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March 2009の記事

March 29, 2009

3月の俵屋

 京都の宿は俵屋にて。
 京都の街なかは花をつけた桜が乏しく、まだ華やぎの季節ではないが、俵屋に入ると玄関奥の坪庭にはこのような爛漫たる桜の花が生けられており、きれいである。このさらに奥には3月らしくお雛様が飾られていたが、うまく写っていない。

【坪庭風景】
Tawaraya_cherry

 俵屋の内部は、複雑にはりめぐらされた廊下の果に部屋が一つずつあるという、アリの巣のようなつくりになっており、いまだに全体像がどうなっているのか私は把握できていない。把握はできていないものの、仲居さんについていけば部屋には無事たどりつける。

 俵屋の部屋は、いつ訪れてもその完成度の高さに感心してしまう。
 限られた狭い空間を、いかに隙なく構築し、独自の世界を作り上げるかという行為に日本人は熱中してきたのだが、俵屋の部屋はその達成点の典型といえる。調度品、障子、天上、床柱、室礼、椅子、すべてがここしかないというところにはまり、見事な調和をもって、完成された空間をかたちつくっている。
 そして、このような完璧な部屋では、緊張感が先立ってしまいそうに思えるが、そうではない。徹底した秩序は、かえって安らぎとくつろぎを与えてくれる。ようは、日本人の心の琴線にダイレクトに触れる、日本人好みの部屋なのだ。

 俵屋の部屋って、よく雑誌で写真つきで紹介されているけれど、写真はどうしても部分しか写せないので、俵屋の部屋の一面しか伝えきれていない。俵屋の部屋ばかりは、全体、総合として経験しないと、その魅力は分からないと思う。
 というわけで部屋の写真は、なし。かわりに庭の写真でも。

【俵屋「寿」の庭】
Tawaraya_garden

 緑が美しいけど、…やっぱり桜は咲いていない。というか桜そのものがない。
 庭木として、桜は難しいだろうけど、一本くらい植えていてほしかった、と無理な注文を書いておく。

 食事は相変わらずの俵屋風。
 最近流行りの創作系和食のような華やかさはないものの、焼き物、煮物、椀物、全てが、よく吟味された素材を用いて、普通に料理されたものが出てくる。この普通さが、たいへんだと思う。驚きや面白さは排除して、京都にしっかりと根付いた、伝統的、本道の料理であり、私は以前はそこが少し物足りなく思っていたけど、40歳を越えると、このような料理のすごさが理解できるようになり、今ではたいへん好みである。

【先付け】
Tawaraya_dinner1

 季節の野菜の天麩羅、飯蛸の煮物、胡麻豆腐など。

【焼物】
Tawarya_dinner2

 琵琶湖の諸子、田楽など

【鍋物】
Tawaraya_dinner3

 白魚の鍋
 いずれの料理も、旬の素材をうまく用いて、春を演出しています。
 写真はレンズが曇っていたみたいで、いずれもピンボケ気味なのが残念。

 さて、世間は大不況なのであり、旅館業も当然その影響は蒙っているだろうが、俵屋くらいの人気旅館になると、どうせ客はリピーターで埋め尽くされているだろうから、たいした影響は受けていないであろうと思い、仲居さんに聞いてみた。すると、とんでもないということで、春・秋のオンシーズンはたしかに予約で埋まっているけれど、オフ・シーズンが問題になっているそうだ。京都は国際観光都市なので、外国から訪れる人は多く、俵屋もオフ・シーズンは外国人観光客がたくさん泊まっていたのだけど、昨年のリーマンショック以来徐々に外国人が減り、年を越えてからは危機的状況になっているそう。…そりゃ、世界同時大不況に加え、円高のダブルショックを受けては、外国人来なくなるでしょうなあ。
 でも俵屋でさえ、客が激減するようなら他の旅館はもっと大変なのではないだろうか。とくにお隣の柊家などは、バブリーな新館を建ててしまっているけど、大丈夫であろうかと心配してしまう。余計なお世話でしょうけど。
 この不況がずっと続くわけもなく、あと3年ほどの辛抱が、どの業者でも必要になるのだろうけど、その時期いかなる変遷があるのだろうか。ちょっと不安になってしまう。

