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November 2010の記事

November 30, 2010

聖なる森@ベックリン

Hollywoods

 ベクシンスキーの絵を出しておいて、そのままにしておくのもなにか後味が悪いので、ついでとばかり秋の森を描いた絵をもう一枚紹介。
 (個人的には、ベクシンスキーはこの絵を参考にして、あの絵を描いたと思っている)

 秋になり、葉の色は黄色に染まり、風にはらはらと落ちて行く、そういう季節の森。樹々は日の当たる側は、やわらかな太陽の光をたっぷりと浴びて、日を浴びることの喜びを静かに表しているようだ。日は画面の奥に向けて、すべてを吸収されていき、森は生の世界から、荘厳な闇の世界へ化していく。
 絵の中央には、祭壇に火を捧げ礼拝をする人たちがいる。その敬虔な祈りに呼応するかのように、森の奥から神秘的な白衣の人の群れが歩みでてくる。
 この絵に描かれた風景は、おそらく誰も見たことはないような風景であるけれど、しかし、この絵には「森」というものの普遍的世界が明らかに表現されており、それゆえ私たちはこの絵に不思議な既視感と説得力を感じることができる。

 しかり、森とは生命の根源に近いものである。
 森は、全てを受け入れ、全てを育み、やがては全てを弔う。
 神というものを人間が発明する以前に、神に近いものが私たちの身近にすでに存在しており、それを具象的に描いたのがこの絵である。森のなかで礼拝する人たちの祈りの対象は森そのものであり、祈りに応じて現れる人々は森の精霊である。だからこの絵は「Heilige hain(holly woods)=聖なる森」と題されている。

 この絵は日本人にも人気のある名画だけど、「鎮守の森」とかで、身近にある森に神秘的なものを感じてきた日本人には、より理解できやすい絵だと思う。

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秋の怖い絵

Beksinsky


 紅葉の樹々をみると、ついつい思いだしてしまう絵がある。
 ほんとは思いだしたくないんだけど、そのあまりのインパクトの強さから、紅葉の風景が、強制的にその絵の記憶を喚起してしまう。
 もちろん冒頭に示した絵のことなのであるが、なんとも不気味な、神経を逆なでするような、怖い絵である。

 森の樹々は紅葉の盛りである。葉は全て赤く染めあがり、一枚一枚が融合して、枝ごとにかたまりとなり、木とは別の生き物のようになっている。時は夕刻にせまり、その夕日を浴びた樹々の葉はさらに赤みを増して、いまにも血がしたたりそうなまでの壮絶な赤にかわりつつある。なにか嫌なこと、なにか不穏なことが起きる、そういう予感を内包した森。

 そんな雰囲気の森のなか、異形の生首が浮かんでいる。
 その顔、肌の色、目の色からして、この生首は、生者のものではなく、しかし死者のものでもない。この生首は、絵を眺める人への、絵総体のメッセージである。
 眺める者を正面から見つめるその緑の目、表情は、明らかに悪意を告げている。
 この世には、理由もなしに人を不幸にしてしまおうという、純粋な悪意が確と存在しているが、この生首が絵と正対している人に告げる感情は、もっともそれに近いものだ。
 誰もこの絵を見て、温かさとか、慰めとか、愛しさとか、そういう正のものは感じないであろう。感じるのは、突き刺さってくるような、鋭い感情、じっと見ていると自分が不幸になってしまうと思うような、そんな悪意である。

 「怖い絵」は数多けれど、こういう神経をキリキリ締めあげるような、心を痛めるような「怖い絵」はそうはない。
 かなりの秀作に思える。


 …ただこの絵、森の描写も、それに生首の描写も「怖さ」の表現において卓越したものがあると思うが、どうも絵全体としては、両者の存在の必然性があるようには思えないんだよなあ。
 この生首は、この赤く染まった森でなくとも、例えば、廃墟とか、孤島とか、古井戸の上とか、いろいろな「怖い絵」に出て来る場面を背景にしても、十分に絵として成り立つ気がする。
 それどころか、生首、森、一つずつ取り出して絵にしても、それで立派な完成品になるとも思える。

 絵の作者はポーランド出身のズシスワン・ベクシンスキー(Zdzislaw Beksinski)。技法もモチーフも素晴らしいものを持っている画家だけど、いまだにメジャーな存在になっていないのは、そういったところの弱さにも原因があるのではと、私は思っている。

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November 28, 2010

サイクリング:槙峰~比叡山~鹿川渓谷

 紅葉も最後の季節となろうとしている。すべて散ってしまう前に、渓谷沿いの紅葉を見に自転車ででかけることにした。宮崎県北の紅葉の名所のうち、見立渓谷と藤河内渓谷は昨年行ったので、今回は鹿川渓谷を目標地とする。

