« August 2010 | Main | October 2010 »

September 2010の記事

September 28, 2010

旅館:華もみじ@熊本県南阿蘇

 旅館を特徴づけるものとして、部屋・料理・サービス・風呂・庭・眺望…等々があるわけであり、その全てが素晴らしい旅館が「理想の旅館」となるのだろうが、たぶんそんなものは存在しない。
 個人的には俵屋がその理想の旅館に最も近いものに思えるが、ただし俵屋は眺望はまったくの凡庸である。俵屋が風光明媚なところにあれば、すごい旅館だろうなあとか思わぬこともないが、しかし俵屋は京都のまんなかのあのごちゃごちゃしたところにあって初めて俵屋だという気もする。

 それはさておき、南阿蘇の旅館「華もみじ」の眺望は素晴らしい。
 山の中腹の高台にあり、阿蘇内輪山と南郷谷を、部屋から一望のもとにのぞめ、九州屈指の観光名勝地阿蘇の魅力を十二分に教えてくれる。

【部屋からの眺望】
1view

 華もみじは離れ形式の部屋を一列にして、この眺望をどの部屋からでも見られるように建てられている。
 この形態、これも長崎の絶景を楽しめる旅館「紅葉亭」とよく似ており、名前も似ていることから、同じ系列の旅館かと思い聞いたけど、まったく関係ないとのこと。ただし同様のことを思う人がやはりいるらしく、以前にもそう聞かれたと答えていた。

【旅館】
2way

 大露天風呂は旅館から少し離れたところにあり、そこから見た旅館の姿。

【部屋付き露天風呂】
10roten

 華もみじは10年ほど前に建てられており、あの頃に流行った「部屋付き露天風呂のある高級系旅館」という位置づけにある旅館である。
 こういう旅館が熊本、しかも阿蘇という地で成り立つのであろうかと、建てられた当時そこそこ話題になったのだが、10年たっても華もみじは健在であり、需要はきちんとあったようだ。
 「部屋付き露天風呂」というものは、単に「部屋の外にある風呂」ということが多いのだけど、ここの露天風呂は、露天風呂に最も望まれるもの-眺望もばっちりである。

 料理はどのようなものかといえば、

【造り】
3tsukuri

 おもに天草産の魚を用いて。平目、イワシ、車海老、サザエ。

【食事:ブリの兜煮】
6buri

 この旅館では、このブリの兜煮が名物のようである。半日かけてコトコトと煮たブリの頭は、骨まで軟らかくなっており、すべて食べられる。
 ブリという魚は、よく言えば個性的、悪くいえばクセのある魚であり、人によって好みは分かれるのだろうけど、ここまで煮詰めてしまえば、ブリの特徴ある成分はすっかり流れ、出汁の味がかわりに身にしみて、独特の料理となっている。おもしろい料理である。

【馬刺し】
5basasi

 熊本名物、馬刺しは当然でてくる。

【宮崎牛】
8gyuu

 宮崎牛は薄切りを、かるく炙って食べる。

【黒豚の塩煮】
Kurobuta

 黒豚は角煮ではなく、あっさり目に塩で煮て。

 その他、鱧椀、海老餃子、などが出てきて、〆はトウモロコシご飯にて。

 全体的に南九州の素材を使って、郷土色を出した料理。
 熊本阿蘇を訪れた県外の人には喜ばれるものだと思う。

【部屋から阿蘇をみる】
Morning

 部屋はまあ普通。広くて、清潔であり、リビングのある部屋もある。
 この旅館は、どの部屋からも、阿蘇を眺めることができるのがウリである。

【部屋から見る夜景】
4moon

 そういえば、泊まった日の夜は食事時にちょうど月が出ており、阿蘇の侘しい夜景のうえに澄んだ光を放つ月を楽しめた。


 華もみじは、5年前に訪れたことがある。
 そのときは阿蘇花火大会の日であったのだが、3月にしては、季節外れの大雪が降り、たぶん花火大会は中止となったのだろうけど、かわりに雪の阿蘇を楽しめた。そのときの写真を紹介してみる。

【杵島岳から中岳を望む】
Kijimadake

 雪の降り積もった静かな阿蘇。そこより望む、ほっかほっかと湯気を立てている活火山中岳。

【雪見風呂】
Snow_bath

 雪はしんしんと降り積もり、雪見風呂を楽しめた。

【雪の南阿蘇風景】
Snow_bath_2

 雪がやんでのちの露天風呂からの眺め。
 南郷谷は雪が一面に積もっていた。

 九州を代表する名勝地、阿蘇の眺めを楽みたい人には、是非お勧めの旅館である。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

September 27, 2010

和食:無量塔@9月

Sibuama


 最初から置かれている敷紙には、「しぶあま、どちらもみごと、暁いろ、自然法雨の暁いろ」と書かれている。
 柿のことをいってるのだろうけど、なんだか難解である。秋になると大地の恵みを受けて、食材は全て美しく、美味くなるというような意味かとも思ったけど、違うような気もする。

【地鶏椀】
1wan

 優しめの出汁に、濃厚な味を持つ地鶏、それに根菜の線切りの椀。
 椀の主役の地鶏が、味,食感ともくっきりと浮き上がってくる。

【八寸】
2tsukuri

 八寸は華やかに、伊勢海老の造りと、焼き。豆腐風ポテト、焼無花果、鱧、それに巨峰。大根で作られたぼんぼりが、やわらかに料理を照らしている。
 前来たときも思ったけど、ちかごろ外国からの宿泊者も増えてきたようなので、この手の料理はけっこう受けると思う。

【煮物】
3nabe

 煮物は黒豚を角煮ふうに煮て、それを薬膳仕立てにしたもの。
 黒豚の脂肪豊かな身が、うまく野菜で調整され、いかにも滋養によろしいという感じになっている。

【甘鯛山吹見立て】
5amadai

 甘鯛は、和風マヨネーズで山吹色に染め、それに彩り鮮やかなパブリカを散らして、洋風なつくりである。
 無量塔での、甘鯛の新しい魅力を演出している。

【豊後牛】
4beef

 豊後牛は軽く山葵を和えて焼いている。
 それに焼き栗を添えて。いつもながら無量塔の豊後牛は、豊かな味が広がってくる。

 9月の無量塔には2度来たけど、それぞれ独自に季節の食材を生かした、楽しくも奥深いものであった。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

September 26, 2010

中九州ぐるりとサイクリング(3日目):南阿蘇→高森峠→高千穂→延岡

 3日目のサイクリングは延岡に帰るルートである。
 大きな峠は高森峠だけなので、疲れのたまった足には適したルートだと思う。

【千本桜の道】
1to_takamori_pass

 高森町から高森峠に登っていくには、車では国道325号線を使うのが普通であるが、その道はトンネルが多く、交通量も多いことから自転車で走行するには向いていない。
 自転車には旧道である、道路わきにたくさんの桜が植えられた、千本桜の道のほうが適しているであろう。この道は桜のシーズンを除いては車の交通量も少なく、トンネルだって一つもなく、路面の状態もそんなに悪くない。
 ただ、高森峠への千本桜の道は、緩やかな傾斜が、九十九折りに連なっており、そのため、いつまでたっても上方に道が見えて、峠はまだなのかまだなのかとどうしても思ってしまい、精神的にけっこうきついのが難点ではある。

【高森トンネル】
2takamori_pass

 300mほどの高さを登りつめ、着いたところが高森トンネル。
 ここを越えれば、しばらくは下りが続く。

【奥阿蘇大橋】
3okuaso_bridge

 高森トンネルからの長い下りは、いったんここで小休止。
 立派な大橋であり、渓谷からも相当な高さがあって、橋の途中で下を覗き込むとその高さに感心する。

【寧静ループ橋】
4loop_bridge

 県境近傍にかかるループ橋。
 10数年ほど前までは、このあたりの国道は狭い曲がりくねった山道が続く、まさに「酷道」であった。そこを路線バスが走ってるので、離合するときなどは大変であったけど、この橋が出来て整備も進んだため、見違えるほど走りやすくなっている。

【田原 交差点】
5tabaru_cross

 ループ橋からしばらく走ると、交通の要所田原へと出る。
 なぜか大きなアニメ人形がずらりと飾られており、とくに「千と千尋の神隠し」の銭婆が目立っている。
 田原からは、じわじわと高千穂に登っていき、国道218号線に入ってそれから延岡に向けて、じわじわと下っていく。

【雲海橋】
6unkai_bridge

 高千穂から日之影への道にかかる大きなアーチ橋、雲海橋。
 この橋のたもとにある、レストハウス雲海橋で昼食を取ることにする。

【天ぷらうどん】
7udon

 ワンパターンのごとく天ぷらうどんを頼むが、ここの天ぷらうどんも、「道の駅きよかわ」同様に天ぷらの盛り合わせうどんであった。
 今まで私は天ぷらうどんを、「海老天だけか、海老天と野菜の入ったうどん」と思いこんでいたのだが、…違っていたのか?

