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June 09, 2009

読書:少年少女飛行倶楽部 加納朋子 著

 近頃は1~2年に一冊発刊程度の寡作ペースとなっているミステリ作家加納朋子氏の新刊。
 「飛行倶楽部」なる、ピーター・パンのごとく自力で空を飛ぶことを唯一の目標とした、中学校の文化クラブに入部するハメになった快活な女の子が、そこでいろいろな変人たちに出会い、種々の妙な出来事に遭遇する青春物語。

 まず「飛行倶楽部」部長の変人ぶりがよい。
 部員の数が足らず廃部の危機にあるクラブに部員を集めるため、高層マンションから飛び降りた過去があり、自殺未遂の噂のある生徒の家を訪ねて、応対に出た母親に「あなたの娘さんのような人こそわがクラブにふさわしい」と入部の勧誘を行う。その突き抜けた傍若無人さ、いいですねえ。

 飛ぶことに実際には興味を持たない、部長以外の部員は、それぞれに変であり、それぞれが起こす妙なエピソードが語られながら物語が進むうち、いつのまにか部員たちは「自力で空を飛ぶ」ことに協力しあい、やがて彼らは空を飛ぶ。飛んだついでに、ささやかな冒険も達成して、みなが満足感を味わううち物語は幕となる。

 爽やかで、でもどこか哀しい、青春の一コマを切り取った物語。
 読み終わったあとの、清々しさは、著者特有のものだな。

 加納朋子氏の作品には、いい人しか出てこない。
 悪く見える人も、じつはそれなりに理由があって悪く見えているだけで、その人間の芯は善良である。デビュー作以来、一貫してそのスタイルは変わらない。たぶん、著者がとてもいい人なんだろう、そう思う。

 ところで、この作品での「知的能力が高く美しいけど、病弱な姉。その姉を一所懸命に支える弟。それを見守る、狂言回し役の活発な少女」という配役設定は、処女作「ななつのこ」とおんなじである。あのとき語れなかった、あるいは語り足りなかったものを、この作で表現したかったのだろうか。もしそうなら、成功していると思う。病弱な姉が常にまとう、かすかな死のにおい。その死のにおいが、若者たちの生をかえって輝かせているわけだが、この微妙な描写は、著者の熟練した腕で初めて可能になったものだから。


少年少女飛行倶楽部  文芸春秋 刊

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