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May 18, 2009

映画:ワルキューレ

 トム・クルーズ演ずるところの傷痍軍人、隻眼隻腕の陸軍大佐がリーダーとなって、戦争末期に企てたヒットラー暗殺計画の実話の映画化である。
 この手のものは、ドゴール大統領暗殺計画を描いた「ジャッカルの日」なんかが同様であったのだが、失敗したと分かっている暗殺計画なので、成功するかどうかのドキドキ感を映画をみているときは感じることができず、「どうして失敗したのか?」という理由を各場面で考える必要があり、ミステリでいうところの叙述形式で映画をみることになる。

 その暗殺計画。
 ヒットラーの暗殺を企てた集団は、国防軍幹部、有力政治家、高級官僚などが数多くメンバーとなっており、実力も頭脳もあったはずだが、この集団、口は出すけど手は出さない、やる気はあれど実行は躊躇するという、優柔不断な者の集まりであり、計画遂行力に欠けている。その欠点を補うために、統率力・実行力のあるトム・クルーズ大佐が指揮官に選ばれ、そのリーダーシップのもと、ヒットラー暗殺およびクーデター計画である「ワルキューレ作戦」が始動する。
 なんのかんのいっても、長い時間をかけて練り上げられた作戦であり、武装兵力である予備兵も傘下に収めていたため、最初のうちは計画書とおりに作戦は進み、いったんは政権掌握に成功するのであるが、いろいろと詰めが甘くて、最終的にはみじめな失敗に終わってしまう。

 …という物語が淡々と描かれております。

 誰もがそこそこに有能であり、そこそこに無能であり、そういう普通の人たちが、歴史の歯車のなかで、己の演じるべき役割を果たし、去っていく、それを描いた叙事史としかいいようがない映画だな。
 もう少し、実行役の大佐を英雄的に表現するとか、敵役のヒットラーを怪物的に描くとかすれば、映画としては面白くなった気がしないでもないが、現実がそういうものであったから仕方ないのではあろう。

 ノンフィクション映画として映像的に優れており、歴史好きの者からすれば、十分に楽しめた映画ではあったが。

 
 ワルキューレ 公式サイト


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