【国道218号線バイパスとの合流部】
8root218

 青雲橋のところで、218号線の旧道のほうに下りて、五ヶ瀬川ぞいに進んでいく。
 こちらの道のほうが変化に富んでいて、交通量も少ないことから、サイクリングには適しているであろう。
 そして、バイパスとの合流部に着けば、延岡市も近い。
 だらだら走るうちに、旭化成の大煙突が見えてきて、そしてサイクリングも終了となった。

 今回走ったルートは、車では何度も通った道である。
 しかし自転車で走ると、まったく新たなものが見え、新たなものを感じることができた。
 世の中、まだまだ知らぬもの、知るべきものが多く残っていることを、改めて実感した二泊三日のサイクリング旅行であった。

 ………………………………………
 本日の走行距離:101.7km


| | Comments (2) | TrackBack (0)

September 25, 2010

中九州ぐるりとサイクリング(2日目):由布院→牧ノ戸→阿蘇登山道→南阿蘇

 由布院の夜は雨が降っていたけれど、朝になれば雨はあがっており、外に出れば、洗い流されたようなきれいな青空が広がっている。
 それでは南阿蘇に向けて、サイクリング開始。

【由布院展望レストラン】
1

 由布院は盆地なので、まずは坂を越えて盆地から脱出しなければならない。
 その坂の終了点に、展望レストランがあり、由布岳がよく見える。

【水分峠】
2mizuwaki

 阿蘇・日田・由布院を結ぶ交通の要所、水分峠が最初の峠となる。
 交通の要所だけあって、数年ほど前まではドライブインやガソリンスタンドがあって、それなりに賑わっていたのだが、たぶん大分自動車道の開通の影響から寂れてしまい、閉鎖してしまった。
 水分峠は、九州屈指の観光ドライブロード「やまなみハイウエィ」の始点でもある。

【コスモス】
3

 水分峠からは飯田高原に向けて、ずっと下っていく。
 途中で九重連山が見えてきた。コスモスも咲いていて、これはいい風景である。

【飯田高原】
4janda

 水分峠からの下りの底が飯田高原。壮大な草原が広がり、日本離れした風景を楽しめる。ここから小刻みなアップダウンを繰り返しながら、長者原へと着く。

【昼食休憩】
5tyoujabaru

 長者原の「レストハウスやまなみ」で、昼食休憩。
 ここの名物は、豊後牛を使った「九重夢バーガー」だそうで、けっこう美味そうである。しかしそんなものを食ってしまっては、これからの牧ノ戸越えのときに胃が苦しくなるのは分かりきっているので、それよりは消化の良さそうなトーストセットにしておく。

 今日は天気がよく絶好のドライブ日和なので、オートバイがたくさん走っており、長者原にも20台以上駐輪していた。しかし自転車には、やまなみハイウエィ、それに阿蘇を含めて、合計5台にしか会わなかった。世は自転車ブームというけど、まだまだオートバイのほうが人気が高いみたい。

【牧ノ戸峠】
7makinoto

 昼食を済ませてカロリーを補給し、長者原から牧ノ戸峠までの、300mの登りに入る。
 やまなみハイウエィは観光道路であり、また冬は凍結することから、傾斜は全体的に緩く、それほど力は要しない。淡々と漕いで行くうち、牧ノ戸峠に到着。
 牧ノ戸峠は標高1330m。出発点が海抜0mであるからして、2日かけて1330mを登りきったわけだ。

【ススキ原】
8to_ubuyama

 牧ノ戸峠から阿蘇まではずっと下り基調であり、その長い距離を、由布院からコツコツと稼いできた高度をはきだしながら進んでいく。
 ミルクロードと合流するあたりは、ススキが一面に生えており、それが風に揺れるさまは、まるで波が立つ、ススキの海のように見える。
 ここは、阿蘇を代表する名所だ。

【城山展望所】
9aso_view

 やまなみハイウエィで阿蘇外輪山を下っていくとき、途中にあるのが城山展望所。阿蘇全景を一望することができる。
 阿蘇は盆地であるが、まんなかに内輪山というものがあるので、南阿蘇に行くにはあれを越えねばならない。まだまだ頑張らねば。

【阿蘇】
10aso

 ようやく阿蘇盆地の底に着く。
 広々とした阿蘇谷の風景。その奥に、寝観音と称される阿蘇五岳が屏風のように立っている。

【阿蘇登山道路入り口】
11aso_climb_road

 やまなみハイウエィを走り終え、国道57号線に入ってしばし進み、阿蘇駅のところが阿蘇登山道路の始点である。ここから600mの登りが始まる。
 阿蘇登山道路は、阿蘇のヒルクライムイベント「阿蘇望」のコースとしても使われている。阿蘇望に出るような人たちならこの坂をアウターでガシガシと登っていくのであろうが、私のような脚力不足のお気楽サイクリストは、インナーでゆるゆると登っていくことにする。

【草千里展望所】
13kusasennri

 ゆるゆると登っていき、阿蘇登山道路最高点の「草千里展望所」に到着。
 噴煙をあげる中岳、草千里、烏帽子岳を一望のもとに見渡せる、絶好の展望台である。

【阿蘇登山道】
14aso_way

 草千里展望所からは白水までずっと下り道となる。
 阿蘇登山道路は、このように山のなかの平地をぬって走っていく、いかにも山気分にひたれる道だ。

【白水】
15hakusui

 阿蘇登山道路はここで国道325線に出て終了となる。ここが阿蘇盆地の底なので、ここからは阿蘇のなかはフラットな道になるはずだが、本日の宿は山の中腹にあるので、しばらくすればまた登らねばならない。

【「華もみじ」への坂道】
16to_ryokan

 本日宿泊の宿「華もみじ」は、南阿蘇外輪山の中腹に建てられているので、宿に着くには最後の頑張りをせねばならない。
 しかしこの坂が、今日のサイクリングで一番の劇坂であり、またグリップの利きにくい悪路であったため、途中で自転車を漕ぐのを断念。残りは、押して登っていくことにする。

【「華もみじ」玄関】
17hanamomiji

 なにはともあれ、なんとかたどり着きました「華もみじ」。
 この宿も観察カメラがあるみたいで、たどりついたときには宿スタッフのお迎えあり。「いらっしゃいませ」ではなく、「お疲れ様でした~」の挨拶。
 たしかに、疲れた。

【「華もみじ」露天風呂】
18onsen

 最後にきつい思いをするのは分かりきっていたのに、なぜ「華もみじ」にしたかといえば、それはなんといってもこれ。
 この旅館の露天風呂は、展望がじつに素晴らしいのである。
 阿蘇は、阿蘇の盆地と阿蘇岳を一緒に望むのが、一番よい風景となる。しかしそれにはある程度の高さが必要になり、そういう高さにある宿は、阿蘇では希少である。
 「華もみじ」では、その風景を思う存分望むことができるのだ。

 そして、風呂には缶ビールもサービスでついている。
 この絶景を眺めながら、水分を失った身体にビールを行きわたらせると、幸福いっぱいの気分にひたれる。これだから、サイクリングはやめられない。
 …って、昨日も同じようなことを書いたな。

 ………………………………………
 本日の走行距離 110.7km

| | Comments (0) | TrackBack (0)

September 24, 2010

中九州ぐるりとサイクリング(1日目):延岡→竹田→長湯→由布院

 金土日と3日間休みなのであるが、なんの予定も立てておらず、何をしようかなと思っていた。
 ところでクランク軸が故障していたEPSが今週に修理完了。そして天気予報をみると休日の3日間とも晴天だ。これは自転車で3日間のロングライディングをする絶好の機会である。
 というわけで、9月初めに自転車のパンクで途中断念した中九州サイクリングを、距離を伸ばしたかたちで改めてretryすることにした。

【宮崎-大分県境】
1kenkyou

 三国街道と名付けられている国道326号線を延岡から大分に向けて進んでいく。
 本日は風が強く、この路線は向かい風だったので漕ぐのに力がいったが、自転車の調子は良好であり、すぐに県境へと着。

【唄げんか大橋】
2utagenka

 県境からはずっと登りが続くなか、最初の名所は北川ダムにかかる「唄げんか大橋」。ワイヤを傘状に張った、なかなか面白い形の橋である。

【三重町前の赤橋】
3to_mie

 三国街道はトンネルの多い道で、坂を登りながらトンネルを次々に越えていく。宮崎側からみて最後のトンネルが峠にあたり、そこからはずっと下り道。その下り道が終わりに近づくころに、特徴的な、赤く塗られたスロープ橋にたどりつく。ここまで来れば、三重町はもうすぐである。

