雪の祖母山(2) 雪まみれの祖母山
30日日曜日の天候は予報では、曇りのち雪とのことで、展望は期待できない。
それでもまずは祖母山山頂に登ってみよう。
祖母山稜線上の縦走路は、凹状にえぐれているのが特徴であるが、そこに雪が大量に積もっていて、いつもよりはるかに底上げされている。本来なら頭上にあるはずの縦走路の樹々の枝が、這わねば頭に当たるくらいの高さになっていて、これは1m以上は余裕で積もっているな。
昨日のトレース上には雪が積もっており、それなりのラッセルを続けながら、祖母山山頂に到着。
山頂は吹きさらしなので、雪は吹き飛ばされているらしく、積雪は30cmほどであった。
本日は曇りでガスがかかっており、展望はまったくよろしくない。
祖母山山頂からは天狗岩方面への縦走路が伸びている。ここは険しい岩壁で、それが凍結しており、けっこうな難所と化している。
本来の予定なら本日はここを降りて稜線上を行き黒金尾根から下山するつもりだったけど、午後からは吹雪が予想されるなか、そのようなハードルートを完遂できる自信はまったくない。
とりあえず、ガスを通してかろうじてブロッケン岩が見えているので、偵察がてらそこまで行ってみることにした。
カチンカチンに凍った岩を用心しながら降りて、ハシゴ場への入り口部に着く。
岩壁部は頂上近傍には足跡らしき痕跡は残っていたが、ここまで来ると雪にはまったく人が歩いた跡はなく、ふかふかのパウダースノーである。
ハシゴ場を上から覗いてみると、沢全体に雪が満ちており、ハシゴは完全に雪の下に埋もれている。腰まで埋りながら無理やりに下れば、下れないことはないのだろうけど、もし雪が崩れれば、ここは数百メートル一挙に滑落するという危険地帯なので、それはやらないほうがいいでしょう。
この山頂直下のハシゴ場は冬期は危ないので、実は迂回ルートが作られている。
赤線ルートはダメであり、青線(私のラッセル跡がある)のように沢を下りずに、まっすぐ進みそこから南側に下りていき、ブロッケン岩の基部を巻いていって、それから縦走路に合流する。それが積雪期のルートである。
このルート、祖母山に詳しい人でも知らなかったので、一応webに載せておく。
さて、黒金尾根側の縦走路は、まったく人が入った形跡がなく、そして雪の量は半端なものではないので、これを進むと、時速100mとかの微速前進の世界になりそうだ。今日は時間は余裕があるが、ただし天気予報からすると、午後から稜線上で吹雪かれることは確実である。吹雪のなか、極度の寒さと戦いながら、のろのろと進んでいく、-そういう八甲田山みたいなことはやりたくはなかったので、元来た宮原ルートから下山することにした。
ブロッケン岩から見た、凍れる祖母山の姿。
人を寄せ付けない、厳しくも、気高い、そんな姿である。
山頂をまた登り返してから、宮原側の稜線に入ると、昨夜張られていたテントは撤収されていた。そこからアイゼンの爪跡も生々しい新しい足跡が続いている。先行者がいると、なんとなく安心感がでてくる。
尾根の樹林帯に入り、1200m地点に下りたくらいのところで雪が降り出し、また風も強くなった。雲の動きも速く、これは稜線上は吹雪である。稜線を進まなくてよかったなと、ひと安心。
登山口も近づいてきたころ、前方に赤い大きなザックが歩いているのを見つけた。いやもちろん人がかついでいるわけだが、ザックがあまりに大きく、そしてかついでいるのが小柄な女性だったので、ザックそのものが歩いているように見える。
渡渉部でその人に追いつき、いろいろと雑談をした。
なんでも、祖母山がとても好きな人で、1ヶ月に一度は祖母山を訪れ、テントを張って一泊しているとのことである。
いい趣味の人だなあと感心する。
尾平に到着して、祖母山を眺める。
やはり稜線の高さは雲のなかである。
あそこでは、どっさりと雪が降っているだろうから、2月は中旬くらいまで祖母山には雪が残っていそうであり、まだまだ雪山が楽しめそうだ。
ところでトレースを作ってくれていた九州マウンテンガイドツアーのHPをみてみたら、今回の祖母山登山の記事が載っていた。
・ガイド事務所のHPはここ
そのついでに山下さんの日記などを読んでいると、今年の1月に黒金尾根からの祖母山登頂を独りで挑んで撤退してるんですね。
エベレストを2回も登頂したような人が撤退するようなルートを、私が走破できるはずはなかったわけで、…やめといてよかったですわ。
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Comments
たびたび、失礼します。
関連記事を「公開」にしておきました。
管理人さんも、登場人物ですから^^
それに、わたしもこちらのブログで楽しませていただきましたし。
お暇なときに、どうぞ~。
→ http://blogs.yahoo.co.jp/sobo_kata_ookue/1607565.html
→ http://blogs.yahoo.co.jp/sobo_kata_ookue/1640799.html
Posted by: しゅぷ~る | May 23, 2011 07:15 PM
記事の紹介、ありがとうございます。
タイヤモンドダストのきらめく美しいテントの一夜の経験、うらやましく思いました。
私はその夜、小屋で寒い、寒いとぶつぶつ文句をたれていたわけですから。
山は厳しい時期は登るは大変ですけど、その苦労に見合ったものをくれる、ありがたいものに思います。
これからもしゅぷさんのレポート、よろしくお願いいたします。
Posted by: 湯平 | May 24, 2011 12:15 AM