読書:寿司店のカラクリ 大久保一彦(著)
本の題名からは、「回転寿司屋はじつはとんでもないネタを使って鮨を安く仕上げているんだぞ」というふうな暴露風な記事が並んでいることが想像されるが、そういうことはなく、日本の寿司店が各自いかに努力して、良いネタを仕入れ仕込んで、美味い寿司を握っているかについて広範に調べて書いている、まっとうな本。
寿司店は、回転寿司店、大衆店、高級店、などいろいろに分類されるわけであるが、その店によって、何に重きを置くかによって違いが分かれる。安さが追及されるものもあれば、ネタの良さを追求するものもあり、仕込みの良さ、味の濃さ、面白さ、等々客層にあわせて店のスタイルがあり、さまざまな形態の寿司店が存在することになる。
それでもいかなる店でも大事なのは、「美味い寿司」を出すことであり、じっさい「美味い寿司」を出さねば、いかなる店でもすぐに潰れてしまうわけで、今まで生き残っている店はその美味い寿司を出すために、多大な努力を払っているのである。
例えば120円均一の寿司を出す「寿し常」という店は、漁業者から直接仕入れることにより魚の原価を抑え、かつ活きたまま現地から魚を運んでくるシステムを作り上げ、そのことにより多彩な寿司を出すことに成功した。
ある回転寿司屋では大きなネタを特徴としているが、これは冷凍解凍技術を発達させることにより、素材が安いときに大量に仕入れることが可能になったことから、ネタを大きくできたのであり、それで大きなネタを好む客層を獲得できた。
ある高級鮨店では、漁師に獲ったときの魚の締め方を指導してまでして、いい素材を得ることにこだわっている。
などなど、美味い寿司を出すべくあらゆる寿司店がおのおのの工夫をこらし、懸命な努力を払っている。
それらの努力により、日本の層の厚い寿司文化が築かれていることを知らせてくれる本である。
ところで、この本にはいろいろな寿司店が紹介されているわけだが、そのなかで佐伯の寿司店も紹介されている。
佐伯市は豊後水道に面しており、海産物が豊富に獲れることから、「世界一佐伯市寿司の街」と称して、寿司を市全体でアピールしている。
ふぐの臼杵、すっぽんの安心院、といった具合に食材をアピールしている土地は、その食材の良店が多いことがあり、それなら佐伯の寿司店には良店が多いかもと思い、寿司好きの私は佐伯市を訪れたことがある。(物見高い男なのです)
本でも紹介されているように、佐伯の数多き寿司店でも有名なのは、デカネタが名物の「錦寿司」と、細工寿司が名物の「寿司源」。デカネタは勘弁ということで、「寿司源」を訪れてみた。
その世界一佐伯の、寿司源の寿司。
真ん中のサーモンは、牡丹の花に摸している。その隣の太刀魚は切れ込みに鮪を入れて、指輪を模している。なかなか面白い趣向の寿司ではある。
食べた感じは、見ためそのままというところか。
おそらく佐伯市の数多き寿司店は、各寿司店でいろいろな趣向をこらして、独自の寿司を供しているものと思われる。世界一との看板もあることだし、他店も訪れてみたいとの気はあるが、結局どうでもよくなってしまい、以後佐伯市は訪れていないなあ。
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寿司店のカラクリ 大久保一彦(著)
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