【上川流鮎やな跡】
1_kawaduru

 国道218号線沿い上川流(かわずる)に、延岡秋の名物鮎やな場がある。少し前までは川に鮎やなが組まれていたのだけど、秋も終りとなり、鮎やなは片づけられていた。

【槙峰】
2_to_hiei

 槙峰にいたり、ここで北側に向きを変え県道214号線に入り綱之瀬川に沿って進んでいく。
 この道は比叡山の登山口の前を通り過ぎ、鹿川渓谷にまで至る道である。

【槙峰の町】
3_hill

 平らな道をしばらく進んだのち、この郵便局が見えるところから登り坂が始まる。比叡山登山口あたりがいったんの峠になり、それまで約300mを登っていく。

【比叡山遠景】
13hiei

 坂の途中でこの風景が広がる。
 左が比叡山、右が矢筈岳。
 比叡山という名前の山は京都だけでなく、九州のこの地にもある。歴史は負けるが、山自体の魅力はこちらのほうがずっと上であろう。

【比叡山登山口近く】
4hiei

 比叡山の登山口近くより、比叡山1峰を望む。
 比叡山は山全体が花崗岩でできた、巨大な岩の塔であり、ロッククライミングに最適の山であるため、全国からクライマーが集まって来る。
 ただ、今日は寒いためかクライマーは一組しか岩にとりついていなかった。
 写真をよ~く見れば、画面の中央に一人岩に取り付いているのが見える。

【矢筈岳】
5_yahazu

 綱之瀬川をはさんで、比叡山の対面には矢筈岳が聳えている。
 この山も花崗岩の巨大な山塊であり、迫力ある姿である。

【比叡山3峰】
12_hiei

 比叡山の岩峰は三つ峰があり、いちばん北側が3峰である。
 垂直の岩の壁は、そのまま綱之瀬川まで切り落ちており、この壁から眺める綱之瀬川は高度感がすさまじい。

【下鹿川】
6_simosikagawa

 比叡山登山口からはいったん下鹿川まで下っていき、その底にこの中学校がある。ここをしばらく進んだのち、鹿川渓谷まで400mを登っていく。

【上鹿川小学校廃校記念碑】
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【上鹿川小学校校舎跡】
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 県道214号線はどこにもつながらない、行き止まりの道で、人の住むところでは上鹿川あたりが最後の地となる。
 かつては小学校もあるほどの栄えたときもあったのだろうが、人はやがて流出していき、住む人は少なくなっていき、小学校は5年前に廃校となってしまった。
 もはや誰にも使われなくなってしまった施設は、山間の地でただただ朽ち果てるための時を刻んでいるだけ。周囲がとてもうつくしい風景だけに、よけいに哀しみを感じさせる。

【鹿川キャンプ場入り口】
9bridge

 この赤い橋を越えたところが鹿川キャンプ場、および鹿川渓谷への入り口になる。ここから2km激坂が続くので、気合いを入れて行きましょう。

【鹿川キャンプ場】
10sikagawa_camp

 10年くらい前に来たとき、このキャンプ場にいたる道は、未舗装の林道だった記憶があるのだけど、今はきちんと舗装された道であった。
 鹿川キャンプ場からは、鉾岳がきれいに見える。
 これも花崗岩の岩峰を天に突き刺した、形のいい山である。

【鹿川渓谷】
11valley

 シーズン時には紅葉の名所となる鹿川渓谷も、すでに葉は落ちてしまったあとであった。
 当然ながら、観光客は誰もいなかった。

【湯の谷温泉看板】
Map

 鹿川キャンプ場からは元来た道を戻っていく。
 途中で釣鐘橋のところにあった地図を見て、「あれ、そういえば湯の谷温泉の看板みなかったな」と思った。
 下鹿川と上鹿川の間に、「湯の谷温泉」というマニアックな温泉があり、その入り口には猿の絵が描かれた湯之谷温泉の看板があったはずなのに、行きでは気付かなかったのである。それで帰りには注意して見つけることにした。

【湯の谷温泉への入り口】
Yutani

 私の記憶が確かなら、このカーブが湯之谷温泉の入り口のはずである。ガードレールの切れ目には河原への降り道もあったから、間違いはない。
 しかし肝心の看板がなく、かわりに「離合所7番」という看板があるのみである。

 う~む、これはついに湯の谷温泉つぶれたか?
 湯の谷温泉は場所に問題があった。渓谷の河原に源泉をホースで引いて、それを河原に設置した五右衛門風呂で沸かすというワイルドな温泉であったため、メンテナンスが大変であったのである。
 20年くらい前は五右衛門風呂は5つあり、脱衣場まであったのに、度重なる台風による河川の氾濫の影響で、10年くらい前からは脱衣場もなくなり、五右衛門風呂も二つしか残っていなかった。
 そして、なんとか残っていた五右衛門風呂も壊れてしまったのか。