 三重町に着いてから竹田までの国道502号線は、フラット基調の走りやすい道である。

【昼食】
4udon

 昼食は「道の駅きよかわ」にて。
 竹田からは、山を越え、そしてまた山を越えというルートを通るので、それに備えてエネルギーをとっておかねばならない。
 というわけで、消化のいいうどんとカロリー補給の海老天との組み合わせの天ぷらうどんを頼んだ。
 …私の知っている天ぷらうどんとは、海老天が一本か二本入っているうどんのはずなのに、ここでは天ぷら盛り合わせのごときうどんがでてきた。出てきたからには、ぜんぶ食ったんだけど、油ものの過剰なうどんであり、このあとのサイクリングでは、こいつがずいぶんと胃にもたれ、かなり苦しい思いをした。

【竹田市】
5takeda

 竹田市の57号線での交差点。
 ここより少しばかり東側に57号線を戻り、県道47号線に入った。

【県道47号線】
6_to_naoiri

 県道47号線で長湯温泉を目指す。
 この道は竹田からずっとゆるい登りが続く。路面の状態はよく、眺めもよく、サイクリングにはお勧めの道である。

【直入町の峠】
7naoiri_pass

 この直入町の看板があるところが、47号線の峠に当たる。
 ここからは長湯温泉まで、ずっと下り道である。

【長湯温泉】
8nagayu

 延岡から100kmほど走ったところで長湯温泉に着。
 奥に見える洋風な建物が「御前湯」。この手の大型温泉施設には珍しく、ここは源泉掛け流しのたいへん気持ちよい温泉が楽しめる。

 けっこうな距離も走ったし、かなりの標高も登ったので、本日は名湯の地長湯温泉で一泊という気分にもなったが、宿を由布院にとっているので、ここから続く山道をまだまだ進まねばならない。

【長湯の四叉路】
9nagayu_cross

 長湯から由布院方面へは、小さな標識がいろいろ出ているので、それに従って行こう。この四叉路が長湯での交通の要所みたいなところで、ここを間違えねば問題なく由布院に行ける。

【黒岳】
10_kurodake

 長湯からはずっと登りが続き、ひと山越えたところからずっと下り。その下りの底が、黒岳への分岐の交差点。黒岳側に行くと、名所男池にと出る。
 由布院方向へは、ここからまた登りの始まりとなる。

【観音トンネル】
11to_yunohira

 延岡側から数えて越えた峠は3つで、この観音トンネルが4つめの峠になる。
 登った標高は余裕で2000mをこえているだろう。さすがに峠はもう結構という気分になるが、とりあえずは今回のサイクリングではこの峠が、峠の最後である。

【湯平温泉】
Yunohira

 観音トンネルから湯平温泉までは、少々荒れ気味の道路をずっと下っていき、湯平温泉に着。石畳が印象的な、静かな温泉街である。
 ここからしばし走ると、幹線道路の国道210号線に出る。

【南由布】
13yuhudake

 今までの道からすると、ウソみたいにフラットな道が続く210号線を走っていき、やがて急カーブを曲がると、いきなり由布岳がぽっかりと正面に見える。
 ようやく由布院盆地に到着である。

【由布岳】
14mt_yuhu

 由布岳はどこから見ても美しい姿の山であるが、由布院駅前から見ると、由布院の街並みと由布岳を一緒にとらえることができ、由布岳という盟主を仰ぐ由布院という街の形がよく分かる。

【無量塔】
15murata

 今回のサイクリングでは、登り坂があと一つ残っている。
 由布院盆地から無量塔への急坂であり、15%を越える劇坂である。最後まで、楽はさせてくれない。
 無量塔は宿に至る道のどこかにカメラを置いているみたいで、宿泊客の車がそこに写るとただちに連絡がいくようであり、宿玄関前に車が着くときにはすでに宿スタッフの出迎えがある、というのがルーチンだ。
 さすがに自転車で無量塔に来る客も滅多にいないだろうから、今回は迎えはないだろうなあと思っていたら、無量塔に着くと、ちゃんと迎えが出ていた。
 …不思議だ。

【無量塔 西の別荘】
16entrance

 今回宿泊したのは、西の別荘。
 玄関が非常に広く、自転車は楽々置ける。
 ここは4名まで泊まれる部屋であるが、自転車4台も余裕で置ける。自転車好きの家族連れがサイクリングがてら無量塔に来るときは、西の別荘がお勧めである。

【生ビール】
17beer

 サイクリング後は、ひとっ風呂浴びてそれから生ビールというのが本道であろうが、今回はかなり汗をかいたサイクリングであり、身体がまずはビールを欲している。それでなにはともあれ生ビールを頼み、ごくごくと飲み干す。生ビールはただちに身体の隅々までいきわたり、生ビールのありがたさを教えてくれるのであった。
 この楽しさのためだけでも、サイクリングはやめられない。


 生ビールを飲んだあと、ひとごごち着いたころ、携帯に明日泊まる予定の南阿蘇の宿から電話が入った。その宿は辺鄙なところにあるので、宿の車での迎えがいるかどうかの問い合わせであった。
 「たぶん自力で行けると思いますけど、途中でくたばっているかもしれません。その時は電話連絡しますので、お迎えをお願いします」と答えておく。
 熊本駅とか、熊本空港からの送迎を、お迎えと考えている宿側としては、理解に苦しむ応答であったとは思うが、それ以上の説明も面倒なので、それだけ伝えておいた。
 (…しかし、翌日宿に着くと、宿側はしっかりと私が自転車で来ることを予想していた。たいしたものだ)

 明日は今日ほどの高さは登らなくて済むはずだが、それでも牧戸峠、阿蘇登山道と、大きな峠を二つ越えて南阿蘇まで行かねばならない。
 しっかりと御飯を食い、さっさと寝て、明日に備えることにする。

 …………………………………

 本日の走行距離: 135.2km


| | Comments (2) | TrackBack (0)

September 23, 2010

中秋の名月@延岡市愛宕山

 本日は中秋の名月であるが、天気予報では夜は曇りとのことで、一年に一度の日なのに勿体ないことだとか思い、そのまま放っておいた。
 ところが8時過ぎに外に出ると、夜空には雲は多いものの、ときおり満月が姿を見せ、そのときに澄みきった光を周囲に放っている。

 延岡には愛宕山という夜景の名所があり、とくに月夜は、街の細々とした光のはるか上、日向灘に己の光を落しながら浩然と月が輝き、それはそれは絶品である。これは見に行かねばと、愛宕山へGo。

【中秋の名月】
Full_moon


【中秋の名月2】
Full_moon2

 今夜は雲が多く、雲の合間から月を望むことで、中秋の月を愛でるという感じとなる。
 しかし、雲がつくる窓から月が姿を覗かせる様は、月が雲を従えているようであり、月が己の美をさらに高めているようにも見える。
 そしてまた雲の流れに月が在る姿は、雲が流れているというより、雲のなかで月が自在に動いているようで、それはたしかに月が舟を漕いでいるように思える。

 奈良時代前の、月を詠んだ和歌に、

 天の海に雲の波立ち月の舟星の林に漕ぎ隠る見ゆ

 というものがある。
 万葉集中の人麿歌集に収められた和歌で、いわゆる詠み人知らずに属するものだが、はるか昔の万葉の時代に、名も知らぬ人が、美しい月を見たときに感じたことが、今の世の私たちにも同様に伝わってくる。

 万葉人が見た月と、私たちが見る月は、同じものであり、そして同じくとても美しい。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

September 22, 2010

光洋@9月

 マグロという魚は、成長過程によって味が違うことと、回遊していることから、旬については諸説あるが、通常の本マグロは秋から冬にかけて美味くなっていくことが普通である。
 季節は、そろそろ秋である。
 光洋はマグロに力を入れている店なので、(…店主は全部力を入れています、と言うだろうけど)、今日はいいマグロが食えるだろうなと期待する。

【マグロ】
Tsuna

 マグロから赤身をはずして、サク取りしているところ。
 身の色といい、霜の入り方といい、これは美味いに決まっているマグロである。

【マグロ鮨】
Tsuna2

 食ってみたマグロの鮨は、光洋得意の熟成を利かした、「私はマグロです」と思いっきり主張している、マグロマグロしている鮨ではなく、口のなかでマグロの味と香りがさっと吹き抜けていく、爽やか系のマグロ。これはこれでなかなかの美味。走りのマグロとしては、これでいいのであろう。
 そして月ごとにマグロは、味、香りを変えて、季節というものを教えてくれるのである。

【赤貝】
Akagai

 光洋では本日のヒカリものとして、イワシとコハダが出てきた。
 イワシは脂のよくのった、とろけるような上物であり鮨としても上出来であった。ただ、これをコハダの鮨と比べると、鰯はその素材の良さが良いだけに、鮨としてなにか無駄なものがあるように感じてしまった。
 コハダのように、鮨になるために存在しているような食材には、それに対抗できるネタはなかなか難しく感じた。

