和食:俵屋@大晦日
先附は、海老や麩の小椀に、ムカゴ酢和え、豆腐味噌だれ。食材の控えめの色彩に、色鮮やかな器と柚子の皮のとりあわせがまず面白い。これに、茶碗蒸し風のかすみ湯葉で、身体を温めましょう。
造りは鰤のへぎ造りと、白甘鯛の昆布〆。
へぎ造りでの、ひょろ長い鰤の刺身の食感は、脂十分の身によくあっている。
白甘鯛のねっとりした身は旨みがたっぷりだ。
椀物は蟹真蒸。上に乗っているのは椎茸を結んだものに、小さな蕪。
出汁は俵屋ならでは上品なもの。
椀物は京都に限ると言いたくなるような、繊細にして奥行きの深いもの。
甘鯛に舞茸を巻いたもののバター焼き。雲子焼きに、青味大根。
甘鯛の旨みがゆたかに広がる、はなやかな料理。
蕪蒸しの餡かけ。
蕪というのはじつに美味い食材なんだなあということが、ほとほとよく分かる料理。
これがメイン料理ということになるのだろうけど、鯛の巻物に、海老芋、それに壬生葉。やや濃厚な出汁につけられた海老芋の存在感がまずすばらしい。そしていずれも味の豊かな食材だけあり、それぞれの個性をたがいに引き立たせている。
赤貝、烏賊、野菜の酢味噌和えで、ちょっと箸休めしましょう。
いかなる旅館、料亭でも、一年に一回しか出すことのできない料理、それがすなわち大晦日限定料理の「年越し蕎麦」である。
あわただしい日々を送った一年の締めくくりに、古都京都の老舗旅館で「年越し蕎麦」を食う。
う~む、なんか日本のロマンを感じません?
ところで、見ての通りここの和食は、酒の肴として逸品ぞろいである。
一年の終わりだ~、ということで頭が祭りモードに入っていることもあり、最初にシャンパン一本あけて、その後も酒を次々と飲むうち、この蕎麦もまた酒の肴としてはなはだよろしい。つい、蕎麦もおかわりして酒をさらに追加して、食事が終わったころは相当に酔っていた。
和旅館俵屋では珍しく、暁翠庵にはベッドルームがある。
腹はいっぱいになり、酔いもまわっており、少しばかり休憩しようとベッドにごろんと横になるとそのまま前後不覚に寝入ってしまい、…つぎに目を覚ましたときは午前1時に近く、2011年になってしまっていた。
ありゃりゃりゃ、これは除夜の鐘、聞きそびれてしまったか。
まだ鐘を鳴らしている寺もあるかもしれないし、神社に初詣もできるし、ベッドから降りて外出しようかも思ったが、外は寒いし、けっきょくそのまま布団にもぐりこみ寝てしまった。
2011年は、それを迎える瞬間に気付かず、新年となってしまった。
ちょっと間抜けな年明けであったなあ。これも俵屋の夕食が美味かったのと、暁翠庵のベッドが気持ちよかったせいである。
俵屋、おそるべし。…って、なにがおそろしいのやら。