 サイクルシューズで山道伝って河原に降りる気もしなかったので現場の確認はしなかったが、あとで調べるとやはり湯の谷温泉は、現在は使われなくなってしまったとのこと。

 温泉の湧くこと少なき祖母傾大崩山系では、本当の意味での天然温泉って、ここと白滝温泉の二つしかなく、湯の谷温泉は貴重な秘湯であった。
 なんとか再開してもらいたいものである。

【参考:かつての湯の谷温泉入口】
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 6年前に湯之谷温泉を訪れたときの写真。
 ガードレールにはこのような看板があり、入口は分かりやすかった。

【参考:かつての湯之谷温泉】
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 湯の谷温泉はこのように対岸で湧いている源泉をゴムホースでこちらに引いてきて、渓流そばの岩をくり抜いた五右衛門風呂にそのまま掛け流す形式。
 いわゆる鉱泉系の源泉なので温度はぬるめであり、五右衛門風呂の底で薪を炊いて沸かすと適温になる。
もっともこの温泉を使う人は、登山帰りの人が多く、そういう人には源泉のぬるめの湯のほうがかえって、気持ちよかったような。
 こういう個性的な温泉が、幻の温泉と化してしまうのはやっぱり惜しい。くりかえすけど、再開をのぞみます。

【槙峰大橋】
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 国道218号線バイパスには綱之瀬川をまたいで槙峰大橋がかけられている。
 車で走っていてこの橋から見える風景はなかなか良いので、自転車で登ってみて、じっくり眺めることにした。

【槙峰大橋からの眺め】
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 綱之瀬川がずっと続き、その先には比叡山の絶壁が見える。
 迫力ある風景である。

 この後はまた旧218号線に降りて元来た道を走ることにする。
 行きは向かい風がすごくて、普段30km以上で走るところが20kmも出せないほどであり、これは帰りは楽になるなと思っていたけど、夕方になれば風がまったくなくなり、ぜんぜん楽が出来なかったのは、一種の約束事みたいなものだな。それともマーフィの法則ってやつか。


本日の走行距離:104.2km


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November 23, 2010

ワイン会@ベル・エポック

 宮崎市のワインマニアが集うワイン会がW氏主催で開かれ、それに参加してきた。
 場所はベル・エポック。宮崎市唯一のグランメゾンである。初めて訪れる店だが、さすがにドレスコードはあるだろうと思い、出かける前にジャケットを探す。すっかり箪笥の肥しとなっているブリオーニのジャケットで行こうかなと思ったが、これ着て駅まで自転車を走らせるのは、自分でもまぬけな姿に思え、よりライトなダーバンのジャケットにした。
 着いてみれば、建物、内装、調度品、サービスたしかにグランメゾンであり、これはやはりジャケット着用して正解であった。

【ワイン】
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 ワイン愛好家たちが自信をもって持ちよったものであり、これを料理にあわせてソムリエが選び、グラスにつがれることになる。ワインって、幅の広い酒だなあと飲んでいて感心することになる。

【メイン:平目のムニエルパイ包み】
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 料理は、いずれも欧州の高級食材と、地の食材を組み合わせた、本格的で落ち着いたもの。堂々としたフランス料理である。

【リゾット】
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 ベル・エポックの山本シェフの料理は、和食とのコラボで光洋で食べたことがあったのだが、そのときは繊細系の料理という印象があり、そのときの記憶に一番近かったのがこの一品。米の煮られかたが丁寧であり、スープとトリュフのバランスも絶妙であり、絶品といっていいものであった。


 昨日の河野酒店の日本酒試飲会では日本酒の複雑さに感心したのだが、さすがにワインはそれよりさらに幅が広くて、「ワイン」という酒の守備範囲に驚いてしまう。この世界、のめりこむとすごいことになるんだろうなあとか思いつつ、じつは参加者の多くは、巨大なセラーにたくさんのワインを貯蔵している、のめりこんだ人たちなのであった。

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November 22, 2010

河野酒店試飲会@宮崎市

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 新酒の季節になったということで、河野酒店主催による日本酒の試飲会が宮崎市のウェルシティであったので行ってみた。
 70種類以上の日本酒がずらりと並ぶ姿には驚いたけど、それより驚いたのは参加者の数の多さであった。宮崎は漠然と焼酎文化圏と思っていたが、日本酒愛好家も多いんだなあ。会場をうろうろしていると、いろいろな人から声をかけられ、勝手に焼酎党と思っていた人がじつは日本酒党であったことが判明したりもした。

