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September 16, 2010

読書:なぜ日本人は落合博満が嫌いか?(著)テリー伊藤

 中日ドラゴンズ監督落合博満氏が名選手であったこと否定する者は誰もいない。では名監督であるかどうかといえば、その業績から名監督であったこと、しかもすこぶる優秀な名監督であったことは、今や明らかとなっている。
 しかし落合監督が就任してから、中日ドラゴンズの観客数は減り続け、それを苦慮した球団が観客を増やすためにはどうしたらよいかを問うた球場のアンケート箱の中身は、毎年だんとつで「落合監督を変えろ」という意見がトップになっている。
 落合監督が中日を率いて以来、Bクラスに落ちたことは一回もなく、日本シリーズには3度出場し、優勝も1回遂げているというのに、なんという不人気ぶり。
 落合監督はかくも有能なのに、なぜ日本人から人気がないのか?
 著者は、日本人論を述べ、そして落合論も述べて行く。

 すなわち現在の日本の閉塞状態は、日本人の過度の協調性の重視に一因がある。現代の日本人は、周りとの軋轢が生じることを嫌い、周囲の空気を読んでそれに歩調を合わせて行くことに長けている。それで周囲とは悶着起こすことなく平和には暮らせる。しかし、そうなると新たなアイデァを、発想、実行する能力は失われ、そうして社会全体の活力が失われていく。現在の日本の衰退はそこに原因の一つが求められる。

 さて、ここで落合論が始まる。本書から引用すれば、
 ・落合は自分が正しいと思ったことは、どんな軋轢が生まれようと主張する。
 ・落合は周囲との折り合いや前例なんかは気にせず、信念を貫く。
 ・落合は常に有言実行、保険もかけず、退路も断って勝利を目指す。

 このように落合は、今の日本人の平均像とは相当に離れた存在であり、そのことが、異質な者を嫌う日本社会のなかで目立ってしまい、そして皆から嫌われしまう原因となる。
 しかし、日本が高度成長を遂げているときには、落合のような日本人はいくらでもいて、彼らが日本の経済を引っ張って、日本を繁栄させてきたわけである。
 日本衰亡が進行中の今、日本再生のためには、周囲がなんと言おうが、周囲に嫌われようが、己の信念を貫く力、すなわち落合監督に象徴される「落合力」が必要であると著者は力説している。

 ま、著者の言いたいことは分かるけど、私としては「落合力」というものは、あくまでも卓越した能力が前提にあるわけで、それなしに「落合力」を発揮してもらうと、その人はただのトラブルメーカーとなる。今の日本は、そういう無駄な「落合力」を持っている人ってけっこう多いのでは。

 落合監督が嫌われる原因は「落合力」に加え、その手法が独自すぎて周囲に理解されにくいことにもあろう。
 落合監督の選手の使い方や、采配は独特なものであり、評論家やスポーツキャスターの予想を覆すことも多い。落合監督ほどのレベルの者になれば、普通の人には見えないものが見え、分からないものが分かり、感じられないものが感じられ、そしてそこから導かれた結論は、常人には理解しがたいものであっても、でも結果としてそれが正解になっていくというわけであろう。…が、やはり、それは普通の人には異常感覚と思えてしまう。

 著者が落合監督に信子夫人と結婚した理由を聞いたとき、
 「そりゃ、きれいだったからだよ。はじめて会ったとき、世の中には、こんな美人がいるのかと思ったもん」と、はにかみながら答えたそうである。
 やはりこの人の感覚は常人には理解しがたい、私のごとき一般人はそう思ってしまった。

 ちなみに、「なぜ日本人は落合博満が嫌いか?」という題名を著者はつけているが、少なくとも私は選手時代も監督時代も、ずっと落合のファンである。

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 なぜ日本人は落合博満が嫌いか?

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Comments

先輩、最近 熱くないですか
穏便にお願いします。

ブログ 楽しく拝見させていただいてます

Posted by: 清ちゃん | September 16, 2010 10:12 PM

…熱いですかねえ?

それはともかく、ちかごろの中日の快進撃、気持ちよくみています。
宮崎は巨人ファンが多いので、中日は人気ないですけど、ああいうミスを徹底的に抑えて、守り勝ちするという緻密な野球は、同じ価値観を有する職業人として、ほんとうに応援したくなります。

Posted by: 管理人 | September 17, 2010 12:52 AM

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