 朝食は焼き魚は塩鮭、それに湯豆腐。

【塩鮭】
Salmon

 俵屋の朝食に出てくる塩鮭は、肉厚で、味は豊か、塩加減も丁度いい。これほどの塩鮭は私は俵屋のものしか知らない。
 湯豆腐は京都の宿の定番。大豆の旨さが濃厚です。

 食後のコーヒーを楽しんだのちチェックアウトして宿を出る。
 少し歩いたところで、向かいを歩く人にどうも見覚えがある。同じ職場の人だ。向こうも私を見て驚いた表情になり、互いに会釈をかわす。立ち止まって話をしてもいいのだろうけど、向こうはカップルだったので、遠慮してそのまま通り過ぎた。
 宮崎でもそうそう顔を見る人でもないのに、遠い京都で会うとはいかなる確率か。それも清水寺とか金閣寺の人気観光地ならわからぬでもないが、観光地でもない麩屋町通りで会うとは。盲亀浮木とか優曇華の花とか、どうでもいい言葉が頭に浮かんだ。

 この後嵐山、京都御所と訪れ、京都駅より新幹線で九州へ帰る。
 新幹線では俵屋の弁当を開け、それを肴に一杯飲みながら、窓を眺め行く風景を眺める。これも京都に行ったときの、おおいなる楽しみの一つである。

【俵屋の月変り弁当 3月は鯛飯】
Tawaraya_lunch


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春の京都 桜見物(3) 嵐山~御所

 週末土日は運のよいことに連日晴れで、陽光のもとでの桜を楽しめた。花は、豊かな光のもとで、より美しく華やかになる。
 まずは桜の名所嵐山へ。もし花盛りなら、とんでもない数の人が駅前からの道を埋め尽くしていると思われるが、駅からおりるとたいした数の人はいなく、…これは期待できないな。

【天竜寺 見下ろし】
Tennryuu_temple1

 天竜寺の庭園。桜が咲いてなければ、清水寺と同様に入ることなしに通りすぎる予定であったが、看板に「枝垂桜の見ごろ」ですと書いている。それならば、入園料払って入らねばならないでしょう。
 そして、枝垂桜はたしかに満開の見ごろ。その満開の桜のなかに、埋もれるように本堂が見下ろせる。

【天竜寺 枝垂桜】
Tennryu_temple2

 同じ桜を寺の高さで見たもの。
 美しいけれど、人が多すぎるのが風景を傷つけてしまうなあ。嵐山は、常に人の多さが問題となる。まあ、私のその人ごみの中の一員なんだけど。

【渡月橋】
Togetsu_bridge

 嵐山といえば、渡月橋。
 岸辺に植えられた桜は、花の時期にはまだまだであったが、数本のヤマザクラ、それに山肌のヤマザクラが花の盛りを迎えており、ぽつんぽつんと風景に彩りを添えていた。

【京都御所】
Palace1

 嵐山の見物を終え、昨夜はなにがなんだか分からなかった京都御所を訪れる。
 昨夜の、異界のものが彷徨っていそうな雰囲気はがらりと変り、日のもとでは、静謐・清浄な空気が満ちている。

【御所の枝垂桜】
Palace2

 昨夜はこの近くまで来ていたはずだが、こんなすごい桜が咲いていたとは全く分からなかったよ。
 今回の京都訪問で見た桜で、最も美しく、最も華やかな桜。
満開の花が、地に垂れた枝にいっぱいに咲き誇り、天上から地上へ花が流れ落ちる、花の滝のような姿をみせている。誰もがその豪勢な美しさに魅せられ、大勢の人が立ち止まってこの桜の木を見つめている。

 いいものを見ることができた。
 今回の京都行は、桜満開の京都を経験することはできなかったが、御所の桜を見ることで十分な満足を感じた。…でも、桜吹雪舞う京都も経験したかったなあ。来週が花のピークだろうから、そのとき京都を訪れる人が羨ましいなり。
 次に春の京都を訪れるのはいつになることやら。