 さて、これだけの種類の酒があれば、可能なかぎり飲み比べてみたくなるのが酒飲みの業である。全部は無理だったが、50種以上は飲んでみて、あらためて日本酒というものの複雑さ、玄妙さに感心した。同じ米を使いながら、どうしてこうも香りと味が異なって来るでのあろう。

 限界近くまで日本酒を飲み、さらに二次会にまで行ってしまったため、翌日目が覚めれば、ひさしぶりの宿酔で頭が痛い。
 祝日でほんとにたすかったよ。

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November 21, 2010

綾サイクリング110km

 宮崎県はマラソンは盛んであり、有名なイベントがいくつもあるけれど、サイクリングは残念ながら人気がないみたいで、サイクルイベントは年に一回、綾サイクリング(正式名:九州センチュリースポーツin宮崎県大会)しかない。
 宮崎県在住のサイクリストとしては、一度は出らんといかんだろうなあと思い、エントリーしてみた。
 そしてコースを調べるために主催者の用意したコースマップを見てみたのだが、…ぜんぜん使えんじゃん。

【コースマップ】
Photo_2

 これって土地勘のある人じゃないとどこがどこでどうなっているのか到底理解できないと思う。
 それならばと、ルートラボを調べたが、いくつかUPされているコースがどれも微妙に異なっており、どれが正しいのやら分からない。…困ったな。

 職場に昨年60km部門に参加した者がいたのでどうやってコースを調べたか尋ねてみると、「道路の要所要所に矢印が書いているのでそれに従っていけばいいですよ。でも、けっこう見落とすから迷いやすいですね。一緒に参加した先輩も間違えました」とのこと。

 一昨年参加したAさんによれば、「前方のグループに入っておけば、スタッフのサポートがあるので大丈夫では」とのアドバイス。

 まあ、ともかく出たとこ勝負ということにして当日を迎えた。天気はありがたいことに快晴である。

【スタート】
1start

 スタートは番号順に10名ずつ出ていく。110km部門は参加者は80名程度であった。
 Aさんのアドバイスに従って、なるべく上位グループに入ろうかと思ったが、先頭グループはまさに矢のごとき速さで突っ走っており、あんなのについていくなんて、到底無理である。

【第1チェックポイント】
2check

 なるべく視界に前を行く人が入るようなペースで一人で走っているうち、なんだか私の後ろで集団ができていた。30km/hrくらいのスピードだったが、こんなんでいいんかい、も少しスピードあげないといかんかなあなどと、牽引者の責任を感じつつ思っているうち、第一チェックポイントに到着。

【第2チェックポイント】
3check

 その後もマイペースで進むうち、第2チェックポイント到着。
 綾サイクリングは、ASの補給食の豊かさは特筆すべきものであろう。今まで参加したサイクリング大会は、ASには水・塩・ちょっとした果物程度しか置いてなく、そういうものと思っていたけど、綾サイクリングでは3種類のお握り、バナナ、飴玉のたぐいがたくさん置かれており、これはたいしたものだと思った。

【マーク】
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 コースの要所要所には矢印が石灰で描かれているのだが、この描かれぐあいがなかなか素人チックでよろしい。
 綾サイクリングは、スポーツエントリー主催みたいなイベントプロが関与した、サイクリング大会とは異なり、アットホームな手作り感が特徴的であった。

【根白坂】
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 坂を越え、坂を下り、それからまた坂を登り、と坂だらけなのが綾サイクリングであったけど、そのなかで最大の難所が68kmくらいからの「根白坂」。急勾配の坂がいつまでたっても続く大きな登り坂である。
 途中で心が折れた人もいて、押して歩いている人を2名みた。

【花:コスモス】
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【花:ケイトウ】
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 季節は秋であり、道路沿いにはコスモスやケイトウが咲いていて、なかなか美しい。疲れがいやされる光景である。

【ドクターカーならぬドクターバイク】
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 前方にザックをかついだ人が走っていた。
 開会式のときにサイクリング中に心肺停止になった人を見たときの対処を全員の前で説明していた宮崎市の救急指定病院のドクターである。
 AEDも今回のサイクリングでは2台用意しています、とも言っていたので、これはすごい、AEDかついで走っているのかと私は思った。それで追い抜いたときに「中身はやっぱりAEDですか」と尋ねたら、「いえいえ、人工呼吸セット(アンビューセット)ですよ」との答え。…うーむ、やはりAEDは無理か。でもアンビューセットだけでもたいしたものである。

