宮崎県北で紅葉のきれいなところといえば、まずは祝子川上流の三里河原であろうけど、新聞の紅葉情報をみると、まだ3分程度のこと。それで今どこがみどころになっているかといえば、日之影町の日之影川上流の見立渓谷が紅葉の真っ盛りだという。それでは、そこを本日のサイクリングの目的地とする。日之影川は川沿いの道を登っていくと、傾山の尾根を貫く杉ヶ越に到達する。杉ヶ越は標高901mという高さなので、このルートはけっこう登り甲斐のある道だ。見立から杉ヶ越トンネルを超えて大分に抜け、そこから宇目を経由して延岡に戻るコースで走ってみよう。宇目から延岡にあいだに、これも紅葉の名所藤河内渓谷があるので、時間があればそこにも寄ってみることにし、いざ出発。
【上水流鮎やな】
国道218号線を五ヶ瀬川に沿って走るうち、五ヶ瀬川の秋の名物、鮎やなが見えてくる。
川を竹や木材で堰き止め、真ん中の竹の簾のところで、産卵のために下流に向かっている落ち鮎をつかまえる仕組み。
【星山ダム】
五ヶ瀬川上流にある星山ダム。ここを今は廃線となった高千穂線の高架が渡っていて、なんとも哀しい風情がある。(暗いけど、写真の奥に高架が写っている)
左手の岸壁上の道に、魚釣りをしている人がずらりと並んでいる。この人たちは何を狙っているかといえば、なんと鮎なのである。鮎って川で友釣りをして釣るものかと思っていたけど、ダム湖でも釣れるんだ。今の時期は群れて泳いでいるそうで、それを掛けバリで引っ掛けて釣りあげます。
【釣れた鮎】
ダム湖にいる鮎は、まだ落ちていってない鮎なので、流線形のすらりとした姿。
卵を持つようになると、魚道を通って川を下って行き、そして鮎やなにひっかかるわけ。
【青雲橋】
旧218号線を川沿いに進むうち、家や店が現れてくると日之影町である。
五ヶ瀬川に日之影川が合流するところで、見立方向を眺めると、そこにはとんでもなく大きなアーチ橋「青雲橋」がある。東洋一の高さを持つ巨大なアーチ橋であり、地方の小都市高千穂と延岡を結ぶ国道にしては明らかにオーバースペックな建築物。しかし218号線には、このレベルの橋がほかにいくつも架けられており、とんでもない金をかけてできた道路なのである。なお国道218号線を普通に走っていると、それらの橋の存在には気づきにくいが、川沿いの旧218号線を走ると、頭上にいくつもかかる壮大な橋々に度肝をぬかれたりします。橋だけで十分に観光資源になるな。
【石垣の村】
青雲橋のところで進行方向を90度変えて、日之影川に沿って進んでいく。途中に石造りの洋風な建築物があり、ここが「石垣の村」。観光名所なんだけど、本日は観光客は見かけず。
【民宿・白滝温泉】
祖母傾山系は火山活動期が古いため、温泉のほとんど出ないところであるが、その唯一の例外がこの白滝温泉。その温泉の出るところの渓谷沿いに民宿が一軒ある。
15年くらい前に傾山登山のついでに泊まったことがあり、やわらかな温泉の湯に加え、山の幸をふんだんに使った料理が印象的で、いい民宿であった。懐かしく思い、また訪れてみようかなと思ったが、この奥に「当分のあいだ休業いたします」と、休業のお知らせの看板があった。マジックの書き跡が新しいことから、まだ休業して日が浅いみたいだけど、なんとか再開してもらいたいものだ。こういう「秘湯系の温泉」って、九州じゃ貴重だからなあ。
【見立渓谷駐車場】
日之影川沿いの色づいた樹々や、周囲の紅葉に彩られた山を眺めながら自転車を進めていくうち、見立渓谷到着。紅葉の時期のわりにはあんまり観光客はいない。
ここまで延岡から60km。予定ではあと90km近く残っている。
【見立渓谷】
新聞では見立渓谷は紅葉の盛りということであったが、どう見ても5分程度である。今まで走ってきた風景でも、紅葉は山の上のほうがピークであり、まだこのくらいの標高には降りてきていない。
当初の予定とおり、紅葉探してまだまだ上へ登っていく。
【杉ヶ越への道(広くなったところ)】
見立渓谷を過ぎてしばらくすると道が狭くなり、路面の状態も悪くなって「山道」ふうになる。この山道は10%を超える坂であり、けっこうきつい。疲れが足にたまり、だんだんとペダルを回すのが嫌になってくるころ、ぽんと眺望が開けたのちは道が広くなり、そこからは5%程度の緩やかな坂になり、漕いでいて楽になる。そのままの感じで、道は杉ヶ越へと続いていく。