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March 28, 2009

春の京都 桜見物(2) 夜の二条城

 桜の時期の京都には、桜の名所案内のポスターがあらゆるところに貼られており、そのなかでもとくに多いのが「二条城ライトアップ」のポスター。あらゆる名所を押しのけてこんなにも宣伝するのだから、それはたいそう立派なものであろうと、宣伝効果に乗せられ、とっぷり日も暮れてから二条城へと行ってみた。

【御殿】
2jo_castle

 京都の文化遺産のうちでも別格の風格を持つ二条城の御殿。
 ライトアップされることにより、さらに威厳を増した姿を見せている。
 でも、桜は咲いてない。というか、桜の木自体がない。

【夜桜1】
Night_cherry1

 二条城も他の地方と同様にヤマザクラ系の桜が花をつけているのみで、大多数を占めるソメイヨシノはまだ花を咲かせていない。
 その数少ない、花を咲かせている桜をライトアップ。荘厳な美しさを感じます。

【夜桜2】
Night_chery2

 桜林のライトアップ。
 まったく花をつけていない木々のなかに、一本だけ花をつけている桜があり、そこだけが自ら光を放っているような白さをまとっている。遠目に見ると、花をつけていない桜の木も、光に照らされるとそれなりにきれいだ。

【二条城城壁】
Water

 桜におとらず印象的であったので、二条城城壁のライトアップ。正確に言うと、堀の水面のライトアップであり、光が揺れる波に反射して壁に映り、ゆらゆらと光と影がゆれる、幻想的な風景が広がっていた。
 ここは絶好のお勧めスポット。

【京都御所】
Imperial_palace

 なにがなんだか分からないが、京都御所である。
 今出川方面の桜が見事だと宿で聞いたので、宿に帰るついでに寄ってみた。
 桜はたぶん咲いているのだろうけど、しかしライトアップしていないので、全ては暗闇のなかである。御所は独特の雰囲気に満ちた場所であり、こんな暗闇のなかでは、百鬼夜行とはいわぬまでも、魑魅魍魎がうごめいている気配が感じられ、長居するところではない。明日、日のあるうちに訪れる予定として退散した。

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春の京都 桜見物(1)東山方面

 3月中旬は暖かい日々が続き、日本の各地どこでも桜の開花が報じられている。宮崎では3月第3週で桜が満開という例年にない早さ。
 でも桜といえば、京都。桜満開、風とともに桜の花びらが空間いっぱいに流れて来る、そんな桜色に染まった京都を訪れてみたい。3月末が満開の時期になりそうなので、月末の京都は期待できそうだ。
 しかし、3月末になって突然寒波が襲来。咲こう咲こうとてんぱっていた桜の木は、この2月なみに寒さに蕾を固く閉じてしまい、開花はフリーズ状態。せっかく訪れたのに、なんてこったいとぼやきたくなる3月末の京都であった。

 とりあえず駆け足で訪れた桜の名所いろいろ。

【円山公園 枝垂桜】
Maruyama_cherry

 円山公園の名物の大枝垂桜。
 枝垂桜はちょうど見ごろの時期であり、これは7分咲き。やはりこの巨大な桜は見ごたえがあります。円山公園で一番目立つ木だけあり、一度は花盛りの姿を見なくては。

【円山公園 枝垂桜2】
Maruyama_cherry2

 円山公園には枝垂桜が何本が植えられているおり、その中ではこの背丈の低い枝垂桜が一番花が咲いていた。ほぼ満開。垂れた枝に花をいっぱい載せ、まるで花の滝のような木の姿が美しい。

【祇園】
Gion

 祇園の桜も、花をつけた桜の木がぽつんぽつんとある程度。
 日本で最も華やかな街は、まだ華やかな装いの時期にはいたらず。

【山科疎水】
Sosui_cherry

 昼食を「鮨まつもと」で食べたのち、地下鉄東西線で「御陵」へ。
 目的地は、通好みと思われる桜の名所、山科疎水。琵琶湖から引かれた水路の両脇に桜が植えられ、満開の頃は、桜の花びらがたくさん水面に浮いて流れていく、そんな艶やかな風景が楽しめそうなところである。しかし残念ながら花(=ソメイヨシノ)の時期にはまだ早く、咲いている桜としては、ところどころ5分咲き程度に咲いている山桜が見られるのみ。桜見物の客も少なく、蕾のみの桜とあわせ、閑散たる風景。
 いつか、満開の時期に来てやるぞ。

