登山:大崩山 (三里河原~モチダ谷~山頂~ワク塚)
今年の5月の連休はずっと好天が続き、山登りにはもってこいの日ばかりであった。連休最後の本日も、午前中仕事をさらさらと終え外に出ると、晴天である。それならばと、山登りに行くことにする。
延岡はいい山が近くに多くあり、気軽に山に行けるのが良いところだ。
祝子川登山口に着いたのが午前11時。今回は新緑に溢れているであろう三里河原経由で大崩山に登る予定であり、結構距離がある。だらだら登っていると日が暮れる可能性があるので、てきぱきと登っていくことにしよう。
登山道に入ってすぐ見えてくる大崩山のシンボルマークの小積ダキ。
白く輝く巨大な岩の塔と、朱色のミツバツツジのコントラストが鮮やかでよろしい。
三里河原ルートは、祝子川に下りるまではずっと山肌に沿って歩くわけだが、その途中での一番の名所が五葉ダキ。花崗岩の一枚岩はそれ自体が美しく、周囲の眺めもまた抜群。
登山道はテン場に出会ったところで祝子川の川原に下りる。ここが吐野(はけの)である。
ここからは川原の小石や岩の上を適当に歩いて上流へつめて行く。
三里川ルートの要所である吐野は登りに使うときにはまず間違いなく見つかる場所であるが、大崩山山頂からの下りに使うと案外見過ごしやすいので注意が必要。ただし、ここを過ぎて歩いていくと、そのうち切り立った淵にぶちあたりロープ持参でないと進めなくなるので、必ず引き返すことにはなる。(経験者は語る)
九州で最も美しい渓流とも呼ばれる祝子川。
たしかに澄みきった水、自然林の樹々の緑の豊かさ、石や岩の美しさ、どれもが素晴らしい。
このルートのハイライトは三里河原。
一枚岩のスラブが渓流の底を造っており、その平らな岩の上を清流が、一面全体を滑るようにさらさらと流れている。不思議な静けさと安らかさを感じさせる、水の流れ。
そして両岸の樹々は今まさに新緑の盛りであり、緑あふれる風景となっている。
見どころ多い大崩山でも、ワク塚群と並ぶ、屈指の絶景。
三里河原の一枚岩が終わって渓谷が険しくなる頃、モチダ谷への入り口があり、そこからモチダ谷を登りつめるコースに入る。
モチダ谷もまた美しい沢であり、いくつもの花崗岩でできた滝をみることができる。最初にでくわすこの大きな滝は、右に巻いて登ることになる。
このナメ滝も一枚岩で美しい。
思わず、なでたくなるような滑らかさである。
モチダ谷コースのランドマーク「横岩屋」
岩屋につっかえ棒のように木を差し込んでいるのは、山の約束事か。
山々の岩屋でよく見かけるこの光景。これ見るたびにダリの絵を思い出すのは私だけでしょうか?
それはどうでもいいとして、横岩屋を過ぎると沢の水の量は減り、傾斜も急になってくる。道も分かりにくくなるが、ここでは稜線が遠く見えているのであれに向かって行けば、最終的には間違うことはない。
モチダ谷も稜線近くの上部になると、水は完全に涸れて、このように苔むした岩がゴロゴロする岩場となる。ここは晴れの日はいいが、雨の日はとても滑りやすく、難所となる。
だいぶと前に初級者を連れて雨の降るなかこのルートを下ったことがあるが、連れて行った者は何度も転びそうになり、見ていてひやひやしたことがある。なんとかモチダ谷を怪我することなく下りきったら、祝子川は増水しており、渡渉は命がけみたいな行為となって、あれは大変であった。(同行者、泣き出したし。)雨の日は、三里河原コースは使うべきコースではない、と一応書いておこう。
モチダ谷上部にはこのような遭難追悼碑がある。
50年ほど前にここに飛行機が墜落した事故の追悼碑である。飛行機の残骸がいくつか残されており、大半は錆ついていて、事故からの歳月を物語っている。
遭難追悼碑からは稜線まではすぐである。稜線に出れば、熊笹が生い茂る登山道にと合流。
普段は大崩山は山頂には登らないのだが、合流部から山頂へはすぐの距離なので、ついでに寄ってみることにする。
まずは「石塚」に着く。大崩山を知る人は誰しも、「頂上が石塚だったらよかったのに」と言う。その通りに、石塚は岩の格好もよく、また眺望も素晴らしいことから山のトップとしての貫録は、山頂よりもはるかにある。
山登りは、基本的には山頂に着いた時が一番嬉しいわけで、そのときの山頂が、見晴らしの良いところか、そうでないかで、ずいぶんと登頂の満足度が変わってくる。標高は山頂とほとんど同じくらいなんだから、こっちを山頂にしていいんでは、と私も思ったりする。
石塚からは360度、九州の山々を望むことができる。
こちらは大崩から祖母傾にいたる縦走路方向の写真。名峰をたくさん見ることができる。
石塚からはほとんど登ることはなく数分の徒歩で山頂に着く。
何の変哲もない場所であり、また樹が生い茂っているので眺望はよくない。
大崩山は山全体はすごく素晴らしいのに、山頂だけが凡庸である。だから大崩山は一度山頂まで登ったら、それからはまた大崩山に登っても山頂まで来ない人が多い。ずいぶんと虐げられた山頂であり、たぶん九州で一番可哀そうな山頂である。
下りはワク塚ルートをとることにする。
稜線はアケボノツツジが満開の時期を迎えている。ピンクの花で満ちたアケボノツツジの林が、どこにもかしこにある。
連休中ずっと良かった天気も午後からは崩れてくる、との予報通り雲が湧きだしてきた。
上ワク塚は、花崗岩の白い岩塔をキャンパスに、アケボノツツジのピンクと松の緑で点描したような艶やかな姿。そこにガスがまとってきて、神秘的な雰囲気をかもしだしている。
アケボノツツジの咲き乱れる稜線と別れて、傾斜の厳しい下山路を進んでいき祝子川に到る。
ここからの小積ダキと下ワク塚の眺めは、大崩山有数の名物であるが、それらはガスのなかに半ば埋もれてしまっている。しかし雲からにじむ日の光は、峰々の後光のように広がり、荘厳なものがあった。あと30分も待てば、いい夕焼けになりそうであり、それはそれで素晴らしい景色とも思えたが、日が暮れての下山もイヤだったので大人しくさっさと下山する。
大崩山山荘をしばらく過ぎたところで、登山者2名を追い抜いた。
GWというのに、本日大崩山のなかで人に会ったのは、この2名だけであり、静かな山行を楽しめた。
白く輝く花崗岩の巨岩、新緑あふるる祝子川、稜線上の満開のアケボノツツジ、大崩山の魅力を存分に堪能した一日であった。
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