【広域農道1】
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【広域農道2】
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 綾サイクリングのキモは、やはり広域農道であろう。坂の多いコースのなかでは、ここばかりはフラットでまっすぐな道が続き走りやすく、西のほうには雄大な尾鈴山が聳え、眺めもよろしい。

【広域農道出口】
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 昨年走った職場の者から、「一か所危険なところがあります。急傾斜の坂を下りたところで直角に曲がらねばならず、うっかりしているとコケます。どこだったか忘れましたが」と聞いていたが、往路で走った時点ですぐここと分かった。
 たしかにレース感覚で思いっきりスピードを出している人には、注意すべきポイントであろう。

【橋を越えて】
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 往きに坂をいっぱい越えたのだから復路も坂がいっぱいあるのは当たり前だが、復路のほうが疲れがたまっているので、やはりきつい。
 それでも綾御道橋を越えれば、ゴールはもうすぐである。
 ゴール近くもまた登り坂があるが、最後の頑張りで登り切ればようやくゴールである。…疲れた

【バーベキュー】
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 110kmという中程度の距離のわりには、けっこう疲労感が強かったのは、やはりコースがハードだからだったのであろう。
 ルートラボで調べれば距離と獲得標高は分かるけど、コースの本当のきつさは、じっさいに走ってみないと分からないところがある。
 カロリーも相当に消費したので、大会主催のバーベキューと、持参のノンアルコールビールでカロリーを補給した。

 同じテーブルの人から、「写真をいろいろ撮っていた人ですね」ときかれた。今回のサイクリングではあんまりそういうことやってる人はいなかったので、目立っていたみたい。
 その人は鹿児島から来た人で、水泳・マラソン・自転車が趣味であり、先週はランニング大会、今週は綾サイクリング、そして来週はツールドおおすみ、再来週はランニング大会、その次の週は水泳マスター大会に参加するそうだ。「…誰でも同じことを言うと思いますけど、トライアスロン大会に出ると全部いっぺんにできますよ」と私が言うと、トライアスロン大会には当然出るけれど、そんなに大会がないそうである。
 しかしまあ、世の中には体力のある人がいるもんだなあ。

【秋の河原】
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 バーベキューの小屋の隣は綾北川の河原。
 ススキが風にゆれ、これも秋の美しい風景なのであった。



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November 14, 2010

鮨匠のむら@11月

 11月といえばのむらの名物「うに」は終わっているのだが、そのかわりといってはなんだけど、地元の魚がぐんぐんと美味くなり始める時期であり、今回もそれらの極上レベルの魚を楽しませてもらった。

 まず最初に出てきた魚は「白星フエ鯛」。これは南九州でしかあまりみない魚だけど、(宮崎では「シブ鯛」と呼ばれている)、締められてすぐに刺身となって出されたものは、弾力ある身に甘さがびっしりとつまっており、初っ端からたまげるような旨さである。

【シマアジ】
Shimaaji

 つぎは「天然シマアジ」。これもシマアジの鮮烈な旨み、香りがすばらしい。

【ショッコ、ハガツオ、星ガツオ】
1katsuo

 ショッコはカンパチの幼魚で、これものむらの定番。カンパチとはまた一風ことなる軽やかな食感が特徴。
 歯ガツオ、星ガツオはいずれも尋常でない脂の乗りだ。いずれも傷みの早い魚であり、魚が獲れたときからの手当て、それに仕込みがしっかりしていないと、このような美味さは演出できない。ある意味、のむらでしか味わうことのできないものである。

【マグロヅケ、秋太郎(刺身と炙り)】
Akitaro

 秋太郎はバショウカジキの別名で、鹿児島でしかみない魚である。
 見た目はマグロの腹身みたいな感じであるが、マグロの腹身よりも脂の食感が爽やかであり、脂がまったくくどくない。これを炙ることにより、香りが増し、旨みも増強して、さらなる美味となる。

【イクラの茶碗蒸し】
Cyawan

 そろそろイクラも旬となってきた。イクラを噛んだときに弾ける、濃厚な黄身の味が印象的。これぞ真なるイクラの美味さ。

 これらの酒肴ののち、鮨となる。
 こぶりなシャリに、酒肴でも出て来た魚が次々に握られ、肴のときとは異なる美味さをまた楽しむことができる。

【秋刀魚炙り】
Sannma

 〆は秋刀魚の炙りで。これも脂のよく乗った旬中の旬の秋刀魚であり、これを食べれば、ほろりと苦い大根おろしとともに口のなかでとろけていき、秋の美味の余韻が身体中にひろがっていく。