【毘沙門堂】
Bisyamonntenn

 山科疎水とのセット、毘沙門堂。
 桜はほとんど咲いていなかったけど、一本だけ満開の桜があった。これでよしとするか。

【三年坂】
3nenzaka

 地下鉄に乗って東山まで戻り、京都でもトップクラスの桜の人気スポット、清水寺へと向かう。
 ここは、いつ、どう行っても混雑の極みの地なので行きたくなかったのだが、桜が満開だったりすると行かないわけにはいかないので、混雑をものともせず行く。
 いざ歩けば予想通りの人の山の三年坂。いつ行っても満員電車なみの混雑の観光地って、ここくらしか知らないなあ。
 三年坂に一本満開の桜があった。賑やかな風景のなか、雑踏の人を迎えるからのごときの桜。貫禄を感じます。

【清水寺】
Kiyomizu

 予想はしていたけど、清水寺、桜はほとんど咲いていなかった。
そ れでも清水寺は観光客でたくさんだ。そして清水の舞台へは、どんどん観光客が入っていき、桜なくとも清水寺の集客力のすごさに感心してしまった。
 私は、「清水寺に桜は咲いていなかった」ということを確認したことのみに満足し、(不満足ともいえる)、もとの坂を下ることにする。

 とりあえず本日の目的とするところはだいたい回ったので、寒い寒いといいながら、宿へと戻る。食事のあとは、ライトアップの桜見物だ。

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寿司@鮨まつもと(京都市祇園町)

 荷物を旅館に置き、円山公園で桜を見物したのち、昼食へ祇園の「鮨まつもと」に行く。
 美味しい和食の店がいくらでもある京都で、わざわざ寿司を食べなくともという意見もあるであろうが、昼飯の選択としては悪くはないはず。京都の名物料理としては鯖寿司、豆腐料理、鰊蕎麦などが思いうかぶけど、鯖寿司一品では寂しいし、豆腐は旅館の朝飯に出てくるし、鰊蕎麦なんて一回食えば十分だ。それらを選ぶよりは握り寿司のほうが食指が動く。ようは私は寿司が好きなのである。(と、前にも似たようなフレーズを書いたな)

 花見町小路を入ってすぐの角を曲がってしばらく歩いたところに店はある。
 東京は新橋の寿司の名店「しみづ」で修行した若い店主が、関西で江戸前寿司を供すべく開いた店である。近頃、関西でも江戸前寿司を出す店が増えているけど、この店がその走りのようなものなのではないのかな。

 寿司は「しみづ」直伝スタイルなんだろうけど、師匠の独特の固くしまったシャリとは異なり、それよりはやさしめに握られている。また師匠の寿司のように、飛んだりはしない。

 昼のメニューは握りのみ。平目、春子、赤身、イカ、海老、鰺、コハダ、タイラギ、煮ハマ、ウニ、穴子、干瓢巻き、玉子、等々。シャリは地紙型に握られ、ネタとのバランスもよい。築地から仕入れたネタ質もまずまずのもの。〆方もしっかりしており、塩の利いたシャリによく合っている。鰺の寝かせ方は抜群であり、とろけるような食感が楽しめた。
 昨年の秋に来たときよりも、握り、仕込みが完成度の高いものとなっており、だいぶ安定してきたのではないだろうか。

 元気よい若夫婦がキビキビと働いています。客は遠方からの常連客が主みたいで、店を盛り立てようとする暖かい心使いが感じられる。店全体として、家庭的な雰囲気が満ちており、鮨道を極めんとする人が集まる師匠の店とは、だいぶ雰囲気が異なります。

