読書:身代わり 西澤保彦(著)
タック・タカチシリーズの新刊。
このシリーズの前作の「依存」が出たのが2000年だから、9年ぶりか。前作の内容って、もうほとんど忘れたぞ。
内容は、「見たことも会ったこともない者が、ある手法でたがいの身分がばれないように連絡をとりながら交換殺人を行う」というミステリ。
この連絡の方法、現代ではインターネットというものがあるので、めずらしくもなんともないのだが、物語の背景の時代は1990年なのでインターネットは使えない。その手法は、「どうしても人を殺したい」という情念を持つ人が人知れず集う場所が必要であり、…それからすると、たしかに1990年代にはここしかなかっただろうなあ、と納得してしまう。
それにしても現代は、「人を殺したい」とか「自殺したい」とか、そういう負の情報が容易に得られ、そこでの連絡から事件が現実に起こっているわけで、妙ちくりんな時代になってしまったなあと、本書を読んで、本に書いてもいない別のことに感心してしまった。
シリーズものなので、肝心なのは探偵役のタック・タカチの活躍ということになるのだが、べつだん彼らの妄想推理が爆発するようなシーンはなく、推理は淡々と進んで事件は解決し、あえてこのミステリをタック・タカチシリーズでやる理由もなさそう。
タック、タカチは、両者とも飛びぬけて明晰な頭脳を持ちながら、社会に溶け込むことのできないアウトローであり、そのひねくれたアウトローが、大学の仲間の手助けをかりて、社会と和解していく物語がこのシリーズの主筋なのであるが、今回の新刊を読むに、彼らはもう社会と和解をすませて、落ち着くところに落ち着いているみたい。
著者の西澤保彦からしてアウトローであるのは間違いなく、社会に確実に存在する悪意、憎悪をこれほどねちねちと現実的に書いてきた人はいないのだが(あ、宮部みゆきがいたか)、近頃の作風はずいぶんと柔らかなものになってきている。著者描くところのタック・タカチと同様に、著者もどこかで社会と和解していたんだろうなあと、その変遷に感慨を持ってしまう。
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身代わり 西澤保彦(著)
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