映画:カールじいさんの空飛ぶ家
冒険家を夢見る内気な少年カールが、これも冒険に憧れる活発な少女エリーに出会い、やがて二人は恋に陥り結婚する。二人は仲良く楽しく、少しは悲しく、幸せな家庭生活を築いていく。しかし二人が好きだった冒険は、日々の忙しく、そして金のかかる生活のなかではなかなか実行できない。老齢になりようやく生活に余裕が出来て、エリーが行くことを夢見ていた冒険の地「パラダイスの滝」へ夫婦で飛行機で出かけようとしたとき、エリーは病に倒れ、そのまま亡くなってしまう。
オープニングはこの愛すべき冒険家(を夢見る)夫婦の物語を、セリフなしのモンタージュで語り、たいへんできがよい。ここだけでも、映画料金払う価値のあるほどの掌編である。
…ただ、これは私のまったくの雑感なのであるが、冒険家夫婦というのは本当に冒険が好きならば生活にいくら困窮しようが、冒険に出ていくものなんだよなあ。
それこそ日本には山野井泰史・妙子という世界最強の冒険家夫婦がいるが、彼らは奥多摩のさらに奥の僻地で安い家賃の家に住み、自分で畑を耕す自給自足の生活を行いながら、バイトでお金をため、そのお金で海外に出かけ、山岳会を驚愕させるような尖鋭的冒険的登山を行っている。山野井さんといえば、「天国に一番近い男」とか「最強のクライマー」とか称されているが、また「最強の貧乏人」であることでも有名だ。(自伝とか、山野井さんを書いた本でそういうことがいくでも載っている)
というわけで、そういう雑感が映画のこの部分をみているとき湧いてしまい、ちょっと集中できなかった。
さて、愛する妻を冒険の地に連れて行くことができなかったカールじいさんはそれを心から悔み、偏屈な老人として日々を過ごしている。やがて彼はその地に住むことを諦め、エリーの思い出のつまった家を、家ごと風船で飛ばし、かつてエリーとともに行くことを望んでいた、ギアナ高原のパラダイスの滝へと冒険の旅に出る。
彼にとってはじつは初めて経験する冒険の日々。彼はその冒険の日々で、人の心を思いやること、人のために行動することを学んでいく。一種の老人成長物語。
そして彼はその過程で亡き妻エリーの望んでいた冒険が何で、その冒険が彼女にとってどういうものであったかを知る。
以下ネタバレ
カールはエリーに冒険を連れて行くことが出来なかったことを一生の後悔としていたが、じつはそうでなかった。エリーにとってカールとの生活すべてが冒険であり、その冒険を心から楽しんでいた。彼女の冒険日記にはカールとの日々の写真が貼られ、最後に書かれた言葉は「冒険をありがとう」であった。
ピクサーのアニメCGの技術はとても高いものであり、アニメを観るだけでも映画を観る価値があるが、脚本もいつもと同様にいいものであった。
ピクサーという会社の総合力はたいしたものだと、またも思った次第。
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カールじいさんの空飛ぶ家 公式サイト
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