無量塔:「汲」
無量塔は、部屋が魅力的な宿であり、部屋には相当に力を入れている。
今回は新館の「汲」に泊まったので、そこを紹介してみよう。
床の間みたいなものがあるから、こちらが上座方向。
畳敷きのまんなかの半畳は、食事時には持ち上がり、掘りごたつ風になる仕掛けだ。
無量塔の新館は、庭もよくできている。
ガラス窓は天井まで届く大きさであり、庭と部屋が一体化した空間をつくっている。
無量塔には新館が四棟あり、二棟ずつセットで建てられている。「相」「袍」は一戸建ての別荘的雰囲気であり、「暁」「汲」は高級マンション的雰囲気を持っている。
新館、とくに「暁」「汲」の部屋は、ほぼ完璧である。部屋の空間の使い方、屋外の庭と部屋との調和、家具の設置、いずれも見事。
趣味がすごく良い、都会的センスの持ち主が、金に糸目をつけずに田舎にセカンドハウスを建てたなら、こういうエレガントな建物が出来るのだろうなあ、と思ってしまう。でも、そういう意味で、こういう部屋は「想定の範囲内」であり、良さに感心はするが、驚きはない。
ある意味、新館の部屋はオーナーの妥協のようにも感じてしまう。
無量塔の旧館(特に「吉」とか「明治」)は、オーナーの個人的趣味で突っ走ってしまった、異形の建物であり、移築した古民家に手を入れて、無駄にまで広大な空間を持つ部屋をつくり、そこにペルシャ絨毯、李朝の陶器、日本の家具、北欧のソファ、ヨーロッパの巨大な抽象画…などを、無秩序(というわけでもないのだろうが)につめこみ、全体として「無量塔ワールド」としか言いようのない、不安定でいながら妙に調和のある空間が造形されていた。この空間は、ゴヤの絵に描かれている空間のように、濃厚な密度を感じる空間であり、はまる人には、はまるのである。(はまらない人は、落ち着かない部屋だなあとか思うであろう)
その、はまる人にははまる旧館の部屋と比べ、新館の部屋は誰でもはまる、スタンダード的な、誉めるしかない、素晴らしい部屋である。まあ、初めて泊まる人には、こちらの部屋を勧めるほうがいいでしょう。ただ、これが無量塔らしい部屋かといえば、ちょっと違うという気がしないでもない。というか、する。
無量塔には大浴場はなく、各部屋にそれぞれの風呂があるのみ。
でもこの風呂だけで、大浴場はなくとも満足できる、広々とした、源泉かけ流しの絶品の風呂。
新館の風呂は、天井はガラス、外とは大きなガラス戸で仕切られたのみの、半露天風な開放的なものである。5~6年前くらいから露天風呂付部屋を売りにする高級旅館が、やたらと増えてきたけど、その流れに乗ったものかな?
無量塔の本館は、旧館も新館も2棟ずつセットになっており、それぞれ似たコンセプトのつくりとなっている。
ついでなので、以前泊まった「暁」も紹介。
壁は石壁になっていて、すこしばかり野外的雰囲気を感じます。
畳の部は、ここもエレベーター方式。
無量塔の部屋風呂は、セットの棟では、必ず一方が長方形で、一方が円形。
それで、「汲」が長方形なので、こちらは円形。
円形の風呂って、あんまりくつろげない気がするのは私だけであろうか。
無量塔の本館は、裏に雑木林があり、鳥がいっぱいいます。
朝、夜明けとともに、鳥たちがいっせいに目覚め、元気いっぱいに鳴き出します。カッコウにウグイスにヤマバトに…あとはよく知らない鳥たちが、日の出を迎え、我も我もという感じで、林のどこかしこから鳴き声を響かせ、部屋へと音が届きます。
この天然目覚まし時計のような騒音(?)を、宿酔気味のぼーとした頭で聞きながら目を覚ますと、「…ああ、無量塔に泊まっているんだなあ」と、まずは思います。
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