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January 22, 2010

正義の味方登場…というわけですか

 私は小沢一郎氏という政治家が嫌いである。
 20年近く前日本という国が袋小路に入り行先が見えなくなったとき、小沢一郎はそれまでの慣習慣例を吹き飛ばして日本を「普通の国」にすると主張し、政界再編を先頭に立って行う、まさに「改革者」として登場した。
 私は小沢一郎に期待し、彼の改革をwatchしてきたわけだが、その期待はすべて裏切られた。

 小沢一郎の行っていたことは、ともかく票を得て、自分に権力を得ることという古典的政治劇であり、それは「目的を持たないマキャベリスト」というものが、いかに国民にとって迷惑な存在であることを立証しただけであった。
 こういう人物は、さっさと政治の舞台から消えてもらってほしいというのが私の実感であったが、…どうやらその日は思いのほか近いようである。
 今年になって、検察が小沢一郎をターゲットに全力攻撃を開始したからである。

 しかし、私は小沢一郎氏は大嫌いであるが、このようなことにより小沢一郎氏の政治生命が断たれることには断固反対する。

 マスコミの報じるところによると、小沢一郎氏一派の代議士、秘書を逮捕してきた理由は、秘書住宅の土地を購入する時の資金の記載ミスだそうである。そしてその資金が、賄賂の可能性があるからだそうだ。

 そうですか。
 記載ミスについては、事後修正すればいいだけの話である。修正も許さずに逮捕って、どんな警察国家ですか。
 賄賂の可能性については、当時野党暮らしの小沢氏に職務権限があるわけなく、立件できるわけもない。

 検察の狙いとしては、それを口実に資料をたっぷり仕入れて、そこで犯罪として起訴できる案件を見つけることであろう。

 我々の住む日本は法治国家であり、法に違反することは罰せられる。
 ただし、その法律は相当に広範であり、その結果曖昧であり、恣意的に運用すれば、日本人のほとんどが罪人になってしまうという法律だ。
 その法律の代表が「公職選挙法」と「道路交通法」であり、普通に生活している人がこれに関わってしまうと、誰もが法律に違反してしまう。
 一番分かりやすい例で、運転免許を持って車を運転している人で、道路交通法に違反しなかった人っているのでしょうか。

 日本においては法律は元々守れないことを原則に作られている。残念ながらこれは社会人になったら否応なく思い知らされる事実だ。
 ならばその法律を、一般人が守れるように修正すればいいといえば、そういうことは絶対に役人はしない。役人は法律を恣意的に運用することにより、自らの権益を維持するからだ。

 その法律を運用する役人の代表である検察は、だから自分たちの思い通りに法律を運用する。
 小沢一郎氏を政界から除去したいと決断したからには、彼らはそれに全力を使うであろう。その決断により、今のところ少なくとも小沢氏の弟子の国会議員は政治生命を断たれた。


 ところで、民主党は党を挙げて、検察の横暴を非難している。
 これについてマスコミは、政治家のような強者が司法を弾圧するのは問題がある、みたいなことを言っている。
 それは、とんでもない間違いだ。

 日本においては、検察が圧倒的に強者なのである。政治家は、検察に比べればはるかに弱者だ。現実に、逮捕された石川議員は、有罪であることも決まっていないのに、すでに政治生命は断たれている。
 そして、この事件で、小沢氏側が無罪になったところで、検察側はその責任を一切問われない。石川氏が抗議すれば、逮捕抑留された時間の損害賠償は払われるが、その金は検察官の私費でなく、国の、つまり我々の税金である。

 検察官、それに裁判官は、人を罪人呼ばわりし、そして人を罪人にするのが仕事である。しかし、その宣告が後で誤ちと分かったとき、彼らは何も責任を取らない。それは、そう法律で決まっているからである。
 ある被告人を死刑と決め、それが執行されたのち、完全に無罪と分かったなら、裁判官も検察官も、いくらなんでも責任を負わねばならないと一般人は思うが、法律では彼らに責任を求めることはできない。代わりに国がその責任を果たすことになる。なぜそういうことになっているかといえば、「検察官裁判官の仕事は人の生死に関わる重大な仕事だが、自分の仕事が間違ったことで罰を科せられるなら、誰も裁判官や検察官になってくれないから」だそうだ。
 ああそうですか。
 それなら検察官同様に人の生死に関わる職業として、医師とかパイロットとか航空管制官とかがあるわけだが、彼らのミスはあなた方は堂々と罪に処していますねえ。
 まさに彼らは特権階級である。

 このように何をやろうが法律に身分が守られている検察官は、「何でもあり」である。
 小沢氏一派が巨額の金を使って有能な弁護士を雇い、例え無罪となったところで、検察官達は誰も傷つかない。今回の戦略は失敗だった、新しい戦略で戦おうなんて反省会を開くのみである。

 日本で最強の権力を握っていると思われる小沢氏でも、検察を前にしては、不死身のスーパーマンを相手にしているようなもので勝てるわけもない。向こうは圧倒的強者なのである。

 今回小沢氏に向かって検察が戦いを仕掛けたのは、政治を良くしようとする「正義感」からではあろう。なんのかんの言っても、政治の闇を代表する人物が小沢氏であるのは間違いないから。
 しかしその正義感を発揮する材料として、土地取引を出してきたのはあまりに筋が悪い。検察の主張としては、土地の資金としての小沢氏の資産が、不正に得られたものであるとのことなのだろうが、…小沢氏って鳩山氏には負けるが、元々大資産家なんだから4億円くらい簡単に出せるであろう。企業の賄賂による不正蓄財と立証したいのかもしれないが、野党暮らしの小沢氏に賄賂は成立しない。狙いは別件にあるにせよ、やっぱり変だ。

 検察は、正義の味方気取りで小沢氏退治に出てきたわけだが、正義の味方なんて小学生の妄想の中にしか存在しないのである。

 日本の政治の闇とは、税金を地元に注ぎこみ、そこから票と資金を得て、党の人脈を育て、実力者となっていく、その過程にあるのだが、それを代表する小沢氏を葬りたいという検察の気持ちは分かる。しかし、その仕事は第一に選挙区の人達、次に民主党、それから国民に任せるべきものであり、検察が法律を恣意的に運用して個人の政治家を罪人にすることは、何ら政治を改善させない。それは今までの検察の政治家検挙の歴史が示すことである。

 民主党は、検察の横暴に対して、党を挙げての反撃を行おうとしている。
 このことについては私は、民主党を支持する。
 検察が正義の味方を気取るのは勝手だが、正義の味方は、実際には社会の敵であるに決まっているから。
 私たちはこのことを、痛いまでに、歴史から学んできた。
 もうこんなことはやめてほしいんだけど。

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Comments

文頭の数節以外は、激しく同意いたします。

Posted by: 輝ける黄昏を目指して | January 25, 2010 01:38 PM

今回の小沢氏一派の逮捕劇はどう考えても無理筋だとは思います。
今後がどうなるかはわかりませんが、とりあえず検察が捜査をしただけで、罪の有無とは関係なしに、政治家が失脚したり、自殺したりすることは、ぜったいにあってはならないことだと思います。

Posted by: 管理人 | January 25, 2010 07:53 PM

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