コミック:ガラスの仮面44巻 美内すずえ(著)
北島マヤの演劇の恐るべき才能を知った月影先生が放つ有名な名セリフ、「マヤ、恐ろしい子」。
この言葉を放ったシーンは、「ガラスの仮面」有数の名場面であり、web上あちこちで引用されており、自然に私も「ガラスの仮面」の書評を書くとなると、UPせざるを得なくなる。
やはりすごい迫力だ。でも、ひきつった顔で額に汗をたらして哄笑する月影先生の姿をみると、「恐ろしいのは月影先生、あなたです」とも言いたくなってしまうが、それはさておき「ガラスの仮面」の最新刊である第44巻。
「ガラスの仮面」は30年近く前に始まった連載漫画であり、30年ほど前この漫画を読みだしたとき、私は「こんなに面白い漫画があっていいものだろうか」と思ってしまったのだが、そのハイテンションな面白さが持続したまま連載が続いていたのに、10年近く前に突然に休載となり、残念に思っていた。
休載の理由については巷間伝わる話では、「美内みすずが宗教にはまってしまい、あっちの世界にいってしまった」ということになっていた。
それもあろうが、ほんとの理由は作中劇「紅天女」にあると思っていたし、今でもそう思っている。
「ガラスの仮面」の特徴は、作中に北島マヤや姫川亜弓演じるところの作中劇が入っているところである。その作中劇、それだけで一巻の別の作品にもなるようなよく出来たものばかりであり、そこにこれらの演劇を演じる主人公たちの成長がからんで、ガラスの仮面という作品をより奥行きの深いものとしていた。
その素晴らしい劇中劇のラスボス的存在が、かつて月影先生が演じたところの「紅天女」であり、当代一の最高の役者しか演じることができない至高の作品ということになっている。北島マヤも姫川亜弓も、これを演じたくて懸命に努力を続けてきた、そういう劇だ。
その「紅天女」であるが、ガラスの仮面では、今までの作中劇がよく出来たものであったため、当然「紅天女」はそれらをはるかに超えるレベルの劇であることが要求される。そういう劇を作者は果たして作ることができるのか? 普通に考えれば無理であり、それゆえ「紅天女」上演を前にして、ガラスの仮面が休載になってしまったのはやむをえないことと思っていた。そしてそのまま「未完の傑作」となるものと思っていた。
しかし、今更ながらの連載再開である。
これからの連載はラスボス「紅天女」がいかなる劇なのか、それをいかに主人公たちが舞台上で演じるのかが主筋となってくるのであり、肝心貫目の「紅天女」に魅力がなければ、今まで積み上げてきた「ガラスの仮面」の世界が全て崩れてしまう。
美内すずえさん、すごい覚悟で書いているのだろうなあ、とこちらも正坐して読まねばならないかのような真剣味を感じてしまいます。
今のところ、「紅天女」の造形に破綻はなく、「至高の劇」と称される片鱗は見せ始めているようである。このままうまく物語を盛り上げていけるかどうか、読者もハラハラして見守ることになろう。
…ただ、姫川亜弓のアクシデントはどう考えても余計だなあ。これくらいの目にあわないと、北島マヤのレベルには達せないとかいうことかもしれないが、素人からすれば演技の支障になるとしか思えない。
作者の嫌がらせ(?)に負けず、薄幸の少女姫川亜弓が幸せになれればいいのだが。
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ガラスの仮面44巻 美内すずえ(著)
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