【杉ヶ越トンネル】
ようやく着いたぜ、杉ヶ越。標高は901m。出発点の延岡がほぼ海抜0mであるからして、純粋に900mは登ったわけだ。
ここは傾山への登山口であり、杉ヶ越から傾山山頂にいたるルートは、祖母傾山系の登山道のうち屈指のハードコースである。だからあんまり人気なく、登山日和というのに、たいして車は駐車していない。
【大分県へ】
傾山の尾根を貫く杉ヶ越トンネルは、そのまま宮崎・大分を貫いており、ここを越えれば大分県だ。
県境の写真を撮っていると、後ろから轟音を響かせて大型バイクが通り過ぎていく。今日は天気が良かったので、このルートをツーリングしている集団がいくつもいた。その集団、いずれも中年族御用達の大型バイクか単コロのバイクばかりで、…今の時代、若い人ってモーターバイク乗らないんだなあ。スズキの社長がバイクが売れないと嘆いていたけど、たしかにモーターバイク業界の未来は暗そう。
【峠の紅葉】
川沿いで、山々の紅葉が上のほうがきれいであったので、山の上まで来れば紅葉は見事だろうと予測していたが、ぴたりと当たる。
杉ヶ越を少し過ぎた展望所で見た、傾山東面の尾根の紅葉が、今日見た紅葉で一番美しかった。赤、黄、橙、紅、いくつもの鮮やかな色が山肌を錦のように染め、ひとときの秋の装いを存分に誇る、そんな風景が広がっていた。
(写真ではその美しさを伝えきれていないが、実物はほんとに素晴らしかった)
【木浦小学校前】
杉ヶ越から宇目町に向かっては一本道の下り。
せっかく苦労して稼いだ高度をただただはき出していく下り道というものの存在に、なにか理不尽なものを感じてしまうのは私だけであろうか。
下りきったところが名水の産地である木浦鉱山区。過去には栄えていた地区みたいで、立派な小学校があったが、今は廃校になっている雰囲気であった。
【ととろのバス停】
宇目町名物といえば私は「ととろのバス停」しか私は知らず、とりあえずそこによってみる。
地方の名もなき一バス停が、映画「となりのトトロ」のヒットとともに、全国から宮崎駿のアニメファンが訪れる名所となった。たまたま名前が「ととろ」であることから、このバス停にトトロや猫バスの看板を物好きな人が置いたところ、それを目当てにアニメファンが集まるようになったとのこと。これがディズニーのキャラクターなどではすぐにディズニーから撤去の警告が来るだろうけど、スタジオジブリはそのような野暮なことはしません。
それにこのバス停は、とても鄙びたところにあり、アニメ「となりのトトロ」に出てくるバス停とよく似た雰囲気をまとっており、映画のモデルといわれても納得してしまいそうだ。夜に雨のなかバスを待っていると、ほんとに猫バスがやってきそう。
だいたい、このバス亭、小川の上に丸太を渡してその上に作っているのであり、そのアバウトさも、トトロっぽくてよい。
【北川ダムと唄げんか大橋】
ととろを過ぎ、国道326号線に入ってから南下すると、特徴ある大きな橋が見えてくる。これが唄げんか大橋で、北川ダムにかかっている。この変な名前の由来は、地元の民謡からだそうだ。
【藤河内渓谷】
県境の桑原トンネルを超えてしばらくすると交差点があり、まっすぐ行けば延岡、西側は大崩山方面、東側は桑原川沿いの藤河内渓谷にいたる道となる。
時間の余裕があったので、紅葉目当てに藤河内渓谷への道を行く。藤河内渓谷までは9kmの道をひたすら登っていく。途中、花崗岩の巨大な岩壁があり、これは見事な光景。紅葉もいい塩梅である。
【藤河内ダム】
桑原川のような小さな川でもダムはあるのであり、川の小ささに比例して小さなダムだ。渓谷沿いの道に水圧管があったので発電ダムなんだろうけど、どれほどの発電量なんだろう。あんまり役に立ってなさそうだけど。
【藤河内渓谷キャンプ場】
【藤河内渓谷】
そうこうしているうちに藤河内渓谷キャンプ場に着。
藤河内渓谷はまだ紅葉には早く、3分から5分といったところ。
本日は紅葉よりも、迫力ある渓谷の姿に感心した。
ここからは元来た道を戻り、あとは日の暮れる前に延岡に帰るだけ。
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本日の走行距離:146.2km