 秋の食の楽しさを実感する、のむらの夜であった。

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November 13, 2010

霧島池めぐり

 霧島のえびの高原にはビジターセンターを出発して、3つの池をめぐりながら一周する自然歩道があり、紅葉見物がてら歩いてみた。

【不動池】
1_fudou

 ビジターセンターから歩いてしばらくすると、この不動池がある。
 霧島の紅葉は中腹が旬であって、車からながめる景色はきれいであったけど、この高さ(=1250m)にいたると紅葉はもう終盤というところであった。

【遊歩道】
2

 池めぐりとかいいつつ、この自然歩道は甑岳にも道が伸びているので、まずは甑岳を登ることにする。
 遊歩道にはこのように紅葉の落ち葉がしきつめられていた。

【鹿】
3deer

 えびの高原はなにしろ鹿の多いところであり、遊歩道からも人慣れした鹿たちが、そばを通る人を立ち止まって観察している。

【甑岳山頂】
45_kosiki

 甑岳は、韓国岳を登るときに隣にその姿がよく見える、こじんまりした独立峰の火山である。姿のいい山なんだけど、100mくらいしか登る高さがないことや、やたらに道が急峻なことから、あまり登る人はいない山だ。

【甑岳火口】
4kosiki

 甑岳は火山ゆえ、頂上からはこの小さな火口が見える。火口の底は湿原となっていて、独特の風情がある。

【六観音御池】
Pond

 甑岳に登ったあとは元来た道を引き返し、池めぐりコースに戻る。
 ゆるいアップダウンの歩道を進むと、六観音御池に着く。
 3つの池ではもっとも広く、まわりには杉の巨木が幾本も立っていて、神秘的な雰囲気を漂わせている池である。
 向かい側には、霧島の盟峰韓国岳が聳えている。

 このあと白紫池によって、ビジターセンターまでおりていき、池めぐり終了。
 紅葉がほぼ終わっていたのは残念であったが、枯れかけの風景のなかの散策も、それはそれで味のあるものであった。

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November 12, 2010

寿司屋のマグロ@紫光

Tsuna

 紫光にて鮨を食う。
 白身、〆モノ、貝、イカ、海老、アナゴ。どれも安定した、レベルの高い鮨である。
 さて、季節は秋を過ぎ、マグロが美味くなるシーズンとなっている。
 今年のマグロは暑さのせいか、例年よりあんまり味が濃くなってきてないなあとの印象を持っていたけど、紫光のマグロはやはり一味違う。

 赤身、中トロ、大トロ、いずれも今年食ったなかで最上のものであった。
 とくに大トロは肌理が細かくて、脂肪と身が混然一体となって、やわらかに口のなかでシャリとともに溶けていく、絶品ものである。


 寿司業界の公然の企業秘密として、「トロは赤字商売である」というのがある。
 じっさいトロのたぐいは卸値が高く、これ単品だとえらい値段になってしまうため、モトがとれる値段では客に出せたものではない。しかしマグロのトロは寿司屋の看板商品であるので、これを出さねば商売が成り立たず、それで赤字覚悟の値段で出て来るというわけ。
 紫光の店主はとりわけマグロに対して思い入れが強く、築地に出向いて、業者に要望をきちんと伝えて、自身の納得いくものを仕入れている。当然値段もそれなりになるのであろうが、この店はべつだん値のはる店というわけでもなく、CPはいい方の店である。

 ま、それはともかくとして、紫光に行けば、美味い鮨、それに美味いマグロが確実に食べられます。

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November 07, 2010

登山:秋の祖母山

 紅葉を目当てに、尾平から黒金尾根経由で祖母山に登ってきた。

【尾平からの祖母山】
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 紅葉のシーズンの休日というに、尾平の駐車場には10台も車は止まっていなかった。
 祖母山は魅力高き山であるが、なにしろ登山口にいたる県道7号線がハードルートであって、その難路を使って、わざわざここまで来る人はなかなか増えない。

 尾平より眺める祖母山は、ややくすんでいるけど、山の中腹はいい感じの紅葉となっている。

【川上渓谷】
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 標高600mの川上渓谷は、まだ紅葉は色づきはじめ。
 来週末くらいが盛りの時期になると思われる。

【標高800m地点の紅葉】
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 標高が800mを越えたくらいから樹々の葉の色が濃くなってきている。
 ただ今年の紅葉は、楓や櫨が赤くなりきれていず、全体的に黄色っぽい。

【稜線からの眺め 1】
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 稜線に出て、天狗岩の横の展望所からの眺め。
 いくつもアップダウンを繰り返していく登山道の先に、巨大な岩の塊の祖母山が聳えている。迫力ある風景だ。