 ところで、鮨ネタの貝のうち、赤貝ほど「鮨になるために存在している」ような貝もないと思える。まず形からして、鮨になるためにあるような形であることは万人認めるところである。
 本日の光洋の赤貝は閑上産のもの。姿はもちろん美しいが、肉厚の赤貝の食感と、そしてあふれる濃厚な味は、鮨として見事なものである。

 そのほかも、いっぱい出て来る、いいネタを使った美味い鮨をたらふく食い、満足の夜であった。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

自転車修理完了

 EPSのクランクがどうにも調子が悪く、結局りんりん館に持って行き、ベアリングに問題があるようだとのことで、自転車を預けているうち、修理完了の知らせが届いた。
 仕事が終わって、宮崎市まで取りに行き、乗ってみたところ、軽快にクランクが回り、これは快調そのものだ。
 その後、JRでそのまま帰るのもなんなので、某料理店に寄ってみる。
 EPSを店外の路上に駐車させておくわけにもいかんので、無理いって店のなかにおかせてもらった。

Bike


 カウンター前の、今日予約の入っていない小部屋に立てかけておく。
 さて、この店はどこでしょう?。

 本日の客は常連客が多く、私の自転車がそこそこ目立つところにあるので、皆が「延岡から自転車で来たんですかあ」と聞く。
 延岡から宮崎まで自転車で来るのは距離的にはべつにたいしたことはないが、平日、仕事が終わったあと自転車で来るほど、私は気力も体力もありませんって。

 自転車が復活したので、週末を使ってロングライドに行くことにする。
 宿を探したり、準備をしたりで、ドタバタした。

 某店の料理はたいへん美味しかったが、某店感想、中秋の名月、ロングライド記などは、帰ってきたからUPの予定。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

September 19, 2010

寿司:もり田@北九州市小倉北区

 寿司屋というものは、特に店を初めて訪れるときなど、独自の緊張感が漂っているのが普通である。
 繊細なバランス感覚のうえに成り立つ鮨という料理は、握る方も、客の方も、それなりにこだわりがあり、それがカウンターを挟んでの、一種のせめぎあいを生じさせ、あの寿司屋独特の雰囲気をかもしだす。

 ただし世の中には、そのような緊張感を微塵も感じさせず、和気あいあいとした、柔らかで温かい雰囲気のうちに、己の極めた鮨を握る達人がまれにいて、その達人の店が「もり田」である。

 九州を代表する寿司の名店「もり田」の店主森田さんは、御年70後半という高齢の方であるが、元気溌剌、矍鑠たる姿で鮨を握っている。
 もり田の鮨はいわゆる創作系の鮨で、ネタには必ず何らかの工夫が入っており、華やかで、複雑な味わいを持つ鮨が次々にと出てくる。その鮨をいくつか。

【イカ】
1

 イカは松笠切りを少し炙り、それにウニとトビッコ(トビウオの卵)をのせて。

【カキ】
3

 カキの鮨は強めに焼きを入れており、カキの香ばしさがまず印象的。そしてカキのなかは、とろりとしたミルキーな味わい。カキの魅力が存分に広がる鮨である。

【子持ち昆布】
4

 子持ち昆布という鮨自体が珍しいが、これにウニとアボガドを添えて、面白い食感と味の鮨になっている。

 もり田の鮨は、江戸前鮨や鮮魚系鮨に慣れたものにとっては、にぎやか過ぎるとか、いじりすぎとかに思えることが多少はあるだろうなとは思うものの、それでもどれもが文句なしに美味い。
 そしてこの鮨を握る森田さんは、美味い鮨を握ることが、ほんとうに楽しくて楽しくてたまらないという風情であり、この店の独特の温かな雰囲気がそこから広がってくる。「もり田」で森田さんの握る鮨を食う、その時間、その空間の心地よさもまた、この店の大きな魅力である。

 森田さんは研究熱心な方であり、つい先日も東北の山形に旅行に出かけ、鮨を食べ歩いてきたとのこと。どの地方にもそれぞれの魅力があり、学ぶこと多きという。
 その森田さんが近頃少しばかり残念だったのが、銀座の「すきやばし次郎」での経験。
 小野二郎さんとは年が10ばかりくらいしか違わないことから、修業時代の経験なども重なるようなこともあろうと、そういう話などをしたかったのだが、二郎さんは鮨を握り始めるや、矢継ぎ早に20数貫を20数分で握り、話を入れる間もなかったと、かなしそうに言われた。
 …しかし、鮨業界の有名人である森田さんを前に、ここからは自分の世界とばかり、超マイペースで一心不乱に鮨を握る二郎さんの姿を想像すると、失礼ながらなんだかおかしくなってしまった。それと、小野二郎が握り始めれば、誰もそれを止めることはできないという伝説は本当だったんだなあ。

 それはともかく、話はできなかったものの、森田さんは小野二郎さんの懸命に握る姿を見て、あの二郎さんが頑張ってるうちは、自分もまだまだ頑張らねばならないと思ったと、頼もしいことをおっしゃられた。
 九州の寿司好きな人たちは、森田さんが、これからも長く現役でがんばってもらうことを願っているから。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

映画:悪人

 今秋の話題映画、「悪人」。

 主人公は幼少時に母親に捨てられたことから、他人とコミュニケーションを取ることが苦手となり、人との関わりは通常とは異なる形でしかとりえない。その祖母は若い主人公を田舎の寂れた漁村に留めておくことに、少しのやましさを感じながらも、自分たちの便利のためには仕方ないと思っている。
 事件を作ってしまう女性は、社会人なのに援助交際を続け、そういう娼婦もどきの存在なのに自分を過大評価しており、知らずして周りの者を苛立たせている。この女性を殺された父親は、娘の真実の姿は知ろうとせず、他人を責めることに懸命になってしまう。
 娘が憧れていた男性は、我がままに育ち放置のお坊ちゃんで、他人の弱さを感じ取ることができず、己の感情のままに、人を平気で殴ったり、蹴ったりするダメ男だ。
 主人公と逃避行をする年増の独身女性は、己の勝手な欲望で、庇護したいと思っている主人公をさらに窮地に追いやってることを知ろうともしない。

 登場人物は、全てがそれなりの愚かさと弱さを持っている。これらの愚かさ弱さはすなわち「悪」なのであり、どんな人間も生まれながらにして、少なくはあれ、あるいは多くはあれ、「悪」を持っている。この悪が積み重なっていき、人は不幸になり、社会は悲哀に満ちていく。

 私たちの人生はそういうものであり、社会とはそういうものである、それが説得力あるリアルさを持って語られ、…なんとも重くて、見ていて辛くなる映画である。

 ただし、映画は最後のほうには救いをかすかに現している。
 映画の題「悪人」が、そこで初めてこういう意味で使われていたのだなと分かり、そして救いがみえてくる。

 以下ネタバレ。

 ………………………………………

 ………………………………………

 ………………………………………

 ………………………………………

 
 主人公は一時の激情で殺人を犯したわりには、他人の痛みに対して敏感であり、その痛みを耐えがたいと思っている男であった。それはもちろん母親に灯台の回る波止場で置き去りにされたときの哀しみから来ているわけで、このような思いをしたくない、させたくないと願う彼にとっては、人を傷つけないことは、人生の深刻な課題となる。
 彼は自分を捨てた母と再会したとき、母がそのことを真に後悔して、我が身を責めていることを知る。彼は貧しき母に金をしょっちゅうせびることにより、母に自分を憎ませた。母が彼を悪人と思えば、母はもう我が身を責めて苦しむことがなくなるから。
 そして逃避行をしていた恋人に対しても、いずれ別れが来た時、彼女が殺人犯をいつまでも待つようなことがあっては苦しめてしまうと思う。彼は恋人の首を絞めて、殺人快楽犯を装うことにより、彼女を逃亡幇助の罪から逃すとともに、彼女に自分を憎ませることで、自分から解放させる。

 人は誰しも悪を持ち、そのことが我が身を不幸に導く。しかし人は自分自身にある悪を見つめることに耐えられない存在であり、悪は自分以外のものにしか求めることはできない。
 そして、その「悪」を持つ「悪人」がいれば、安心してその悪人を糾弾して、心の安らぎを得ることができる。
 すべてを承知して、我が身我が心まで犠牲にして、「悪人」になる。主人公の献身的思いが、映画の核心である。

 ………………………………………
 悪人 公式サイト

| | Comments (0) | TrackBack (0)

September 18, 2010

9月のサーラカリーナ

【アンティパスト】
1

 前菜盛り合わせは、いつものように白いキャンパスに描いた水彩画のような美しさ。チンタネーゼ豚の生ハム、オレンジのムース、銀杏、ハモ、蒸しアワビに黒米、野菜スティックなどなど。

【パスタ1】
2

 最初のパスタは、イカにカラスミにトマトの冷製パスタ。
 かすかな酸味がよいアクセントとなる、涼しくて、爽やかなパスタ。これぞ冷製パスタの真骨頂。

【パスタ2】
3

 先のパスタは夏の終わりにふさわしいものであるが、これは秋の訪れを知らせるパスタ。サンマとキノコのパスタであり、乾麺を使ったパスタなので、キノコの心地よい弾力とうまく調和している。