 将来的には京都の寿司の一流店になることが期待できる店だと思います。
 これからも、たびたび寄ってみようと思う。

【コハダ】
Kohada


……………………………………………………
鮨まつもと 京都府京都市東山区祇園町南側570-123

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March 25, 2009

激辛料理「火鍋」

 インド料理は辛いというイメージが強いが、あそこの料理はスパイスを豊富に用いた味付けが特徴的なのであって、本来辛さはたいしたことはない。だから日本での「本場インドの激辛料理」などというものを本場のインド人が食べたとき、「こんな辛いもの食えるか」とあきれるそうだ。しかし、インドのスパイス料理がチベットを越えて中国に入り、中国料理とインドのスパイス料理が合体して成り立った四川料理の「火鍋」は、まじに辛い。「激辛料理」という名前は火鍋のためにあると思ってもいいくらいの辛さである。

 なぜ四川省の火鍋が辛いかというと、それには地理的理由による。四川省の主な都市は盆地にあるので、夏は非常に暑く、冬は非常に寒いという、人間が住むには厳しい気候環境にある。エアコンなどのない時代、住民はそれをどうやって対処していたかというと、「冬はものすごく辛い料理を食べて身体をカッカさせて温まる」「夏はものすごく辛い料理を食べて汗をたくさん流してすっきりする」の二本立て。辛いものを食べて気候に打ち勝つという、簡単かつ乱暴な方法により、今までしのいできたのだ。
 とりあえず、現地ではそのように言ってた。

 かれこれ10数年前中国に行ったとき、重慶市内をぶらぶらしていると、やたらに「火鍋」と看板のかかった店が目についた。ガイド本を見ると、これが四川の名物だということを知り、あまりに汚い外見に入るのを嫌がる同僚を無理やり説き伏せ店に入り、火鍋なる料理を食ってみた。異様なにおいのする、ごたごたしたものが煮詰まっている赤いスープの鍋に、テーブルに並べている羊や豚の臓物を持ってきて、しゃぶしゃぶ風に煮て食べる方式。一口食べると、あまりの辛さにむせてしまう。しかし、これがクセになる辛さであり、むせて、涙を流しながらも、どんどんと具財を鍋に放り込んでは食ってしまった。初めは異様な料理に怖気をふるっていた同僚も、知らぬまに懸命に食べるようになっていた。
 中国では北京や上海の有名な店でも名物料理を食べたけど、私は重慶の小汚い、というか大汚い店で食べた火鍋がいちばんインパクトが強く、そして美味かったと思った。
 火鍋の印象が強烈だったので、これは他の者にも経験させねばと思い、重慶のスーパーーに売っていた「火鍋の素」を買い、帰国したのち職場で火鍋の宴を開いた。羊や豚の臓物は手に入らなかったので、普通の肉やホルモンを使わざるをえず、本場のものとは微妙に違うのだけど、それでも、辛さと臭いの強烈な、特徴ある料理であり、みな鼻をすすり、むせ、涙を流しながら、「これはクセになるねえ」とか言いながら、喜んで食べたものだ。それが10数年前の話。

 その宴のときにいた上司が、今の職場にもたまたまいる。
 先日酒の席で、上司が「あの火鍋は美味かったなあ。また食いたいよ」と言う。宮崎の中国料理屋で、あれを食わせてくれる店はないだろうけど、まあ、素が手に入れば鍋自体はできる。

【火鍋の素 (中国より輸入したもの)】
Hinabe_moto_2

 今はネットでなんでも簡単に手に入る時代だ。楽天を調べると、中国現地の「火鍋の素」が容易にヒット。さっそくこれをGETし、近くの居酒屋で火鍋パーティを行うことにした。

【火鍋の素】
Hinabe1

 まずは火鍋の素を炒めて香りを出し、それを鍋に入れる。

【火鍋】
Hinabe2

 水を入れて沸騰させ、それから肉やらホルモンやら野菜やら何でもいれて、ぐつぐつと煮る。写真で見ると、いっこうに美味しそうに見えないが、立ち上る異様な香りは尋常なものでなく、食欲を多大にそそります。
 そして具が煮えると、みなさん一心不乱に、涙を流し、むせながら火鍋と格闘するのは、お約束ごと。ほんとにクセになる料理です。

