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June 29, 2010

鹿下絵和歌巻@福岡市美術館

 松本清張に本阿弥光悦を題材とした「光悦」という短編がある。
 日本芸術史上、最高度の位置にある光悦という芸術家の性格の悪さを描いたものであって、なかなか面白い。
 その作中に、俵屋宗達が下絵を描いて持ってきた巻物(それだけで国宝級の芸術品である)に、光悦が和歌を書いていき、自分の書の出来が気に入らないと、その部分を宗達の目の前でビリビリと破ってしまうシーンがある。
 普通なら、「し、師匠、なにすんねん」と叫んでしまうような光景であって、光悦の完璧性と独善性を強く印象づける場面である。

 さて、福岡市美術館でシアトル美術館蔵の名品の展覧会があった。
 そのなかに、「鹿下絵和歌巻」と題された、俵屋宗達が鹿の下絵を描いた巻物に、本阿弥光悦が新古今和歌集の歌をしたためたものがある。先の「光悦」で出てきた日本の芸術史上の巨人二人のコラボレーションものである。

【鹿下絵新古今集和歌巻】
Sika_2

 実物をみたのは初めてであったが、光悦の自在にて奔放たる書の素晴らしさはともかく、宗達の鹿がまた見事であった。一筆書きで描かれたようなデッサンの流れは、優美にして、完璧であり、まさに天才のもの。そしてその線から現れた鹿たちの姿は、ユーモラスで可愛らしく、なんと生き生きとしていることであろう。

 これを見て思った。
 「光悦」の下絵を破るシーン。あれは絶対フィクションだ。世の中にこのようなものを破れる者などいるはずない。

…………………
 シアトル美術館蔵の「鹿下絵和歌巻」公式ページ
 シアトル美術館蔵の「下鹿絵和歌巻」が全部掲載されています。

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