【パスタ3】
4

 さらに秋を強調するパスタとして、定番のトリュフとポルチニ茸のパスタ。
 麺は手打ちパスタで、もっちりした生パスタが、豊かな味と香りをしっかりと受けとめて、重厚な感じのパスタ料理となっている。

【子羊】
5

 パスタを堪能したあとのメイン料理は子羊の肩肉焼。
 まだ草を食べる前の乳のみで育てられた子羊の肉は、普通のラム肉とは違う、肉そのものの純粋さがシンプルに迫ってくる、面白い食味と食感の料理。

 どの料理も、素晴らしい食材と、丁寧な調理でつくられた逸品ぞろい。
 季節ごとに食べたくなる、サーラカリーナの料理であった。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

September 17, 2010

隠微な楽しみを得るために、無実の人を無理やり起訴してはいけない。

 「北九州爪切り事件」という看護業界ではけっこう有名な事件の福岡高裁判決が16日にあり、被告人無罪という妥当な結果が出た。
 この事件、事件というのも憚れるほどのものであった。

 元々の発端は、寝たきり老人が多くいる病棟に新しく赴任した看護師長が、そこで患者達の足の爪が伸びっぱなしになっており、衣服やシーツにひっかけたりして出血することが多いことに驚き、自ら率先して患者達の爪を切ったり整えたりする「フットケア」を行ったことにはじまる。彼女はフットケア技術の習熟者であり、前に働いていた病棟でもフットケアを全般的に行っていて、実践,指導ともに、最適の人物であったからして。
 そしてこういう寝たきり老人たちの爪は白癬症により肥厚、変形していることがほとんどであり、爪切りの際に爪が外れてしまったり、少々の出血が生じることがある。それでもそういうふうにして爪をケアしないと、結局はより以上の出血や感染を引き起こすことになるから、やはり爪のケアは必要である。
 ところがフットケアの何たるかを知らない、その爪を延ばし放題にしていた病棟の看護師たちは、そこまで爪の処置をすることは老人虐待ではないのか?との疑義を発し、上層部に苦情を訴えた。そしてやはりフットケアの何たるかを知らない病院管理部によって、その仕事熱心な看護師長が告発されてしまった次第。
 このもとはただの勘違いである事件は、なぜか大事件になってしまい、記者会見はあるわ、病院謝罪はあるわで、看護師長は逮捕され、起訴までされてしまった。

 ………
 逮捕、裁判の過程で、フットケアというものがれっきとした看護業務ということが理解されだした。病的な爪を爪切りして少々の出血があっても、それは看護業務として許容されるのである。もともと医療行為、看護行為自体がある程度の人体への浸襲は織り込みずみなので、それをいちいち傷害などと言っていては、医療・看護行為は成り立たない。それこそ外科医は、手術したとたんにみんな傷害罪で訴えられることになる。
 だいたい看護師長を傷害罪で起訴した検察側の証人医師でさえ、「爪切りは看護業務である。検察側が傷害の証拠として示した爪切り跡の写真をみても、これは医学的にもまったく問題ない」というくらいだったので、看護師長の行為は傷害事件になりようがなかった。

 ところが、その仕事熱心で患者の評判も良かった看護師長をなんとか罪人にしたい検察側は、すごいストーリーをつくり上げた。
 この看護師長は、看護業務を隠れ蓑にして、病人の爪を深く切って血を流すことに喜びを感じている性格異常者である。だから例え、爪切りが看護業務のように見えても、それは看護師長の変態的欲望による傷害行為なので、だから有罪だと。
 検察はか弱い女性の看護師長を100日以上も拘留して、そういう自白を師長に強いてそれを供述調書とした。

 世界には70億人近い数の人間がいるのだから、そのような「老人の病気の爪を深く切って血を流すことに隠微な喜びを感じる」変態もいないとは断言できないが、それでも看護師業を長くまっとうに続け師長にまでなった人を、そんな超絶的な変態とするのは、いくらなんでも無理があろう。
 結局は検察の妄想なのである。妄想をそのまま被告人に押しつけて、妄想そのものの供述調書を作成して、それを証拠として裁判を行う。不条理そのものの世界であり、被告人としては、たまったものではない。

 検察は裁判で、被告人は「(職場の人間関係などによる)欲求不満を解消し、隠微な楽しみを得るため、爪を切り詰めるなどして出血させた。正当な業務行為ではない」と主張した。
 そして福岡地裁では、なんと裁判官はこの検察の妄想を認めてしまい、「看護業務であればたしかに爪切りは問題ないが、師長は自分の快楽のために爪を切ったので有罪」と判決を出し、師長は有罪となってしまった。
 まあ地裁はトンデモ判決が湧いて出てくる玉手箱みたいな存在なので、その判決はあくまでもコートジョークとしてしか意味はなく、実質勝負は高裁の控訴審になるという、よくあるパターンがまた繰り広げられ、そして昨日の妥当な判決にいたった次第。

 高裁は供述調書を検察の妄想、作文と一蹴し、師長はそんな異常者でなく、爪切りは正当な看護業務であり、なんら傷害罪を構成するものではない、よって無罪と真っ当な判断を行った。
 じつはこの師長の起訴と地裁有罪判決で、全国の看護師が「フットケア」に恐れを抱き、患者の爪が伸び放題てな事態が生じていたため、看護協会、および看護師、それに数多くの患者さんたちも、ひと安心といったところである。

 この裁判が最高裁まで行く理由はまったくなく、師長の無罪は確定であろう。
 しかし検察の無知と妄想により、3年間も裁判を闘うことになり、拘留されたり、有罪判決を出されたりで、この師長の人生は破壊されまくりであり、本当に気の毒である。

 この裁判、師長の行為になんら問題がないのは分かっていたはずなのに、検察は妄想まで出して、懸命に師長を有罪にしようとした。
 社会のなかで誠実に、正直に、犯罪などとは縁無く生きている人を、無理やり罪人にしてしまおうという検察のはた迷惑で暗い情熱は、どこから来ているのだろう?
 彼らは、目をつけた者はなにがなんでも有罪にしないと気がすまない、それこそ無実の人でも有罪にすることに隠微な快楽を感じる異常性格者なのだろうか。
 私は検察全体がそういう異常者ばかりだという馬鹿なことは言わないが、それでもこの「爪切り事件」それに先日無罪判決が出たばかりの「村木局長事件」をみるに、検察のなかに一定数、そういう異常者がいると判断せざるをえない。

 看護師長は検察の誤った起訴により甚大な被害をこうむった。
 しかしここまで迷惑をかけられても、日本の法律は、個人が検察を訴えることはできない。検察官はまさに特権階級なのである。
 しかしもしも将来的に、このようなひどい目にあった人が、取り調べをした検察官を告訴できる仕組みができたとする。
 すると裁判での告発状には、「検察官某は、欲求不満を解消し、隠微な楽しみを得るために、無実の人を無理やり罪人に仕立て上げ、その人の人生に多大な障害を与えた。これは傷害罪にあたる」と書かれるであろう。
 そしてそれは妄想でなく、今ここにあるれっきとした事実なのである。

| | Comments (0) | TrackBack (1)

September 16, 2010

読書:なぜ日本人は落合博満が嫌いか?(著)テリー伊藤

 中日ドラゴンズ監督落合博満氏が名選手であったこと否定する者は誰もいない。では名監督であるかどうかといえば、その業績から名監督であったこと、しかもすこぶる優秀な名監督であったことは、今や明らかとなっている。
 しかし落合監督が就任してから、中日ドラゴンズの観客数は減り続け、それを苦慮した球団が観客を増やすためにはどうしたらよいかを問うた球場のアンケート箱の中身は、毎年だんとつで「落合監督を変えろ」という意見がトップになっている。
 落合監督が中日を率いて以来、Bクラスに落ちたことは一回もなく、日本シリーズには3度出場し、優勝も1回遂げているというのに、なんという不人気ぶり。
 落合監督はかくも有能なのに、なぜ日本人から人気がないのか?
 著者は、日本人論を述べ、そして落合論も述べて行く。

 すなわち現在の日本の閉塞状態は、日本人の過度の協調性の重視に一因がある。現代の日本人は、周りとの軋轢が生じることを嫌い、周囲の空気を読んでそれに歩調を合わせて行くことに長けている。それで周囲とは悶着起こすことなく平和には暮らせる。しかし、そうなると新たなアイデァを、発想、実行する能力は失われ、そうして社会全体の活力が失われていく。現在の日本の衰退はそこに原因の一つが求められる。

 さて、ここで落合論が始まる。本書から引用すれば、
 ・落合は自分が正しいと思ったことは、どんな軋轢が生まれようと主張する。
 ・落合は周囲との折り合いや前例なんかは気にせず、信念を貫く。
 ・落合は常に有言実行、保険もかけず、退路も断って勝利を目指す。