 この火鍋、美味しいのはいいけれど、困ったことが一つ。辛さに慣れていない人が大量に食べると、翌日におなかにけっこうきます。
 一回くらいは経験すべき料理だから食ってみろよ、と鍋に参加させた見習いF君、美味い、美味いと喜んで食ったはいいものの、翌朝4時に腹痛で目が覚め、午前中は仕事がきつかったとのこと。まだ火鍋の素は余っているので、おなかを鍛えるためにあげようかと言うと、もう結構とのことであった。

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March 24, 2009

WBC決勝戦 日本対韓国戦

 WBC決勝日本韓国戦、面白かった。近来まれにみる、手に汗を握り、胃がきりきりと痛くなるような、緊迫感・緊張感あふれる試合。この感覚は、10年以上も前に日本代表サーカーチームがイランを破り、フランスW杯進出を決めた「ジョホールバルの歓喜」以来だなあ。
 国代表のチームが、威信と誇りをかけて、全力を出したら、こういう名勝負が生まれるといういい例。

 WBC,デスクワークの合間にTVを観ていたのが、いつのまにかTVに釘付けになってしまい、気づけば職場の大勢のものがTVを取り囲み、大声をあげて一喜一憂していた。
 最も悲鳴があがったのが杉内交代の場面。「原監督なにすんねん!」と怒号の嵐。おかげでダルビッシュが一点取られて同点になった場面も、ある意味予定調和的出来事として落ち着いて見られた。
 最も歓声が上がったのがもちろんイチローのセンター前クリーンヒット。たとえこの後逆転されて負けても、この一打が見られただけで、WBCを観た価値がある一打。

 それにしても2アウト2塁3塁の場面で、イチローに真っ向勝負を選ぶ韓国バッテリーも素直に偉いと思う。
 韓国で最も嫌われている日本人、韓国野球界の最大の仇敵(と向こうが一方的に思っている)イチローに対しては、たとえ打たれて負けようが、戦いもせずに「逃げる」わけにはいかないという意地。潔くも美しい。
 イチローも投手の勝負心はよく分かっていて、気迫をこめて本気で投げてきたボールには本気で打つ。だからボールが外れてとんでもないコースに来ても、それに食らいついてバットに当てる。そんなクソボール振らんでくれ~、空振りするぞ、と皆が悲鳴を上げるような場面が続くうち、ついにバットは球を真芯でとらえ、センターにきれいに弾きかえす。一同、飛び上がり、大歓声をあげての大歓喜。このとき、日本全国どこでも同じ光景がくり広げられたことでしょう。

 スーパースター、イチローの、野球生活のなかでのおそらく最高の思い出になる打席、スーパースターのみが知る「星の時間」が来た瞬間、生で見られて、たいへん幸運であった。

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March 21, 2009

母智丘の桜

 九州では、桜は私が子供の頃は4月の始業式に咲くものと決まっていたものだが、地球温暖化は着実に進行しているようで、近年は3月末に満開になるものとなっている。そして、暖冬であった平成21年の桜はさらに開花の速度を速め、すでに3月中旬で花を咲かせている。桜の名所母智丘においては、開花のピークであるはずの3月末より桜祭りが催されるのだが、今年は開花のピークが3月第3週の土日に来てしまい、さて、祭りの頃に桜の花は残っているのであろうか?
 私は桜祭りに興味はないが、桜には興味がある。満開に近いとの新聞の情報なので、自転車で行ってみることにした。

【母智丘桜並木】
Cherry_tree_row

 いつもは閑散としているこの道は、今日は桜見物の車がひっきりなしに通っている。
 桜のトンネルのなか、適度な勾配のある坂を自転車で気持ちよく進めていく。

【母智丘公園】
Chery_park

 桜はすでに満開。風が吹くと、桜の花がさらさらと流れてきます。
 土曜日の昼という時間でもあり、あんまり花見の客はいない。照明器具が設置されているので、夜には宴会で賑わうのでしょう。

【くまそ広場】
Kumaso_park

 ついでなので、くまそ広場まで行ってみる。ここも桜がたくさん植えられているけど、こちらは標高が100mくらいは高いので、まだ5分から7分咲き。桜祭りのときは、くまそ広場のほうが賑わいそうだな。

【関之尾の滝】
Fall

 くまそ広場からは、関之尾の滝を見下ろすことができる。
 くまそ広場の奥、石楠花が植えられている公園をさらに奥に進んでいくと、遠くから滝の音が聞こえ、そしてあの雄大な滝を遠く見ることができる。

