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November 15, 2009

旅館:無量塔 昭和の別荘

 毎年秋になると、無量塔では「昭和の別荘」の庭に植えられている紅葉が、ひときわ目立つ、鮮やかな深紅の色に染まるので、今回はその紅葉を目当てにこの部屋に泊まってみようと思った。

 しかし、本来なら無量塔周囲は今ごろが最も美しい紅色に染まっているはずなのに、先日の大雨と強風により、ここの紅葉は色褪せるかあるいは散ってしまい、黒岳同様に晩秋の装いとなってしまっていた。

【秋の無量塔】
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 無量塔本館の紅葉の残りぐあいはこんな感じ。もう一雨ふれば、葉は全部散ってしまい、初冬の閑散とした風景になるのであろう。

【昭和別荘】
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 昭和別荘の庭に植えられている紅葉は、時期さえよければ、樹全体が燃え上がるように、鮮やかな紅い色の紅葉がまとって、とてもきれいなんだけど、半分以上散ってしまっている。さびしい風景。でも、玄関前にはその紅葉の葉がいっぱい落ちていて、これはこれで味のある風景であった。

【リビング】
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 無量塔の旧館はいずれも、地方の古民家を移設して、独自の手を加えて旅館に改造したものである。それらは共通して、とんでもない広さとか高さとか、無茶な調度品の置き方とか、空間の無駄な使い方とか、個性の強いものばかりであり、「こんなところに住む者などいない」というような突き抜けた馬鹿馬鹿しさがあって、私はたいへん好きなのである。しかし、「昭和の別荘」は、めずらしくそのような遊びや破格はなく、「今まで人が住んで生活していた」と言われても納得しそうな、普通さが特徴となっている。
 まったく「昭和の別荘」は、その名前の通り、昭和のころの家を模したものであり、訪れた人は「おじいさんの家がこんなだった」との感想を持つ者も多いと思う。じっさい、私の祖父の家もこんな感じだったな。
 リビングはソファ、窓、暖炉の配置等は、まっとうで落ち着いたもの。壁にかけられた絵も、異様な抽象画ではなく、由布岳の絵というきわめて常識的なものだ。
 それゆえ、他の旧館で感じるような非日常感は弱いが、しかし、落ち着いた雰囲気からは、寛ぎやすいのはこちらかもしれない。

【和室】
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 広縁に、床の間、炬燵という、こちらもまっとうで正統的な和室。
 しかし、この和室は使い方が難しい。
 「吉」とか「藤」では、和室が食事処になるので、その空間が無駄になることはないが、「昭和の別荘」は厨房が遠いことから、食事は本館内の紫扉洞でとることになり、するとこの和室は食事には使えず、他の用途に使わねばならない。通常はこういう炬燵部屋はくつろぐための部屋なんだろうけど、ちゃんとしたリビングがある以上くつろぐにはたいていはそちらを使うだろうし、…では、この和室はなんに使うべきか?
 ま、普通に考えれば、多人数で泊まったときの、布団を敷くため用の部屋なんでしょうな。

【椅子】
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 ところで昔の家は、広縁にこういう風な洋物の椅子が置いていることが多かった。今はこういう幅の広い、広縁がある家のほうが珍しくなり、それゆえ椅子も置いていない。
 昭和の別荘で、これを見て懐かしく思った。
 今思えば、昔は広縁がリビングの変わりになっていたんだな。

【風呂】
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 昭和の別荘は、玄関から部屋に入ってすぐに「昭和」を感じることができるが、ここの風呂も入った瞬間に、「昭和」を感じることになる。
 わざと汚れている年期の入った小タイル、天井の白一色の漆喰塗り、微妙にゆがんだ楕円形の風呂、これらがいかにも「昭和の銭湯」という雰囲気を濃厚に漂わせている。「三丁目の夕日」とまではいかないまでも、妙に懐かしい気持ちをまずは感じながら、源泉かけ流しの、くせのない素直な温泉の湯につかっていると、なんとも平穏な気持が心を満たしてきて、ず~と風呂に入っていたいなあ、と、そう思ってしまいます。


 無量塔のような立派な部屋風呂がある宿は、いちいち外に出て大浴場に行かずとも、気兼ねなく容易にちゃんとした風呂に入られるのがよい。
 朝起きて、酔い明けのどんよりした頭を抱えながら、寒いなかでもうもうと湯気をあげる風呂場に入り、そして大きな湯槽で思いっきり身体を伸ばして、ゆったりと湯を楽しむ。無量塔での、極上の朝の楽しみ。
 そして、身体が湯で温まり満足したところで湯から上がり、浴衣を着て廊下に出る。しかし、湯布院の早朝は寒く、いきなり身体が冷える。寒い、寒いとつぶやきながら歩を進めると、すぐ炬燵の部屋がある。さっそく炬燵に入り、背を丸めて、広縁からの外の風景などを眺めていると、そのうち足から身体中までぽかぽか温まってくる。
 「ああ、日本の温泉宿っていいなあ」と、豊かな気分になってしまい、晩秋の無量塔を存分に楽しむことになる。

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