 このように落合は、今の日本人の平均像とは相当に離れた存在であり、そのことが、異質な者を嫌う日本社会のなかで目立ってしまい、そして皆から嫌われしまう原因となる。
 しかし、日本が高度成長を遂げているときには、落合のような日本人はいくらでもいて、彼らが日本の経済を引っ張って、日本を繁栄させてきたわけである。
 日本衰亡が進行中の今、日本再生のためには、周囲がなんと言おうが、周囲に嫌われようが、己の信念を貫く力、すなわち落合監督に象徴される「落合力」が必要であると著者は力説している。

 ま、著者の言いたいことは分かるけど、私としては「落合力」というものは、あくまでも卓越した能力が前提にあるわけで、それなしに「落合力」を発揮してもらうと、その人はただのトラブルメーカーとなる。今の日本は、そういう無駄な「落合力」を持っている人ってけっこう多いのでは。

 落合監督が嫌われる原因は「落合力」に加え、その手法が独自すぎて周囲に理解されにくいことにもあろう。
 落合監督の選手の使い方や、采配は独特なものであり、評論家やスポーツキャスターの予想を覆すことも多い。落合監督ほどのレベルの者になれば、普通の人には見えないものが見え、分からないものが分かり、感じられないものが感じられ、そしてそこから導かれた結論は、常人には理解しがたいものであっても、でも結果としてそれが正解になっていくというわけであろう。…が、やはり、それは普通の人には異常感覚と思えてしまう。

 著者が落合監督に信子夫人と結婚した理由を聞いたとき、
 「そりゃ、きれいだったからだよ。はじめて会ったとき、世の中には、こんな美人がいるのかと思ったもん」と、はにかみながら答えたそうである。
 やはりこの人の感覚は常人には理解しがたい、私のごとき一般人はそう思ってしまった。

 ちなみに、「なぜ日本人は落合博満が嫌いか?」という題名を著者はつけているが、少なくとも私は選手時代も監督時代も、ずっと落合のファンである。

 ………………………………………
 なぜ日本人は落合博満が嫌いか?

| | Comments (2) | TrackBack (0)

September 14, 2010

蕎麦:しみずの鴨せいろ

Soba

 蕎麦はつゆのみで、山葵や葱も加えずに食べるのが一番美味いとは思っているけど、酒の肴にする場合は、それではシンプルすぎるように感じられるときもある。
 蕎麦屋に行って、ちょいと気合を入れて酒を飲もうかと思ったとき、「鴨せいろ」などのほうが肴としてよかったりもする。とくに「しみず」の鴨せいろは。

 鴨そのものの味もよいが、鴨の豊かな脂が溶け込んだ、少々辛めのつけ汁が絶品である。その汁をたっぷり吸った葱も、鴨葱とはこのことかいうくらいに相性がよい。
 これに端正な姿の蕎麦をちょいちょいとつけながら、蕎麦を食い、酒を飲む。蕎麦食い、酒飲みの幸せな時間である。
 蕎麦を食い終わったあとのつけ汁を蕎麦湯に溶いて飲むと、これもまた絶品なのであった。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

September 12, 2010

カレー:カレーカフェ@宮崎市

【カレーカフェ】
Shop


 一ツ葉有料道路からイオンに曲がる角に、新しいカレー店ができている。
 店は「カレーカフェ」という、シンプルにして、ある意味斬新な名前。
 暑いのでカレーを食いたい気分になっており、よってみる。

【ポークカレー】
Curry

 カレーのベースは、野菜と果物をじっくりと煮込んだもので、やわらかな甘みが広がっている。そこに軽めにスパイスを利かせたもの。
 中庸にして、胃に優しいタイプのカレーであるか。

 店は先週土曜日に開店したばかりであり、開店祝いの花が店内、店外にたくさん飾られている。
 もともとは宮崎市の中心街、若草通りで営業していたカレー店だったそうであるが、その後カレーから離れ、いろいろなことを試して、それから新たな気持ちでここにカレー店を開店したそうである。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

September 11, 2010

映画 バイオハザードIV アフターライフ

 前作のバイオハザードIIIのノベライゼーションで最も迫力あるシーン。
 ウイルスに全土を侵された地球で、安住の地を求めて旅している人々に、ウイルスに感染したカラスの大群が襲ってきた。みなが死を覚悟したとき、地面で燃えていた炎が、突如巨大な竜巻となって空全体へ燃え上がり、空を埋めていたゾンビカラスの大群を焼き尽くしてしまう。人々は驚くのであるが、その中にただ一人「こんなことが出来るのは世界に一人しかいない。今この場のどこかに彼女がいるにちがいない」と思い、周囲を見渡す。すると視界のなかに、主人公アリスの姿を認めた。

 まあ、そういうぐあいにT-ウイルスに感染したアリスは、超常の力を持つ超人となっていた。人間を越えた力を持つアリスは、IIIの最後のほうでは、同様の力を持つクローンのアリスの群れと遭遇し、このチーム・アリスを率いて、アンブレラ本社に襲撃をかけることを宣言して終わっている。

 IVではその超人アリス+チーム・アリスのアンブレラ社との戦闘の物語なのかと思いきや、それは最初のほうで、エピソード的な物語として終わってしまった。
 クローンアリスは全滅し、オリジナルのアリスもT-ウイルスの中和剤を打たれて超人的能力を失ってしまい、元の人間に戻る。
 つまりIIIの世界はいきなりリセットされるわけだ。
 そしてリセット後から、IVのストーリーが始まる。

 アリスは生き残っている人間を探して、世界中を旅している。数百日も誰とも会わない日が続き、自分が世界に残された最後の人間であることを、半ば覚悟するようになる。
 しかしアラスカで一人の意外な生存者と会い、またロスアンゼルスの大刑務所の屋上で、ゾンビに囲まれながらも生き残っている人々を見つける。彼らと合流したアリスは、人類が生き残って集団生活を送っているらしいアルカディアへと脱出することを図る。

 ゾンビやら、モンスターたちが襲ってくるなか、彼らは懸命に闘う。
 人間に戻ったアリスは超常の力を失っているので、武器,体術を使った、人間としての攻撃しかできないのだが、…すごく強い。ほとんど無敵にさえ思える強さを発揮する。
 よく考えれば一作目のときのT-ウイルスに感染する前のアリスも、ゾンビ犬を生身で叩きのめすほどの、人間界最強の生物みたいな存在であったから、こんなにも強くて当たり前か。

 彼らは多大な犠牲を払いながら、なんとかアルカディアに到着。
 そこで待っていたものは、なんと!…。というふうな話。
 まあ、内容はあるようで、ないようなものであり、じつのところどうでもいい。この映画は、ゲームのCGキャラがそのまま実写化されたがごときの、ミラ・ジョボビッチ一世一代の当たり役アリスの活躍を楽しむ映画であり、そしてそれは十分に楽しめた。

 なお、じつはアリスはゲームでは出てこない映画用のキャラである。そして、ゲームで実際に出てきたキャラで、まさにそれが実写化されたがごときの、すごい存在感を持ち、アリスと双壁の人気を持つキャラに、IIで登場したシエンナ・ギロリー演じるところのジル・バレンタインがある。ジルはIIIでもIVでも、再登場が望まれていたのだけど、今回も登場しなかった。
 …と思っていたが、エンドクレジットにSienna Guilloryと出て、「あれ、どこで出てたのかな。いつ見過ごしたのだろう? ひょっとしてタンカーのカプセルの中にいた人のうちのどれか?」とか思い、あとでwebで確認したら、あの美人の戦闘コンダクターだったんだな。
 しかし、あんなのジル・バレンタインじゃないよ、と思ったのは私だけではないはず。

 ………………………………………
 バイオハザードIV アフターライフ 公式サイト

| | Comments (0) | TrackBack (0)

September 05, 2010

カレー:おじいさんの時計@別府市

【石焼カレー】
Curry

 別府ではけっこう有名なカレー店「おじいさんの時計」。
 さまざまなタイプのカレーがメニュー表に載っているけれど、ビビンバの石鍋を使った「石焼カレー」が看板メニューとのことでそれを頼む。

 「石焼カレー」は、要するに焼カレーであり、熱々に焼かれた状態で運ばれてくる。
 見た目の過激さとはちがい、カレールーは玉葱を煮込んだマイルドなもので、それに複雑に配合されたスパイスが、くっきりとした感じで味と香りを整えている。こういう立体的な構成のカレーは、好みだな。
 焼カレーゆえ、ライスはドライカレーの雰囲気であり、底に近づけば焦げ飯となってきて、いろいろな味を楽しめる。

 アーモンドスライス、ニンニクチップ、ニンニクフライ等、トッピングも豊富に備え付けられており、自分の好みに味を変化させることができるのも、この店の特徴である。
 なかなかの名店だと思う。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

