風車小屋はなくなってしまうのが世の習いとはいえ。
中部国際空港から名古屋へ行くまでの沿線の風景は桜が満開であり、名古屋も桜の美しい景色が楽しめたはずだが、今回は仕事で名古屋に訪れたので、観光名所を訪ねることもなく、仕事に(それに夜の食べ歩きに)専念していた。
とりあえず、仕事関連の会議で仕入れた話などを紹介。
これは我が業界の以前の人口構成図。
当業界はその他の業界部門で活躍していた人が中途で入っていることはあまりないので、人材の供給は新人の入会にかかっている。
以前は若い人がコンスタントに入ってきて、40才過ぎまでずっと活躍し、50過ぎて体力気力が限界になり、リタイヤしていく人が増えていく、という図のごとき人口曲線を描いていた。
これが現在の当業界の人口グラフ。
当業界は10年くらい前から若い人にとんと人気がなくなり、入会者は減り続け、今はこのような山型のグラフとなり、中央ピークの50歳前後の人たちが業界を支えている。
この年代の人たちは今後どんどん引退するので、このピークはあと20年すると今の30代の人たちに置き換わるわけであり、20年後にはピークの数は、矢印のごとく右に移動し、ぐんと減ってしまう。
そういうわけで20年後には確実にこのようなグラフになる。
外国の同業者に我が国の現状の惨状をグラフで示すと、「おお、mountainがhillになるのですね」とか言われたそうであるが、man powerで持っている当業界は、この人間の総数では、全体を支えることは不可能である。もはや、我が業界は滅びを待つのみ。
ドーデの名作「風車小屋便り」では、産業革命の社会の激変のなか、小麦製粉の仕事が、次々と蒸気機関による機械製粉に奪われ、営みを終えていく風車の姿を哀愁をもって書かれていた。風車同様、わが国でも、炭鉱,養蚕,捕鯨等々、世の流れとともに衰退していった産業はいろいろあるのだが、それと同様に、我が業界も滅びの道にいっしんに進んでいるようである。
需要はそれなりにあるんだから、滅びる理由はなさそうだが、滅びが「社会の意思」ならそれも仕方ないのでしょうねえ。…しかしほんとにそれでいいのか? どうなっても、おれは知らんぞ。
さて、人が減り続けているのに、我が業界は本来の業務に加え、雑用が加速度的に増加している。
その雑用にどう対処するかのシンポが開かれていた。
ある施設の対応策。
「私たちはみんなが雑用をするのでなく、一人の者を雑用担当に専任させ、彼がすべて対応するようにしました。これで、我々の雑用の量が減りました」
それに対して司会者が、「なるほど。しかし一人が専任になったということは、その人の本来の業務を他の人が分担しないといけなくなり、結局は全体の仕事量は一緒ですよね。あ、一人人員を増員したのでしょうか」と突っ込む。
演者は、「いいえ、増員はありません。ご指摘の通り、やっぱり忙しいです」とのこと。なんなんだ、いったい。
また、ある施設の対応策。
「当施設でも雑用が増え続け、本来の業務に支障を来している。しかし人も金もないからとの理由で、何もサポートを受けることができない。人も金もない以上、頭を使うしかない。当施設では、このように雑用に対してその操作のステップを改良することにより一件にかける時間数を30分から15分に減らすことができた」
…はあ、ため息のでる解決策だ。
人もない、金もない。
何の援助もサポートもないなか、しょうがないので、当時者がボランティア精神で、よれよれになりながら、けなげに仕事をこなしていく。
こんなことやっている業界に、若い人が来るわけないよなあ。
私もこのシンポを聞いていて、まじにこの業界から足を洗いたくなってきた。
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