雪の大崩山 その2(またも撤退編)
1月16日日曜日はこの冬一番の大寒波が九州に襲来し、各地で大雪を降らせるとの予報である。しかし九州では宮崎のみが雪雲から離れ、終日晴天とのこと。15日には宮崎でも雪が降っていたので、これは大崩山はベストコンディションになっているはずだ。
先週は装備の不備で途中で引き返した大崩山であるが、今回はフル装備を準備し、パノラマ縦走コース(ワク塚→坊主尾根)を予定して登山に行くことにする。
祝子川ダムから望む大崩山。
先週よりも雪の量があきらかに多くなっている。
晴天の日曜日、雪のあることが確実な大崩山であるため、今日は登山者が多いだろうなあと予測していたが、車は一台も止まっていなかった。
どうやら今日の入山者は私一人のようである。
雪の大崩山って、あんまり人気ないのかなあ。
祝子川渡渉部。
岩々の表面は凍りついていて、金属製の橋にたどりつくまでかなり恐かった。
袖ダキ展望台への崖は前回同様、今回も凍っていた。前来たときは6本爪アイゼンだったので登るのにずいぶん苦労したけど、今回は10本爪アイゼンだったので、前歯がばっちりと氷を噛み、楽々と登れた。
巨大な岩の塔に、白い雪。峻厳たる迫力を感じる、大崩山の姿。
袖ダキからはいったん岩を離れ、緩斜面を歩いていくことになるが、ここは雪がたくさん積もっていた。
登山者が他にいないため、トレースはなく、誰も踏んだあとのない雪原を、一人で足跡をつけながらの山行である。
雪まみれで本来の登山道は隠れてしまい、トレースもないことから、ルートファインディングにけっこう苦労をした。
岩を乗り越える難所には、梯子やロープがかけられているのだけど、最初の梯子は雪に埋もれていた。雪から掘り出すと、梯子の段は岩と一体に凍っており、これを足場・手掛かりにするには氷を削らねばならず、けっこう大変であった。
そしてこの後も、梯子やロープを雪と氷から掘り起こすことを何度もすることになった。
じつは装備準備のときに、ピッケルを持っていくかどうかをずいぶんと考えた。そして大崩山の形態からは、滑落した場合は、ピッケルで制御できるとも思えず、ピッケルが役に立つ場面を想定できなかったので、より雪道を歩きやすいストックを選択した。しかしこのように支点を自分で削り出さないといけないような状況では、ストックで氷削るのも苦労がいり、…ピッケル持ってくりゃよかった~と後悔することになってしまった。
教訓:雪の大崩山にはピッケルを持っていきましょう。
下ワク塚に近づくにつれ、傾斜が急になってくる。そうなると雪が厚く吹きだまっていて、膝までのラッセルで進むことになる。
この写真中央の雪道が登山道であるが、パウダースノウがてんこ盛りである。
下をみれば、こんな感じで膝まで雪に埋もれる。
埋もれちゃ、抜いて、それから埋もれてとラッセルして進んでいく。楽しいといえば楽しいが、疲れることは疲れる。気温は氷点下なのに身体中汗まみれである。
稜線に近づくと、さすがに雪は吹き飛ばされるので、梯子も姿を見せている。
そうして下ワク塚にたどりつけば絶景が待っている。東方面にはワク塚の袖ダキへの岩稜と、祝子川を越えて木内岳山がみえる。
向かいは小積ダキ。岩は凍り、氷の壁もできている。
中ワク塚へは岩稜の上を進んでいく。
ここが凍っていることを予測していて、ハードルートになることを覚悟していたが、幸い岩は凍ってなく、雪がかるめに積もっているだけであった。
ところで稜線に出ると、吹きっさらしになるだけあって、さすがにものすごく寒かった。だいたい、ここに来るまでの時点で、ザックのサイドポケットにいれていた水筒の水は、シャーベット状になっていたくらいの寒さだったのであり、稜線に出てさらに寒くなったので、あまりの寒さに顔が痛くなり、フェイスガードを装着した。
宮崎は今年一番の冷え込みであり、平地でも気温は氷点下であった。そしてその寒い日に1000mを越える山の稜線上で行動していたのは、宮崎県では私くらいなものであったろうから、本日宮崎で一番寒い目にあっていたのは私であるのは、まず間違いない。
中ワク塚は正面の岩塔を直登していく。ここもまた雪がたっぷりであった。
中ワク塚に着いて、上ワク塚を望む。
見ての通り、中ワク塚から上ワク塚までは距離にしてはたいしたことはなく、またじっさいそれほどの時間をかけずにたどり着くことはできる。…普通の状態ならば。
しかし本日の大崩山は雪山である。そして、雪の積もった状態では、ここまで来るのは予想以上に時間がかかってしまった。ルートファインディングとラッセルに時間をとられたわけだが、さて上ワク塚まで行くべきどうか。
上ワク塚へは中ワク塚からいったん高度を下げて、それから岩を巻いてから登りなおすような道になる。
そしてその道の入り口を写真に示すわけだが、当然のことながらトレースはなく、今までの経過からも雪道は膝までラッセルになることは予想できる。
そうなると上ワク塚までは1時間半から2時間みとかないといけない。そしてそれから坊主尾根に行くとなると、たぶん途中の登山道も雪に埋もれていて、ずっとラッセルしないといけないだろう。
これは、とても日が暮れるまでに、登山口にたどりつける自信はない。
それゆえ、本日はここで終了して引き返すことにした。
まあ、私のなかでは、大崩山=中ワク塚であることもあり、ここまで来たことで十分に納得できる登山であった。
帰り道の稜線。
帰りは自分の足跡があるので、行きと違ってぜんぜん楽である。
ここは下ワク塚への登りの分岐点。やはり梯子は雪に埋もれている。
自分の足跡を先導としてどんどん進んでいくのであるが、…足跡のある雪道ってちょっと興ざめなところがある。
7時間ほどの行動時間で、無事に下山。
目標としていた周回コースはとても無理であったが、それでも、厳しくとも美しい大崩山を存分に体験できて、私としては十分に満足できた。
まったく青空を背景に、雪をまとって、白く輝く大崩山の岩峰群の姿は、条件のよいときにしか見られない、そして寒さのなかを頑張った人にしか見られない、記憶の宝としていいような、そんな素晴らしいものであった。
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