読書:ルバング島戦後30年の戦いと靖国神社への思い(著)小野田寛郎
日本の戦没者追悼施設は靖国神社であるけれど、政治的なからみがあって、政府高官、外国の要人が参拝しにくいようになっている。
そのために、10年ほど前に新たな戦没者慰霊施設を作ろうとした運動があった。
それに対して、当時小野田寛郎氏が文芸春秋誌に思いを寄稿し、それはたいへん印象深いものであった。
小野田寛郎氏は 陸軍少尉としてフィリピンで遊撃作戦の指導に従事していた軍人である。氏は終戦後も投降せずに戦争を続けていた。そのため軍では行方を把握できずに、氏は戦死と判断され、靖国神社に英霊として祀られた。しかしその後氏はルバング島に生存しており、しかもまだ帝国軍人として戦争を続けていることが分った。日本政府は元の直属上司に氏への任務解除令を出すことを命じ、その結果小野田氏は戦争を止め、フィリピン基地に武装解除して投降した。フィリピン政府は小野田氏に恩赦を与え、日本に帰国。当然、靖国神社への合祀は取り下げられることになった。
このように小野田氏は生きたまま靖国神社に英霊として祀られていた数奇な経験の持ち主である。小野田氏はその経験から、自分はもの言えず靖国に祀られている英霊たちの代弁者となる資格を持っていいであろうと言い、以下のようなことを述べられた。
自分達は靖国で会おうと約束しあい、あの戦争を戦った。いずれ靖国で会えると思っていたからこそ、国に命を捧げ、身を賭してまで戦った。そして戦いのなかで多くの若い命が散っていった。
英霊たちは靖国にいる。しかし今、国は靖国と違う慰霊施設をつくろうと言う。それは自分たちへの裏切りである。そんなことが許されるわけはない。国は戦争に負けて良心さえ失ってしまったのか。
戦争のなんたるかも英霊のなんたるかも知らず、軽薄な論議を重ねる政治家へ対しての、強く迫力ある弾劾であり、読んでいて心打たれるものがあった。
小野田氏は機会あるごと、英霊への思いを語られている。
紹介する本書では、文芸春秋での憤りのトーンは抑えられ、若くして散った英霊たちへの、慰霊する施設の必要性を述べてられている。
すなわち戦争に行ったものたちの多くは若者であり、そしてまだ結婚もしていない者が多かった。彼らは子供を持つこともなく、戦場で亡くなってしまった。彼個人に対しては、しばらくは親が供養し慰霊するであろう。しかし親が亡くなったあとは、やがては供養する人もいなくなる。
そのとき、国が彼を供養せずに、誰が供養するというのか。
国のために命を捧げた者を、そのまま放っておくようなことをしてよいわけがない。靖国は英霊たちへの鎮魂の場であるとともに、若くして逝ってしまった者たちへの供養のためにも、大事な存在なのである。
このようなことを、落ち着いた口調で語る。
小野田氏の説得力あふれる靖国への思いに、私ごときがなにをつけくわえることもない。
ただ、戦争を知らない世代の私でさえ、国を愛し、国のために散った人に対して、国は、そして国民は、敬意を払い、安寧を願い慰霊するのはあまりに当たり前のことに思える。
哀しいことに、真の軍人であり、真の日本人である小野田氏は、帰国したのち、命をかけてまで守ろうとした日本という国を、一度は捨てている。
しかし小野田氏は、日本のために自分がまだやれることがあることを自覚し、今は日本のためにいろいろと講演や対談などの仕事をしてくれている。
平成22年8月15日、靖国参拝についてまた民主党の政治家がいろいろとやらかしている。
小野田氏の復帰というのも、彼らのような不健康であり不実である存在に対しての抗議の面もあったであろう。
小野田氏のごとき健全な精神が確固として日本に在るときは、彼らをただの愚か者と嘲笑しておればいいのだろうけど、これからも彼らの愚蒙ぶりを嘲笑し、監視し、暴走を阻止するのは、私たちの日本人としてのこれからの大事な務めである。
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ルバング島戦後30年の戦いと靖国神社への思い
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