連休の後半は仕事の予定であったが、それがなくなり、いきなりぽっかりと日程が空いてしまった。ひさしぶりに温泉にでも行って、何もせずにのんびりした日を過ごそうかと思い、宿をネットで探してみると、さすが大型連休、一休コムもJTBも温泉地の宿はどこも満室である。楽天トラベルを調べると、武雄温泉のホテルが一軒予約可となっている。この繁忙期に部屋が空いているとはよほど人気のない宿なんだなあと思いつつ、空いてるだけでラッキーなので予約をいれた。
佐賀県では隣の嬉野温泉をときどき訪れたことがあるけど、武雄には縁がなく、今までは通り過ぎるのみであった。歴史も古く、また名湯との評判ある温泉なので、どちらにせよ一度は行きたかったのでこれもよい機会であろう。
【温泉街・桜山】

駅からおりて温泉街の宿へと向かう。宿が集っている地に近づくと、妙な形をした小山が姿を現した。山頂に仏像のような岩を何本も並べた面白い形態。武雄温泉のランドマークともなる特徴ある姿である。これは登ってみなければと、宿でのんびりする予定を変更して、写真にも写っている本日の宿「春慶屋」に荷物を預けたのち登ってみた。途中まではやや荒れた石段が続いているが、やがて山道、そして岩場となる。
【山頂の岩群】

山頂の岩群を望む。
簡単な岩場を超えて、この岩の鞍部に到る。鞍部からは武雄の町の見晴らしがよく、また風通しもよくて、くつろぐのにいい場所である。紅葉の時期などは行楽者がけっこういるのでは。
【岩からの眺め】

鞍部からは左手の岩が本格的な岩となっており、クラックが走っているので、靴を岩の割れ目にねじ込みながら登れば、てっぺんまでは行けそうだ。(でも、下りは支点とロープがいりそう)
行けるとこまで登ってみようかなとも思ったが、本日は山歩きをする予定がまったくなかったので、ベルルッティ・ウルフを履いてきてしまった。「絨毯の上を歩くための靴」とされているベルルッティの靴のなかでは、例外的にウルフはアウトドアでも使ってもよい靴なのだが、さすがに岩に靴をねじこむような使い方は無理があるだろう。そんなことをすると、マダム・オルガが泣きそうだ。というか、怒る。
【こんな靴】

だいたいデニムにベルルッティという格好で山に登るのが反則か。
鞍部での右手の岩は険しくはあるが、彫って作ったような人工的スタンスがあり、なんとか普通に登れそうなのでこちらを登る。しかしウルフは靴底が特殊な形態をしており、非常にグリップが悪く、靴底が岩から滑りがちで、登っていて少々恐怖を覚えた。ウルフで岩に登るのはあぶないのでやめておきましょうと、当り前の教訓をブログに書いておく。
ちなみに、ベルルッティのサイトでのウルフの写真。
【右手の岩に登ってからの眺め】

高度感ある町の眺めが鞍部よりもさらに素晴らしい。
この岩の東側はすぱっと切れ落ちており、落ちるとまず命はないので、注意深く写真を撮ってから慎重におりる。
【桜山神社への小径】

山頂からは桜山神社へ向かう小さな道がある。朽ち果てた地蔵がところどこにある、苔むした道である。廃道的雰囲気のある、なかなかに風情のある道であった。
【武雄温泉】

道を下りきると桜山神社の鳥居があり、そのすぐ近くに武雄温泉元湯がある。
ここへは夜に入ったが、熱い湯と普通のを入れている浴槽があった。熱い方は原泉をそのままの温度で流しているそうだ。武雄温泉の泉質は柔らかなので、熱すぎるとその魅力が減じるように思われ、ぬるめた湯の方が好みであった。
【丸山・駅前】

【丸山展望台】

武雄は小高い丘の多い地であって、駅の前にもこういう丘がある。
せっかくなので登ってみたら展望台があった。しかし、ここからの眺めはよくなく、登る価値はないなあ。
【御船山】

駅から10分ほど歩くと武雄図書館にと着く。ここには歴史資料館があり、武雄の歴史をくわしく知ることが出来る。幕末、肥前藩は最新鋭の武装兵団を造り上げたのだが、その原動力は武雄藩にあったのだ。初めて知ったよ。
図書館の奥には武雄神社があり、さらにその奥には船の形をした御船山が聳えている。桜山同様に特徴ある形をした山であり、武雄は面白い山に恵まれた地のようだ。
【武雄の大楠】

武雄神社の裏に、県指定天然記念物の大楠がある。樹齢3000年。中は朽ちて大きな洞となっており、その巨大な根の造形とあいまって、神秘的で威厳ある姿だ。これはぜひとも訪れて見る価値あり。
【宿の露天風呂】

肝心の温泉は、まずは宿の風呂で。
衛生のための塩素のにおいが少々気になったが、それでも、弱アルカリ性の湯は、ぬるぬるすべすべで、身体をじんわりと柔らかにつつみこみ、たいへん気持ちよい。風呂からの眺めも上々であり、ゆったりと過ごすことのできる風呂です。
【夕食】

夕食は、見た目豪華な、いわゆる「温泉旅館の料理」。
卓の上には、造り盛り合わせ、寿司、佐賀牛(→コンロで焼く)、活きアワビ(→コンロで焼く)が並び、この後、しんじょの吸い物、天ぷら盛り合わせ、茶碗蒸しがいっぺんに運ばれて来る。見ているだけで、腹いっぱいになりそうな量。
近頃は、料理にみょうに凝った旅館にばかり利用していたので、こういう料理もなんだか新鮮に思えるなあ。
食べてみると、素材はけっこうよいものを使っており、量とあわせて、コストパファーマンスは良い旅館といえよう。
連休中でも空室のある旅館ということで、少々の不安を感じていたのだが、部屋・風呂・サービス・料理とも、標準以上のレベルはあり、きわめてまっとうな旅館であった。
宿に戻ってからは、宿の大風呂に何度も入ったり、武雄温泉元湯に出かけたりと、最初の目的である「温泉三昧」の時間を過ごし、武雄の湯を満喫して翌日は帰る。
【武雄温泉駅】

武雄温泉駅は、長崎新幹線の着工により駅の改築工事の真っ最中であった。
地元の反対顧みず、佐賀県・長崎県の両知事により強引にスタートされた事業であるが、無駄な公共事業撲滅を図っている現与党への政権交代を迎えたのち、さて、このまま無事に工事は完遂できるのであろうか?