和食:要庵西富家
春の京都の宿は「要庵西富家」にしてみた。
要庵は、あのミシュランの料理部門で、京都の宿でただ一軒二つ星をとった宿である。柊家でさえ一つ星なのに、それよりミシュラン審査員が美味いと判断しているわけだから、その実力にはついつい期待してしまうではないか。まあ、ミシュランが示している他の星付き料理店を見ると、ミシュランがどこまで信用できるかは、はなはだ心もとない気もしないでもないが、要庵はじつは食通の人達の評価が以前から高かった宿であり、ミシュランは信用できなくとも、その人達は信用できる。
旅館の価値の第一を料理とする私としては、一度は訪れたい宿であり、桜の京都を愉しむついでに訪れることにした。
料理の全体としての評価は、たしかに高いレベルのものだったと思う。
本格的な京料理であり、華やかさも、繊細さも兼ね備えたものであった。
そのうちのいくつかを写真で紹介。
京都の定番というわけでもないのだろうけど、京都では白身魚の薄造りをよくみる。
さくら鯛特有のよく締まった身が形よく並べられている。かみしめれば爽やかな旨味が広がる。
八寸は大根の薄切りをぼんぼりに仕立てあげ、玉子、菜の花、海老、鴨、蛸と、色とりどりの食材を照らして、艶やかな料理を演出。味付けはいずれも京風で滋味豊か。
少し固めに炊かれた鯛ご飯は、鯛の味がよくしみて、力強い料理となっている。
味噌汁は京都の白味噌に生麩をあわせたもの。これもまた上品な甘さと旨さが印象的な逸品であった。
コース全てが丁寧に作られた、立派な和料理であった。
ただ、一つ星の柊家を凌駕するほどのものかと言えば、微妙なところであり、甲乙については人の好みによりけりとしか言いようがない。
要庵西富家は、しかし料理というよりも宿のキャラクターのほうが印象的ではあったな。京都にもこんな宿があったのか、という感じの。
主人も女将も、客をもてなすことに一所懸命という姿勢がよく伝わり、暑さまで感じてしまう。(暑苦しいとまでは言わない)
これは京都の他の宿で感じる洗練された、ある意味少々の冷たさをもつ客あしらいとはかなり異なるもので、田舎的、家族的とでも称すべきものであろう。
ま、その懸命さには、ちょっとした抜けとか、空回りとかがあり、どうしてもこの旅館は「緩めの旅館」と感じてしまった。
旅館の成熟度として、俵屋を社会人とすると、要庵は高校生くらいであろう。ただそれを未熟ととらえるのでなく、違う目でみれば、若々しいとか、伸びしろがあるとか肯定的にとらえることも可能であり、私もそちらのほうに考えたい。
数年後訪ねれば、どのように伸びていっているのか、楽しみにできる宿と思う。
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