寿司:浜源@名古屋市昭和区
名古屋市の繁華街から離れた住宅街のなかに、ひっそりとたたずむ「浜源」。
5年ぶりに訪れるが、やはり分かりにくい場所にある店だな。
しかし店が見えれば、店の構えをみるだけで、「ここは美味い鮨を出すに違いない」と確信できる、そんなつくりである。
カウンターに座ると、目の前のネタ箱のなかには、つやつやした美しいネタがいくつも並んでいる。この店のネタの多くは地元の三河湾産のものを使っており、そこで獲れる最良のものを仕入れている。日本の魚のたぐいは良いものはいったん築地に行ってしまうことが多いが、なかには努力して良いものを地元に留めている店があり、「浜源」はそういう店である。
肴は、マコガレイにホシガレイの刺身から。鮮烈な香りと、弾力ある歯応えがたまらない。アワビの酒蒸しもアワビの味がよく凝集している。タイラギの炙りは食感も香りもよし。子持ちシャコや、アカイカもまた滋味豊かなもの。渡りガニのカニ味噌和えもまた旨み十分。珍味のバチコは、太めのためもっちりした面白い食感のもの。ウニは三重のもので、これは旬にはまだ少し早いか。海老を擦りこんだ厚焼き玉子は上品な甘さがよろしい。
握りは和歌山の本マグロに、赤貝、鳥貝、ミル貝、コハダにアジに、アカイカ、サヨリ、穴子などなど。
〆ものは優しい〆方で、貝はいずれもfreshそのもの、アジのねっとり感は素晴らしく、穴子はふんわりと口の中で溶けていく。
シャリは酢と塩を利かせて味わいよし。はらりとほどける握り具合も見事なもの。いずれもじつに美味い鮨である。
店主は東京で修行したのち、30年以上も前に名古屋のこの地で開店。
名古屋でも本場に負けぬ江戸前寿司を出してやるとの店主の意気込みは、最初のうちは地元の人に理解できず、酒蒸ししたアワビ、青魚の〆もの、白身の昆布〆などは、「素材が痛んだからそういう細工をしているのだろう」と思われていたそうである。しかしやがては江戸前寿司の魅力が伝わりだし、こういう辺鄙なところにある店なのに、客の次々に訪れる人気店となっております。
名古屋で本格的な江戸前寿司を食いたいと思った時、というより美味い寿司を食いたいと思ったとき、この店は決してはずすことのできない名店でありましょう。
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Comments
何度か名古屋で食事をした際に、良い魚は築地に行ってしまうと言われ
そんなもんだろうと思い、魚の旨くない土地柄と諦めていました。
しかし、当方の努力が足りなかったんですね。
反省!です(笑)
Posted by: 輝ける黄昏を目指して | April 16, 2010 11:31 AM
三河湾って、じつは魚の宝庫であり、鮨のネタは一通りそろう豊かな海なのです。名古屋の食文化はあんまり魚のほうに向いていないようですけど、魚好きの人はそれでもいくらでもいるわけで、そういう人が集う店では、店主が懸命に地元の良質の魚をキープしているようです。
宮崎は、地元の魚については、魚のキープうんぬんの前に、獲った魚の手当ができる専門家が乏しいので、いい魚そのものが少ないそうです。ただ県北の魚は、けっこう質が良くなってきているようですが。
Posted by: 管理人 | April 17, 2010 01:00 AM