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August 26, 2009

読書:自治体クライシス 伯野卓彦 著 

 最近自治体が再建団体に指定される危機に陥っているという記事をよく見るけど、その危機の原因は2007年6月に実行された「自治体財政健全化法」にある。
 地方自治体は今までは自治体が経営する病院や、第3セクターの赤字や借金を会計には載せなくてよかったのだが、それが法律実施後より会計に計上しなければならないことになり、今まで隠していた借金がどっと明るみに出てきてしまった。借金の比率の高い自治体は、民間で破産にあたる再建団体への指定がなされて、夕張市のような悲惨な状況に陥ってしまう。
 法律実施後より、借金まみれの自治体がたくさん出てきて、どの自治体も再建団体指定を逃れるべく必死の努力をしている。

 本書では、いかにして自治体が借金まみれになってしまったかをレポートしている。

 ここでは、財政破綻を来たしている自治体がいくつも紹介されており、最も多くの頁を費やして書かれているのが、青森県の大鰐町。スキー場しか観光名所のない寒村が、バブル時代の波にあおられ、巨大で豪華なレジャー施設、宿泊施設を建て、バブル崩壊とともにそれらの施設のほとんどが廃墟となり、残ったのは50年かけても払い終えそうにない膨大なる借金のみという惨状に見舞われる。町民にとって悪夢以外のなにものでもない物語は、じつは当時の日本中あらゆるところで起きていたことが、本書で書かれている。

 大鰐温泉スキー場、私は6年ほど前に一度行ったことがあるけど、コースの変化に富んでいて、しかも人が少なくて滑りやすいいいスキー場だと思った。いいスキー場ではあるが、交通の便が悪いので、2度行く気は起きず、その後訪れたことはない。九州在住の普通のスキー愛好者は、飛行機使うなら北海道か長野に行くに決まっている。あの位置では、全国から年間50万人集めるという計画は、白日夢にしか思えない。もっともバブルの時期は、そんな計画でどんどん巨大テーマパークが建てられた異常な時代であったのだ。

 バブル時代は、みなが王侯貴族のような生活が出来るであろうと本気で思い、そしてそれを実行してしまった時代であった。今はバブルがはじけ、人は反省をし、身のたけにあった生活をするように本道に帰ろうとしている時代とはなったけど、反省したからといって、作ってしまった借金が消えるわけもなく、あの時代の負の遺産に今も多くの自治体が苦しめられている。

 とはいえ、バブル時代の建築物については精算がそれなりには終わり、各自治体は爪の火を灯すような倹約生活をしながら借金を返す日々を送ることで、結末はついている。  しかしながら、借金を生み出す大物が現在進行中でまだ残っている。
 著者が最後の章で示しているのが、自治体病院の赤字の話だ。自治体病院の多くは赤字であり、それが自治体の財政を苦しめている。

 住民の健康保全は自治体の大事な仕事なので、自治体は公的病院を所有していることが多い。ところで、現在の医療制度では、救急・産科・小児科という分野は必ず赤字になる。しかし儲からない分野だからといって、それを住民の健康を守るためには、公的病院はそれらを放棄することはできず、結果、公的病院は必然的に赤字になり、病院維持のため自治体はそれに補助金をつぎこむ。それが苦しい自治体の財政をさらに苦しめ、町がつぶれるか、病院をつぶすかのところに追い詰められていることが多い。

 病院がいまは自治体にとって、お荷物であり、金を吸い取る怪物になってしまっている。

 霞ヶ関の考えでは、人が不相応なものを望み、つくり、そして失敗したバブルというもので、最後に残ったバブルが公的病院というわけらしい。「いつでも診てくれて、現代の標準レベルの専門的医療がどこでも受けられる」と思っていた病院は、じつは貧乏自治体の住民にとっては、贅沢きわまりない存在であって、それこそバブルそのものであり、もはやそんなものを持てる力を日本の自治体はどこも有していない、と中央政府は結論つけている。

 宮崎でも病院崩壊の記事が毎日のように新聞に載っているけれど、バブルの終焉ということで仕方のないことみたいだ。バブル時代のあの遊興がもうないように、病院が高度に機能していた時代も過去のものになろうとしている。
 本書を読むと、これからは、日本に住むにあたり、私たちは身のたけにあった医療を受け入れねばならない時代となったことがよく理解できる。

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自治体クライシス 伯野卓彦 著 講談社

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