September 04, 2010

寿司:大海寿司@別府市

 大分は魚が豊かに獲れるところであり、和食系の店では総じて魚のレベルが高い。そのなかでも別府の大海寿司は大分で獲れる魚のうち、最も良いものを仕入れていることで定評のある店である。
 別府を訪れたついでに大海寿司に行ってみることにした。当日予約であったが、運よく席はあいていた。この店もずいぶんとひさしぶりだな。別府に泊まること自体がひさしぶりであるからして。
 大海寿司は駅前通りから路地に少し入ったところにあるこじんまりとした店で、いかにも鮨職人といった感じの風格のある店主と、気立てのいい奥さんの二人で店を営んでいる。

 最初はお任せで酒の肴を。関アジ、軽く茹でたタコ、ケンサキイカ、玉子、キュウリなど。
 そのあと「活ものではサザエ、アワビ、フグ、オコゼなどもありますが、どれか頼みますか」とたずねられたので、この店の名物のオコゼを注文。すると店主はカウンター前の水槽から、底の方で泰然とかまえていた大きなオコゼを網で掬い、まな板へと直行。あ、こいつのことだったのか。

【水槽】
Fugu

 水槽内ではフグも悠々と泳いでいたのだけど、同僚のオコゼくんがいきなり水槽から引き上げられて、パニック状態に陥ってしまった。

【オコゼ】
Okoze

 オコゼ刺しは歯応え十分で、また甘みが強い。これに肝和えがよくあう。
 皮の湯引きもコリコリとした食感でたいへんよろしい。

【オコゼ潮汁】
Okoze2

 中落ちは味噌汁か潮汁にできるというので、潮汁を頼む。
 オコゼの出汁が豊かに出ており、オコゼの旨みを十分に味わうことができた。
 オコゼは寿司でも出てきたので、ほとんどフルコースを食べたことになる。

 鮨は先にツマミで出てきたものに、アジ、穴子、大トロなど。

【アジ】
Aji

 アジは軽く〆たものに白板昆布で。姿のうつくしい鮨である。

【フグの鮨】
Fugu2

 天然フグはようやく旨みが出てきたとのことで、ほとんど初物みたいなものだそうだ。2日ほど寝かせたものであり、じっくりとした旨みを感じる。

 この店の鮨は、いまどきはやっている個性の強いシャリは使わず、控えめな感じの柔らかいシャリ。それにより、おもに鮮魚系を用いたネタの良さが引き立って、独自のスタイルの鮨となっている。


 肴も鮨もどれも美味しかった。
 大海寿司は、関アジ、関サバ、フグ、オコゼといったところが名物であるけれど、城下カレイもその一つ。今日は入っていなかったみたいで、(時期が少しずれているか)、それがちょいと心残りであった。

| | Comments (3) | TrackBack (0)

別府の温泉で親日家のルクセンブルグ人と出会う。

 二日目は別府に泊まることにした。
 駅前の宿泊案内所で、「部屋がきれいで、広くて、そして露天風呂のあるホテル」とリクエストしたらホテル・エールを勧められ、部屋をとってくれた。
 別府駅前の10号線をはさんで海沿いのホテル群は、別府が古くからの観光地だけあって、いい意味では風情のある、悪い意味では老朽化したものばかりなんだけど、このホテルはリフォームしたばかりみたいで、見た目は新しかった。
 部屋はたしかに広く、また見晴らしもよい。露天風呂からの眺めも、別府湾と高崎山が見え、なかなかのものである。このホテルは当たりだ。

【展望露天風呂】
Roof


 露天風呂で、サイクリング後の汗を流し、駅前の店で飲んだのちまた風呂に入って夜景を楽しんだ。

 そのとき、外国人の親子もいて会話している。その言葉を聞いていると、語尾の感じからしてドイツ語っぽいのだけど、私の知っている単語が入ってこない。どこの言葉なのだろうと思い、Hello, what country do you come from? などときいてみた。
 すると、ルクセンブルクから来たとのこと。「小さくて、無名の国ですけど」とか言っていたが、ルクセンブルクって有名な金融立国だよなと思い、ただ金融立国って単語が思い浮かばなかったので、「いや日本では有名な国ですよ。ワールドワイドにマネーをコレクトして、それをモア・マネーにインクリースしている国ですよね」とかこたえると、「フィナンシャル・センターです」と訂正されてしまった。いや、私もそう言いたかったのであるが。

 そのルクセンブルク人は旅行好きでアジアもいろいろ訪れているのだけど、だんとつに日本が好きでもう5回目の訪日だという。キョウト、トウキョウは言うに及ばず、ハコダテ、アオモリ、アキタ、センダイにも訪れたとのこと。
 そして日本は、世界でも有数のcleanでsecurity safeな国で、これはとても素晴らしいことだと言う。
 100年以上も前にジャパンを訪れた外人さんも同じことを言ってますよと私が言うと、オー、エドジダイカラデスカ~と日本語で返した。よく勉強している人だなあ。

 しかし、日本にいては分かりにくいが、たしかに日本の清潔さと安全さは、近くの国々、それに遠い国々の情報を知れば、世界に誇るべきものであろう。
 親日家の方から褒めてもらい、なんだか私も日本人の一員として、うれしくなってしまった。

| | Comments (2) | TrackBack (0)

由布院ポタリング

 由布院の街は盆地のなかにあり、どこからでも由布岳の美しい姿を眺めることができる。
 天気もよいことだし、街のなかをぶらぶらと自転車で散策しながら、場所ごとに姿を変える由布岳を眺めてみよう。

【道の駅 ゆふいん】
1

 自転車のパンクを修理して、出発は道の駅ゆふいんからとする。
 …それにしても、暑い。

【宿々】
2

 道の駅から少しばかり下ったところに、有名な旅館「おやど二本の葦束」がある。このあたりは他にも人気のある宿が集まっている。

【踏切前】
3

 由布院の街を久大本線が横切っている。ちょうど特急「ゆふいんの森」号が通り過ぎたところであった。

【由布院駅】
4

 由布院駅は磯崎新氏の建築によるモダンな建物。なかにはギャラリーもあり、足湯もある。

【幽霊マンション前】
5

 ここは由布院の心霊スポットとして有名であった高層マンションの跡地である。バブルの時代に建てられた展望温泉付きの6階立てマンションが、結局人が入らぬまま廃墟となってずっと高台に立っており、どこからも目立つ建物であったが、数年前にようやく取り壊され、更地となっている。

【峠への道】
6

 街中を走るのも飽きてきたので、峠までの坂を登ってみることにする。
 5%以下の緩い坂がずっと続く道である。

【峠への道 2】
7

 やまなみハイウェイのこの道は車では何十回となく走ったことがあるけど、自転車で走るのは初めての体験。
 車で走ったときは気付かなかったけど、ほんとうに雄大な風景である。

【峠への道 3】
8

 途中でTREKに乗ったサイクリストを一人追い抜いた。
 なんだか足を使いきったような登り方をしていたが、それもそのはず熊本からずっと漕いできたそうである。熊本からなら標高1400mの牧ノ戸峠を越えてきたわけだから、この酷暑のなかそうとうに体力を使ったものと思われる。

【峠:由布岳登山口】
9

 峠に登りきったところが由布岳への登山口である。
 やまなみハイウエィは別府までさらに続き、これからはずっと下り道になるので、ザックかついでのサイクリングならこのまま容易に別府に行けるけど、車を置いてのポタリングなのでここからはもと来た道を下ることにする。

 下り道はさすがに涼しかったが、盆地に戻れば、アップダウンのけっこうある道が続き、やはり暑かった。
 9月といえど暑さは真夏なみ、今年は猛暑である。


| | Comments (0) | TrackBack (0)

September 03, 2010

和食:無量塔(そうかこれが秋なのか)

Souka


 無量塔の料理は、季節ごとに「無量塔の夏」とか「無量塔の秋」とか名付けられて出てくるけど、今回は「さうか、これが秋なのか」との妙な名前。
 たぶん、「暑くて暑くてしかたなくて今は夏とみな思ってるだろうけど、食べ物はもう秋の気配がしているんですよ」と教えてくれるような料理が出てくると思われる。

【先附】
1_3

 それでさっそく秋の味覚のサンマが出てくる。軽く燻製にして香りをつけ、それに黒豚も加わる。どれも味の豊かなものであるが、とりわけ添わせた野菜の味が豊かさが印象的。

【沢煮椀】
2_2

 椀物は、根菜を極細に切って水の流れに見立てている。この細さでも野菜のシャッキリ感はよく残っていて、食感がたいへんよろしい。
 松茸の小片も入っていて、控えめながらも秋の香りが漂ってくる。

【向附】
25

 造りは以前のシンプルさとはずいぶん変わってきており、関アジ、シマアジ、ミズイカ、それらの食材は複雑に手を加えて調理されている。見た目もにぎやかで、なんというか「国際的」な、外国人にとくに受けのよさそうな料理に思えた。