 桜を堪能したのち元来た道を戻るが、どうも風が当たる目が痛い。
 今日は近場の走りだから、サングラスをせずに走ったのだけど、黄砂の飛ぶ時期には無謀だったみたいで、結膜炎になってしまい、翌日には目がまっ赤になってしまった。おかげで明るいところを見ると、目が痛く、いろいろと苦労した。数日でなんとか治ったけど、これからはいかなる距離の走りでも、サングラスはするよう固く決意した

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March 20, 2009

ゴルフ@三州カントリークラブ

 連休の初日は職場のゴルフコンペ。ちかごろはドタバタしているのでゴルフの練習はまったく行っておらず、ろくでもないスコアになるに決まっているので、出場するのは気が進まぬが、今回は「送別会ゴルフコンペ」という名目になっており、送別される立場の一員としては出ないわけにはいかないみたい。

Sannsyu


  ここのコースは初めてだけど、フェアウエイがやたらに広くて真っ直ぐで、思いっきり飛ばすのが好きな人には楽しいコースであろう。私は思いっきり飛ばすと、あらぬところに曲がっていってしまい、ロストボールの山を築くのがオチなので、コツコツと真っ直ぐ前へ前へ進める堅実なゴルフでまわっていく。

 さて、今回は送別される組として、見習いF君も参加。彼はこの職場に来て、工場長の指導のもとでゴルフを始めたのだが、当たればとんでもなく飛ぶゴルフの魅力にはまってしまい、連日仕事が終わったのち練習場で400球は打つという熱中ぶり。マラソン・トライアスロンが趣味というF君は走りこんでいるので下半身が安定しており、身体がよくしなるので、芯に当たれば300ヤード近くを飛ばす。
 コースに出るのが2回目というF君は、1回目はよれよれであったけど、今回は練習を積んできているのでショットが安定している。ドライバーショットはたいていフェアウエイの真ん中をとらえている。
 工場長はF君の上達ぶりに感心するが、こいつ仕事よりもゴルフのほうが上達したんじゃねえのか? …でも教えたのはおれだから、文句は言えんし、などと思ったそう。そして工場長はちっとも練習していないので、スコアが伸びない。F君の前半のスコアは66であり、負けてしまった。ゴルフ歴30年近いのに、2回目の若者に負けるわけにはいかない。後半は懸命に追い上げて抜き去り、なんとか面目を保ったそうだ。でも次回があれば、確実に負けるだろうな。

 私はといえば、ボールを失くしたくないがために、ただただ真っ直ぐを目指して打ったのが良かったみたいで、IN64 OUT66で計130という、今まででのベストスコア。ローカルハンディが50もあるので、5位入賞であった。
 始まるまでは面倒だが、ゴルフはそれなりに歩けるし、身体も使うし、それに頭も使うし、ほどほどに楽しいスポーツだと思う。

 次の職場はあまりゴルフ好きがいないみたいなので、これで当分はゴルフをすることもないであろう。宮崎はコース料金のあまりの安さに、一部の者にはゴルフの聖地のように言われているけど(じっさいにわざわざ宮崎に移住してきて、ゴルフ三昧の日々を送っている人がいる)、その聖地にいながら、上達はしなかったなあ。ま、次の職場も宮崎県内なんだが。

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March 19, 2009

コミック:鉄子の旅プラス 菊池直恵 著

 もう終了していたと思っていた「鉄子の旅」の新刊が出ていたので買ってみた。
 鉄道オタク「テツ」の情熱と滑稽さと愉しさを描いた「鉄子の旅全6巻」は、なかなかの佳作だったと思う。私のようなテツ気のないものでも、全巻面白く読めたし。

 今回の新刊は続編ではなく、「鉄子の旅」が人気が出て、それにまつわるいろんなイベントが連載終了後も行われ、著者が請われてその記録を漫画に描いたもの。「鉄子の旅・後日談」ということになる。
 いきなり単行本として出たわけでなく、月刊IKKIに不定期に連載されていたそうだ。IKKIなんて雑誌読まないから、知らなかった。IKKIって、ネットで調べるとライトノベル雑誌のようだけど、地方の本屋でも売っているのかな?

