熊本駅前風景
ひさしぶりに熊本に来て、熊本駅近くのホテルに泊まり、駅前に広がる風景のあまりの変化に驚いてしまった。
九州JRの駅は、たいていは市街地を離れた不便なところにあることが多く、駅前といえど閑散としているのが常であった。それゆえ、八代市とか大牟田市とか、九州においてはそれなりに人口が多い部類に入る都市の駅も、辺鄙なところにあるゆえ当然人の出入りは少なく、新しく九州新幹線をその都市に通すさい、こんな寂れた駅に、新幹線の駅を作っては乗車客を確保できないとばかり、九州JRはわざわざ別のところに新駅を作ってしまっている。
熊本市においても、繁華街に近い通町筋(熊本市の紹介の写真でよく載っている、熊本城を背景に路面電車が走っているところ)あたりに、新駅を作れば、さぞかし便利な駅となったはずだが、なぜか熊本市(あるいはJR)は、それを選択せず、現地の駅および周辺の地を思いっきり再開発することにより、新幹線を停めるにふさわしい駅へとつくりなおしている。
熊本駅、この駅は県庁所在地の名前を持つ駅のくせに、その寂れ方は尋常ではなかった。
駅そのもののしょぼさはともかくとして、駅周辺には、戦後からまったく変化していないような建物が駅のまん前に立ち並び、この駅に降りた人は、まるで映画「3丁目の夕日」の時代にタイムスリップしたような感覚を覚えるのであった。不詳、昭和50年代末に初めて熊本駅に降りた私も、熊本とはなんちゅう田舎じゃ~と唖然としたことを覚えている。
駅および駅周辺をどうにかしようと思わぬ人がいないはずもなく、その後ちょこちょこと、改造計画は行われていたのだが、熊本の開発は、駅からはるか離れた東方面が中心であったので、そちらに比べると、まことに熊本駅周囲は遅々としたペースでしか開発は進まなかった。そして、そのまま遅々たる開発が続くと私は思っていたのだが、さすがに新幹線が来るとなると、尻に火がついた状況となり、開発のペースは突如加速した。
ホテルから見下ろす、駅前風景。
ごちゃごちゃと存在していた、安く泊まれる年季のいったホテル、いつ行っても客のいない24時間営業の定食屋、なぜここにあるかよく分からん肥後象嵌の店、妙な古道具屋、くるくる店の名が変わる飲食店(最後は長浜ラーメン屋だったか)、ものすごく使いにくい駐車場、そういったものが、いっさい消え去ってしまい、更地になろうとしている。
このあとなにができるんでしょう。 ホテル? デパート?
あの場末感が濃厚に漂っていた熊本駅前の風景は、好きでもなかったが、嫌いでもなかった。
それが消え去りし今は、「昭和の時代」がまた失われてしまったのだなあとの感慨を持たざるをえない。そしてベタながら、「昭和は遠くなりにけり」と、つぶやかせてもらおう。
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