【鍋】
6

 鍋は鳥骨鶏と地の野菜で。
 弾力ある地鶏の田舎風鍋もいいが、こういう滋味豊かな鶏鍋もなかなかよろしい。

【焼き物】
4

 鮎は塩焼きではなくて、味付けしたウルカを表面に塗って焼いたもの。
 面白い香りと味となり、鮎料理の変化球技。

【和牛ロースステーキ】
5

 〆の和牛はいつもの定番のローストビーフではなくて、ステーキにて。
 柔らかい肉質、おだやかな味つけのソースで、いかにも和食のステーキである。


 後半の料理は、あんまり秋という感じはしなかったような気もするが、華やかで、変化に富んだ美味しい料理を楽しめました。

| | Comments (2) | TrackBack (0)

旅館:無量塔「新」

 本日の宿泊は「新」の部屋。

【リビング】
1_2

 雪国の旧家を移設して造り上げた部屋は、歴史を刻んできた風格を感じさせる。
 このリビングで最も存在感を示しているのは大きなソファであるが、向きが少しおもしろい。
 無量塔の部屋のリビングは、部屋そのものの魅力をじっくりと味わってほしいとばかり、ソファは壁側を向いている部屋がほとんどだけど、なぜか「新」だけはソファが庭を向いている。大きなガラス窓を通して、庭の奥には雑木林が広がっており、鳥たちの鳴き声が響いている。ソファに寝っ転がって、ゆったりと自然の音楽を聴くことにするか。

【和室】
2

 四畳半のこじんまりとした部屋で、中央を貫く大きな柱が空間の主役を務めている。夕食と朝食はこの部屋で。

【風呂】
3

 風呂は長方形。
 ここも大きな窓を通して、雑木林がのぞけ、半露天風呂的雰囲気である。
 24時間こんこんと流れる源泉の湯の感触は、やわらかで、すばらしい。


 部屋も食事も温泉も、そしてサービスも、とても高いレベルの宿である。
 オーナーの突然の死で、裏側ではまだバタバタしているところもあろうが、そういう面はみじんも見せず、いつもどおりの落ち着いた、重厚感あふれる雰囲気に満ちた無量塔であった。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

最低のサイクリング(延岡~宇目)

 夏休みを消化していないので、9月いっぱいまでにどこかで休みを取る必要がある。
 天気予報をみると、9月3日(金)は終日好天のようだ。それならばこの日に休みをとって、ひさしぶりに自転車でロングライドをやってみようかと突然思い立った。
 ただ9月とはいえまだ暑いので南方面はとても行く気はしない。西方面は何度も行ったことだし、今回は北方面を目的とする。北川から県境を越え、竹田まで出て、それから長湯経由で山を越えて、由布院に入り、そこで温泉につかって一泊というプランを立てる。130km以上走れるし、それだけ走ると温泉もさぞ気持ちよかろう。そして翌日は由布院盆地をぶらぶらと自転車で散策(ポタリング)して、その後は阿蘇か別府かに泊まることにしてみた。

 さて、朝出発前に自転車を点検すると、ペダルを回したときクランク近傍から異音がする。ボトムブラケットが原因かとも思ったが、トルクレンチで締めあげても音が消えない。クランク軸そのものになにか異常が来ているようだ。前にもボトムブラケットがいかれたばかりだし、どうにもカンパのコンポは故障が多い。スーパーレコードは信頼性高いはずだが、だめじゃん。
 自転車の心臓部に異常があるままロングライドはできないので、EPSはあきらめて、久しぶりにクロスバイクCambiagoの出番とする。EPSより巡航速度は1~2割は落ちるが、ロングライドには問題ないバイクである。

 ボトルケース、サドルバック等の備品をEPSからCambiagoに移し替え、さあ出発。
 9月になったとはいえ、外はまだまだ暑い。ただ、25km以上の速度で走っていると風はかならず吹くわけで、いわば扇風機を抱えて乗っているようなものなであり、気温ほどにには暑さは感じない。

【宮崎大分県境】
1

 順調に県境に到着。
 ここからは豊後大野までは峠越えになるので、気合いを入れて行こう。

【パンクしちゃったよ】
2

 しかし宇目町に入ったところで後輪がパンク。
 タイヤを調べると、小さなガラス片が刺さっていた。どこかで拾ってしまったらしい。とりあえずガラスを取り除いて、チューブの交換を行う。そしてハンディポンプで空気を入れる。クロスバイクの大気圧はけっこう高いので、タイヤがカチカチになるまで空気を入れねばならないのだが…

【あれれ】
3

 なんたることぞ。空気を入れてるうちにバルブが折れてしまった。何度も空気を入れるうちにバルブとリムの穴がカチカチ当たってその衝撃で折れてしまったようだが、…その程度で破損するようじゃあ、空気をたくさんいれられない。
 次のスペアのチューブを使って空気を入れるが、このチューブが駄目になるとアウトなので、バルブに負担がかからない程度にしか空気は入れられなかった。
 空気圧の低いタイヤではリム打ちしやすいので、とてもロングライドに自信はもてない。朝のEPSの故障といい、パンクといい、パンク修理の失敗といい、なんだか自転車の神さまが今日はロングライドはやめとけと言ってるように思えてしまう。もうこれ以上進むことはあきらめて延岡へ引き返すことにする。
 そして、25kmほど走って和田越トンネルを越えたところでやはりチューブがリム打ちしたみたいで、後輪がパンクしてしまった。パッチ当てて修理する気力も起きず、延岡市に入っていることもあり、サイクリングそのものをあきらめることにした。

【輪行袋登場】
Bag

 最初から輪行を予定している場合はきちんとした輪行袋を使用するほうが適切であるが、アクシデントに備えての携帯用輪行袋は小さい方が便利である。
 オーストリッチL-100は、ペットボトルケースにも収納できるほどのサイズであり、場所・重さともサイクリングの負担が少なく、なかなかの優れものだ。
 ただこの輪行袋、使い方が難しい。輪行袋というものは、自転車をバラしたあとに、袋のなかにフレームを立てて入れて、その両脇にタイヤを置いて、それから袋を閉めるという単純な作業で使用できる。しかしL-100は試しに使ったとき、フレームを入れてしまうと、タイヤを入れる余裕がなくなってしまい、タイヤを入れる場所がなくなってしまった。まさか袋は2ついる? そんなことはないはずだが、この製品には説明書もついていない。私は使い方について考え込んでしまった。そして袋をよくみると、絵が描いてある。出来の悪い鳥の絵のようであるが、どうやらこれが自転車の収納法のようである。この形に自転車を組み立てて、それから袋に入れれば、なんとか使えそうだ。

【自転車組み上げの図】
4_2

 こういうふうに、立てたフレームに備えつきのバンドでタイヤを固定する。
 そうなると先の鳥の絵に似た感じとなる。
 このコンパクトな形になれば、下から袋をかぶせてたくりあげれば、輪行袋に自転車を収納できる。ただしフロントフォークは袋から付き出るが、もともとそういう仕様なんだろうなあ。

【輪行袋収納後】
6_1

 延岡市内なので、バス停にいればそのうち適切な路線のバスがやってくるとは思われるも、待っているのは暑いので、タクシーを携帯で呼んでさっさと家に戻ることにする。

【タクシーに】
5

 自転車は輪行袋に入れさせすれば、飛行機・列車・バス・タクシー、なんにでも載せることができる。Cambiagoは元々小さめのバイクなので、タクシーのトランクでなく、後部座席にでも収容可である。
 さんざんな目にあったのち、とりあえずは家へと着く。


 家についたのち、まずは故障しているEPSを田中サイクルに修理に持っていった。クランク自体がおかしくなっている可能性があり、その場合は部品そのものを交換しないといけないかも、とのこと。そういうことになったら、シマノの電デュラに全セットそっくり変えてしまおう、と心に固く誓う私であった。
 そして、Cambiago用の28サイズのチューブを購入。Cambiagoには明日も由布院で走ってもらわないといけない。
 それとチューブへの空気入れトラブルへの対処も教えてもらう。
 チューブのバルブ部は元々破損しやすいところであり、ハンディポンプはバルブ部に負担がかかりやすいので、空気を入れるときはバルブ部がなるべく動かないように注意しないといけないそうだ。そのため、トラブルを避けるためにはフレキシブルチューブのついたタイプのものの方がよいとのことで、最近はそちらのほうが人気が高いそうである。さっそく注文しました。

 以上をすませて、クロスバイクを輪行袋ごと車に詰め込んで、車で由布院へ再出発。
 なにしろ既に宿はとっているので、結局は由布院に行かねばならない。
 自転車については、あらためて明日ポタリングを楽しむことにしよう。

| | Comments (2) | TrackBack (0)

« August 2010 | Main | October 2010 »