【稜線からの眺め 2】
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 尾平側を眺めてみれば、色とりどりの紅葉が、大きな錦模様となって山肌を染めている。
 本日は午前中は曇り時々雨というあいにくの天気であったが、午後2時過ぎからは晴れで、このように光をたっぷりと吸った樹々の紅葉を楽しむことができた。
 そんな時間にこの稜線を歩いているのは私だけであったので、これは本日私一人だけが楽しむことのできた光景である。

【祖母山山頂】
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 祖母山は標高1756m。
 さすがに、その高さになるともう樹々はすべて葉を落としていた。

 下山は宮原ルートにすることにして、九合目小屋の前を通る。そうすると小屋からトランス系の音楽が聞こえてきた。ならば、小屋番さんがいるのだろうと思い挨拶に寄ってみた。
 小屋番さんは冬に備えての工事中であった。
 今年の紅葉について聞いてみると、「今年は平地は猛暑であったが山は曇りの日が多くて冷夏であった。そのため樹々が栄養を蓄えることができず、紅葉の染まりは全体的に不良である」とのこと。小屋番さんは祖母山系の生き字引みたいな人であり、夏の終わる時点ですでに現在の紅葉の状況は分かっていたそうだ。

【宮原ルートの紅葉】
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 黒金尾根では赤い紅葉をあまり見なかったが、宮原ルートではちらほらと散見できた。こちらのほうが夏は暖かったのかな。


 日の暮れる前にさっさと登山口に戻ったが、県道7号線を車で走るうちに日が暮れた。県道7号線は工事中の道が多く、そして細くて、曲がりくねっている。暗いなか、そういう道で離合を繰り返すのは、けっこう互いに技術のいる行為であった。
 祖母山登山は、登山よりも、車でのアプローチのほうがよほど難しいよなあ、と毎回思う。

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November 04, 2010

アラ@光洋

 冬が近くなってくると、そろそろアラの季節である。
 旨みをぐっと身に凝縮させる白身魚アラは、南九州ではあんまりなじみのない魚ではあるが、光洋にはありました。
 造り、焼き物、煮物、寿司と、アラづくしを楽しませてもらった。

【アラの中落ち 塩焼き】
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 元々大きな魚だけあって、中落ちも太い。
 中落ちは身のもっとも美味いところがつまっているところであるが、一匹から取れる量が少ないのが難点。その貴重な中落ちをしっかりと食わせていただきました。

【アラ煮つけ】
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 アラはなにをやっても美味いのであるが、この煮つけもやはり美味い。
 少々強めの味付けが、このアラの旨みの強さとうまく拮抗している。

 このあとアラ鍋が出てくれれば完璧であったが、さすがに寿司屋ではそういうわけにはいかず、アラシリーズはアラの寿司で終了。
 でも、こういういいアラを仕入れられるのなら、今度は裏メニューでアラ鍋でもこっそり出してくれないかなあ。
 (…ってカウンターで、ガスコンロにそんなもの乗せて食ってたら、裏でも、こっそりでもなんでもないか)

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November 03, 2010

登山:秋の行縢山周回ルート

Map

 行縢山は正面からみると屏風のような形で単純な形態の山のように見えるけど、その屏風の奥はけっこう広くて、いくつも枝尾根を出している複雑なつくりの山なのである。
 そういう複雑な形の山なので、登山ルートはいくつもあり、それを分かりやすく書いた地図が山のなかのところどころに貼っており、役に立つ。Web上にもその地図があり、それを参考に行縢山をぐるりと一周するルートで登山に行ってきた。

【1:滝見橋より】
1takimibashi

 登山口である行縢神社から登ることして2つ目の橋が「滝見橋」であり、ここから有名な「行縢の滝」が見える。花崗岩の壁から一直線に高い高度を流れ落ちる、姿立派な滝である。

【2:雄岳山頂】
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 行縢山の最高点である雄岳は標高830m。南側に眺望が開けており、延岡市や日向灘が広々と見渡せる。
 本日は好天であり、登山者も多く山頂はにぎわっていた。

【3:西尾根分岐点】
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 雄岳山頂から少し往路を戻ったところに西尾根への分岐点がある。道はしっかりしており、わかりやすい。

【4:行縢山北岳】
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 分岐点からしばらく行くと北岳というピークに着く。位置的にはどう考えても「西岳」のはずなんだが、…「雄岳の北側のピーク」という意味なんだろうか?
 ここはあんまり眺望はきかない。

【5:県民の森分岐点】
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 北岳からは小さな峰のアップダウンを繰り返しながら、少しずつ高度を下げていく。そのなかの小ピークに、県民の森に行く、ショートカットのコースと、北尾根経由のコースの分岐点がある。北尾根経由のコースの入り口には、枯木が通せんぼのように置かれていて、もしかしたら通行禁止になっているのかもしれないが、「通行禁止」との標識があるわけでもないので、ここは北尾根コースに歩を進めることにする。

