和食:俵屋(招月)
平成22年の元旦は俵屋旅館の招月の間で過ごすことにする。
大きなガラス窓から見える庭の樹々は紅葉の盛りである。1月になったというのに、なんたるサプライズ。枯木の枝だけが窓からのぞくよりは、よほどいい風景であり、これは幸運であった。
招月は2階にある部屋で、庭の樹々の葉が最も多い高さにあり、空中庭園といった感じの面白い浮遊感がある。
主部屋のほうには、招月専用の庭があり、椿が主役。椿は時期には少し早く、白赤二輪の花が咲いているのみであった。
部屋については、相変わらず完璧である。
室町時代に成立した日本建築の美学を直かに受け継ぎ、それに改善、改変、改良を重ね続け、「こうあるべき日本の空間美」というものを、現実のものとしてここに存在している。
いかなる苦労、いかなる努力を払えば、ここまでのものを具象化できるか。ただただ頭が下がる思いである。
お着きの菓子は名物の蕨餅。(ちなみに翌日は羊羹であった)
お茶はいつもの煎茶ではなく、正月ゆえに大福茶。京都の宿ならではもてなしです。
初詣をなぜか金閣寺、それから下鴨神社に行ったのち、宿に戻って夕食となる。
正月らしい料理ということで伊勢海老。ただ茹でたものではなく、身をほぐして野菜や椎茸と和えて、味付けしている。はなやかな味わい。
それにカラスミにムカゴの塩ゆで。俵屋自家製のカラスミはねっとりとしたなか、小さな粒々の食感も残っており、見事な出来である。
造りは河豚の薄造り。穂紫蘇を散らして、美しい絵皿のような料理となっている。
もう一皿は筍で、京都ではもう筍が出ているんだ。
蛤の真蒸は、ストレートに蛤の味を強く出しているもの。いつもの俵屋の出汁とはちょっと異なり、新鮮な印象を受けた。
寒鰤に下仁田葱の焼物。
こういうものは何よりも素材の良さがじかに伝わってくる。
俵屋の湯葉は、大豆の味が濃厚にして豊かに広がる絶品もの。出汁も上品であり、湯葉の旨さをより高めている。
オコゼでとった甘辛い出汁が、柔らかく煮られた聖護院大根にたっぷりと浸みて、別次元の旨さに昇華する、本日で一番すごいと思った一品。
白飯の前に、正月らしく赤飯が。
なにはともあれ、無事に平成22年を迎え、俵屋で元旦の夕食を食べられることは、めでたいことである。
正月だから、豪華,豪奢系の料理が出るかなとも思ったが、いつものごとき料理に少しばかり正月の演出を加えている、正統的・本道的の俵屋の料理であった。
素材の良さ、料理の技術の高さ、器の美しさ。京料理として、最高の水準に近きものであることを改めて認識した。
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