奈良 正月あちこち 歴史あれこれ
奈良の初詣は、やはり春日大社から。
平城京の昔からあるこの神社は初詣の人気も高く、人がいっぱいだ。
春日大社はかつて栄華を誇った藤原氏の氏神を祀っており、私としてはなにを祈願したらよいのかよく分からない神社でもある。
ところで奈良公園にうじゃうじゃといる鹿は、この神社の神の使いということになっており、奈良では鹿は神獣である。奈良時代から大事に保護されていたこの鹿たちは、人に不用心ということもあり、戦後の食糧難の時代には食用に狩られまくって、絶滅の危機に瀕したという哀しい歴史がある。
興福寺の五重の塔。
奈良でひときわ目立つ、ランドマークタワーである。
興福寺は中世まで奈良一帯を支配下に置いていた最強の武力集団であった。鎌倉時代・室町時代と、世が武士の時代になっても、興福寺の方が強いので、この地には守護大名がいなかった。
織田信長という怪物の出現によって、はじめて興福寺は武装解除されることになる。そして信長の命により、奈良大和は松永久秀に任されることになった。
東大寺大仏殿。なかにはもちろん奈良の大仏が安置されている。
奈良の大仏は、源平合戦時代と戦国時代のとき、2度にわたって焼かれて焼亡している。その放火の首謀者2名はいずれも非業の死を遂げ、「大仏の祟り」と称された。けっこう恐い仏さまなのである。
なお、戦国時代に大仏を焼いたのが松永久秀であるが、彼はあるとき信長から家康にこう紹介された。「この男は天下の大悪人である。常人になしえぬことを三度も行った。すなわち主君を殺し、将軍を殺し、大仏を焼きはらった」。戦国の世では、これは信長の褒め言葉と思うのだけど、久秀は罵倒と感じて信長を恨み、のちに反乱をおこしてしまい、あっさり平定され無念の爆死を遂げる。
松永久秀の生涯はまさに数奇なもので、伝記を読んでいるととても面白い。そして信長との関係でみると、彼らはいかにも「似た者同士」であって、信長は明らかに久秀に共感を感じていると思うのだけど、久秀のほうにはそういう感情はついになかったようだ。
薬師寺のツインタワー、東塔と西塔を望む。
薬師寺は薬師如来を本尊とする。薬師如来は病を癒す医薬の仏であり、薬師寺は天武天皇が皇后の病の平癒を祈って建立されたという歴史を持つ。皇后とはのちの持統天皇のことであり、その後健康であったことから、けっこう御利益のある寺といえる。
薬師寺のシンボルである東塔。
三重の塔に庇を三つ重ねた独特のリズムある建築法から、「凍れる音楽」とも称されている。奈良時代から現存している、歴史ある文化遺産だ。
1300年もの歴史をもつ建物だけあって、そうとうにガタが来ているようで、本年から本格的な解体改修工事が行われることになる。大変な手間のかかる工事であり、完成には10年くらいかかるとのこと。
薬師寺東塔のファンの人は今のうちに見ておかないと、工事が始まってしまえばあと10年は見られません。
「凍れる音楽」ということで参考までに、5年前に訪れたときの薬師寺東塔の写真。このときは年末に訪れたのだが、ちょうどこの日に雪が降っていた。雪をまとった寒々とした凍りかけの東塔は、音叉のようでもあり、弾けば「凍れる音楽」が鳴り響く、そんな姿に見える。
薬師寺の近くには唐招提寺がある。
今から工事の薬師寺東塔と違って、こちらは修理後完成してまだ日も浅い唐招提寺の金堂。シンメトリックな堂々たる姿であり、独特の重圧感がある。
唐招提寺はいうまでもなく唐僧鑑真の建立した寺院である。唐の高僧鑑真和上の日本渡航の苦難の物語は、世にかくも高潔で、また不撓不屈の精神の持ち主がいるかと感嘆させられる。井上靖作の「天平の甍」がそれを書いて有名。
平城京跡、朱雀門。
この広大な更地に立派な門のみ建っているのも、シュールな景色ではある。
それにしても平城京跡って、そんなに不便なところにあるわけでもないのに、なんにも利用されずに広大たる空き地として放置されているというところに、奈良という地の妙なすごさを感じてしまう。
この規模の都市で、市の中心地近きところに「何にも使っていない広大な空き地」があるのって、たぶん日本では奈良だけであろう。
昨年行われた平城遷都記念行事のマスコットキャラ「せんとくん」。名前は知っていたが、実物を見るのは初めてだ。
記念行事が終わったあとも、まだ現役のようである。
有名どころをぶらぶらまわっての奈良めぐりであった。
京都と違って、奈良は一つ一つの建物のスケールが大きく、また古くから遺されてきた歴史ある建物が多く、この地も独自の魅力に満ちあふれている。
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