。
トレース横の雪にピッケルを立てて雪の深さを測るも、全部埋ってしまい、おそらくは積雪は1mを越えている模様。
さて、この雪をかきわけながら祖母山山頂に登るとするか。
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