サイクリング:祝子川~大崩山登山口
延岡から自転車で容易(?)に行ける大きな山としては、まず大崩山があげられる。山頂まで行くのはもちろん無理だが、標高600メートルくらいの高さにある登山口までは舗装道が続いており、ゆったりと登っていく坂道が楽しめそうなルートである。先週は海沿いの道を行ったので、今回は山方面を走りたい。
しかし、本日は台風なみの威力を持つ二つ玉低気圧が日本列島を縦断し、その気圧相応のやはり台風なみの暴風が吹き荒れ、とても外出する気分になれない。しかし、午後になって風が弱まってきたので、午後4時を過ぎて出かけることにする。
最初のころは祝子川はゆったりとした流れの川である。道はずっと川沿いを走ることになる。
行程の半分くらいで、このような案山子の群れが出迎えてくれる。周囲に田圃があるというわけではなく、いまいち存在意義が不明な案山子だ。
祝子川も中流を過ぎると、渓流のような雰囲気になってくる。ボルダリングに適した岩がゴロゴロと転がっていて、もう少し交通の便のいい地であれば、ボルダー人気の好スポットになれたかもしれない。
上流になるにつれ、岩のサイズも大きくなってくるが、突然にダムが現れ、ダム以後はダム湖周辺の平坦な道を行くことになる。1.5kmほど平坦な道を行き、ダムから離れると、廃校になった小中学校の建物が、廃校の記念の碑とともにあり、少々の物悲しさを感じさせる。とはいえ、この人家もほとんどないようなところに、5年前まで学校が存続していたことのほうが不思議にも思える。かつては林業などが盛んだったのだろうか?
学校の跡地を過ぎると、また坂が始まり、しばらくして大崩山登山者のための茶屋が現れる。オデンのいい匂いをかぎながら、さらに坂を登っていくと、「美人の湯」と名付けられた温泉施設に到着。
大崩山は水場の不便なところで、前泊して登る人は、以前はここよりはるか上の渓流沿いの大崩山荘まで登って泊っていたけど、今はこの温泉施設ができたので、ここで車中泊するのが主流になっているようだ。
大崩山登山口はまだまだ上にあるので、自転車を漕いで登っていく。山のなかの道なので、日暮れ近い時間にはそうとうに暗くなっている。登山口に着いたころは、ライトを点灯する必要があった。
山道を抜けると、山なかは、薄暮の風景。
ぽつんぽつんと立つ民宿や人家に明かりが灯って、風情ある風景となっている。
山は日暮れも早い。下るうちに本格的に暗くなってしまった。そして当たり前のことながら、暗いと道がよく見えない。ライトつけていても、そんなによくは見えない。そして、こういう山間の道は、崖から石がよく転がってきて落ちているので、それにタイヤの前輪を当てることが多くなり、衝撃がそのたびガツンと自転車に伝わる。そして、数度目の衝撃で、危惧していたパンクが生じてしまった。
自転車は移動のデバイスとしては抜群のものであるが、パンクしてしまうと、一挙にただの金属とゴムの塊になってしまうんだよなあ。
とりあえずは、パンクを修理して、移動のデバイスに復活させないといけないのだが、…さて困った。パンクの道具は持ってきてはいるものの、明りがない。今ある明りは自転車のライトしかないのだが、パンク修理にはけっこうなスペースがいるので、それを照らすには光量が足りない。いや慣れている人は、その程度の明かりでも簡単に治せるだろうけど、私は自慢じゃないが、パンク修理は中学生のときにやったきり、30年以上やったことがないので、その程度の明りで修理を遂行する自信などない。
仕方なく、街灯なり自販機なりの、しっかりした明りのあるところまで自転車を押して歩くことにする。しかし、とんでもないところでパンクしてしまったなあ。祝子ダムを2kmくらい過ぎたところでパンクしたわけだが、ここから10knくらいは人家がなかった記憶がある。下りなので、押して歩くのは楽だけど、真っ暗な道をただただ押していくのはまったく面白くない。
面白くない、面白くない、と念仏のように唱えながら自転車を押すうち、やはり記憶通り10kmくらい歩いたところで、ようやく灯りが見えてきた。山の中の灯りにふさわしく、いまどき珍しい白熱灯であった。
山の中で突然に電灯を見つけたときの感銘を、梶井基次郎は名短編「闇の絵巻」で「バーンとシンバルを鳴らしたような」と表現しているが、私にはそのような詩的興奮は湧かず、やれやれようやく到着かよ、と極めて即物的感想をもったのみ。
クロスバイクのパンク修理は、本を読めば(1)タイヤを外す (2)チューブをタイヤから引き出す (3)予備のチューブをタイヤに押し込む (4)チューブに空気を入れる の4段階で行う。さらに、自転車、タイヤの性状により、修理のパターンは変わってくることがあるので、自転車を購入したときは一回は練習をしなければならないとも書いていて、それはもっともだと思った。思いはしたが、本で読むと修理は簡単そうだったので、ぶっつけ本番でもよかろうと思い、パンク修理セットと交換用チューブを通販で買っただけで満足し、そのままにしていた。
さて修理だ。まずは電灯の明かりのもと、自転車からタイヤを外し、チューブを抜きだす。そして予備チューブを入れて、タイヤをセット。うん、やっぱり簡単だな。あとは空気を入れるのみ。
…しかし、ここでトラブル発生。予備チューブは、バルブの長さが短く、空気入れのアダプターがうまくセットできない。
【左が予備チューブ 右が元のチューブ】
これは困った。タイヤにチューブがうまくセットできても、空気が入らなければただのゴムである。ただのゴムでは自転車は走らない。それでは、ここからまた家まで15km歩くことになる。それは勘弁してほしい。
バルブの長さを変えるために、根性でバルブを引き上げ、ナットできつく固定すると、なんとかアダプターの底にバルブの先が届き、空気が入っていった。
前輪を装着して、やっと修理完了。30分の悪戦苦闘であった。
ちなみにここは人家の前であって、いきなり家の前の電灯に止まり、ガチャガチャ作業を始めた男に気付いたら、挙動不審者と怪しむのではと思い、一言挨拶しようかとも考えたが、でも見たなら、自転車を修理中だというのは一目瞭然だろうから、気にせずに修理を続けることにした。
修理を終え、自転車に乗って、道を進んでいく。乗って漕ぐことのできる自転車の、なんと素晴らしきことか。
今回の教訓
(1) 夜にサイクリングをすることが予想されるときは、アクシデントに備えて、ヘッドランプを携帯しよう。
(2) パンク修理は、やはり予備練習が必要です。
帰宅して、空気入りの不十分な前輪に、足踏み式の空気入れを使い、規定の6.5気圧まで空気を入れておいた。すると10分ほどしてバーンという爆発音が。なんと、空気圧に耐えられずにバーストしてしまっていた。後ろのタイヤも同様に調整しておいたが、なにも起きていないのにいい。
通販のチューブ、ぜんぜん駄目じゃん。
おまけの教訓
(3)自転車チューブは純正品を買いましょう。
本日の走行距離:72km (うち歩行距離約10km)