【6:鬼の目展望所】
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 北尾根には「鬼の目展望所」という、北方向の山々を眺めることのできる絶好のビューポイントがある。しかし、そこへの入り口は北尾根コース入り口と同様に枯れ木が通せんぼをしており、これを乗り越えていかねばならない。

【鬼の目展望所からの眺め】
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 「鬼の目展望所」からは、大崩山山系がずらりと並ぶ姿を見ることができる。展望所の名前の通り、鬼の目山が聳えている姿を望むことができる。

【7:方向変化点】
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 登山道は山をぐるりと周回するようにはつけられてはおらず、この「火の用心」と書かれた杭のところで、県民の森方向へ南側に降りていくようになっている。
 北東の尾根のほうは、すごい悪路になっているのであろうか。
 …しかし、人の訪れること少なきこのルートで、標識もテープもずいぶんと古めかしいものばかりであったのに、この「火の用心」の杭だけは、妙にツヤツヤと新しいものであり、不思議な印象を受けた。

【8:登山道】
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 なお、北尾根から県民の森にかけての登山道は、人が通っている気配は乏しく、かなり荒れている道である。草や木が生い茂って道が分かりにくくなっているところがいくつもあり、標識や赤テープを見失わないように注意しないと、容易に道に迷いそうだ。
 初級者が一人で来たりすると、面倒なことになりかねないルートである。山を知らない人は、「そんな初級者がこんなところに来るもんか」と思うであろうが、初級者のほうが勇気があるので、難しい道でも勢いで行ってしまいがちなのである。げんに私だって、初級者時代のほうが変な道ばかり好んで行っていた。

【県民の森休憩小屋】
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 沢に降りると道もようやく分かりやすくなる。先のショートカットコースからの下り道と合流してしばらくすると、県民の森の休憩小屋が現れる。
 樹々が少しばかり紅葉していた。

【9:雌岳登山道への入り口】
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 雌岳へはこの標識のあるところで東方向に入っていく。ここからの道もけっこう荒れているが、赤テープをしっかりと見つけながら登って行きましょう。

【10:雌岳・行縢の滝への分岐】
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 尾根に入って進むうち、雌岳と行縢の滝方向への分岐に着く。雌岳から先は下山のルートはないので、下山するときはここまで引き返さないといけない。下山方向へは、方向を書いた標識がないので、いちおう注意が必要である。

【11:雌岳山頂】
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 雌岳頂上は標高809m。展望はまったくきかず、ただ「登りました」というだけの山頂である。
 ただし、雌岳は登山口にいたる尾根からの眺めがいいので、じゅうぶんに登る価値のある山だ。

【12:行縢の滝】
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 その尾根からの眺めでは、この行縢の滝を見下ろせるところが、最高のビューポイントであろう。
 紅葉はあと1~2週間後くらいが盛りであろうが、それでも緑の樹々と、それに紅葉、花崗岩の絶壁、白い滝が織りなす風景は、これこそ登山者しか味わうことのできない、素晴らしいものである。

 眺め、道、渓流と、いろいろな変化に富んだ楽しいルートであった。
 市中心地からすぐのところにこういう山があるのは、ありがたいことである。


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November 01, 2010

和食:ふじ木@宮崎市

 食事会をふじ木にて。常連W氏に遠方からの食通氏数名という、なかなか濃いメンバー。
 ふじ木はいつも通りの全力投球。
 先附け、造りからして、鮮度,素材じつに良いものを使っている。
 焼き物、椀物もまたどれもよろしい。

【シマアジの焼き物】
Simaaji

 シマアジって刺身にするものばかりと認識していたが、焼き物でもとてもあう魚ということが分かった。
 シマアジは、この種類の魚のなかではあっさり系の味であるが、うまく焼かれたことにより香ばしさと、脂のうまみがぐっと増して、刺身とはまた異なる美味さが広がっている。

【フグの幽庵焼き】
Fugu

 ふじ木は素材の直球勝負というばかりではなく、こういった変化球の料理も出て来る。
 フグのような弾力ある魚は、あんまり幽庵焼きには向いていないような気もするが、幽庵漬けをかるめにして、フグの歯ごたえを残しながら焼くことにより、独特の魅力ある料理に仕上がっている。まぶした山椒もいいアクセントになっている。

【炊き込みご飯】
Gohan

 〆の炊き込みご飯は、具も味付けも見事であり、じつに美味しい。
 これはたいへん好評であり、みな何杯もお変りをして、なかには土産に持って帰った人もいた。


 素材、技術、創意工夫、どれをとっても高いレベルの店である。
 やはり宮崎を代表する和食店だと思う。

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