 本書では、筋金入りのテツ、横見氏のはじけっぷりは相変わらずだし、さまざまな職場に生息しているテツ達の行動も、それぞれ常識はずれで面白い。
 鉄道に興味を持たない人にとっては、この漫画は、テツという愉快な人種を観察するものであるみたいだな。

 さて、「鉄子の旅」で知り、私が是非とも乗ってみたいと思った鉄道がある。それは、肥薩線のえびの高原線矢岳駅周囲。なんでも、そこの風景は「日本三大車窓」の一つだそうで、雄大な高原の景色が広がっているそうだ。
 私の住むところの近くに、そんな日本三大なんとかに選ばれるようなものが存在しているとは知らなかったわい。
 …しかし、肥薩線ってものすごく不便なんだよなあ。熊本市に出るさいに、肥薩線に乗って行ってみようかと思ったことがあるけど、都城→吉松→人吉→八代→熊本って、便数も少なく、連絡も悪い。車で行く数倍の時間がかかってしまう。時刻表をながめて、めげてしまい、いまだに乗ったことはない。
 テツなら万難を排して乗るんでしょうけど、…結局私には鉄分が少ないということか。

……………………………………………………
鉄子の旅プラス 菊池直恵 著

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March 18, 2009

和料理 つか野@都城市上町

 つか野にて、春のコース料理を食べる。

【前菜:竹の子とイカの木の芽和えと、野菜の白和え】
Bamboo_shoot1

【造り:歯鰹と鯛】
Raw_fish

【揚げ物:山菜、朝鮮人参、海老】
Fry

【椀物:竹の子、海草】
Bambpp_shoot2

【鯖鮨・サゴシ(鰆の子供)西京焼き】
Mackerel

【ヒレ肉焼き 温野菜添え】
Beef

【御飯・呉汁】
Rice


 素材はなるべく宮崎・南九州のものを、使おうと努力しています。たしかな技術で、丁寧に作られた料理が、美しく盛られて出てきます。
 味付けは南九州風ではなく、全体的にやさしめ。とくに椀物は、あっさりしているものの、くっきりと味が浮かんでくる上手な出汁のとりかた。呉汁も大豆の旨み、甘味みを生かした、この店の名物。
 牛肉は普通はサガリだけど、今回はヒレ肉。宮崎の和食屋ではメインの締めに、肉料理が出てくることが多いけれど、ここもその流儀。店主がカウンター内で、醤油タレ,焼きを微妙に調整しながら、じっくりと焼いているのがみられます。味付けはもちろん和風です。

 研究熱心な店主は、全国の様々な店を食べ歩いていて、そこからいろいろなものを取り入れて、自分の料理に生かしています。
 南九州は、和料理はあまり盛んな地ではないと思いますが、郷土の素材を大事にした、技術のしっかりした和料理を出す、つか野のような店は、和食好きにとっては大変ありがたい存在です。

……………………………………………………
おまかせ料理つか野 都城市上町7-21 TEL 0986-25-1008

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March 16, 2009

コミック: PLUTO7 浦沢直樹 著

Epsilon_2


 アメリカらしき国が、自国にロボット産生の技術が発達していないため、これ以上のロボットの技術の発展を阻害しようとする。そのため、超高性能ロボットが大量破壊兵器になりうると言いがかりをつけて、今まで造られた7体の超高性能ロボットのみを残し、新たな高性能ロボットの製造が禁止されてしまった。その7体のロボットが、姿の見えない敵により、次々に破壊されていくというのが今までの筋。最後に残ったのは、オーストラリアの光子エネルギーロボット、エプシロンであった。そのエプシロンを主役にすえたのが、PULUTO第7巻である。

 大量破壊兵器になりうるとされた7体のロボット、じつは、そのほとんどが戦闘については白兵戦用のものばかりであって、強くはあっても、量はこなせないと思う。しかしエプシロンのみは、名実ともに「大量破壊ロボット」といえる存在であり、町ひとつを、一瞬にして消し飛ばす能力を持っている。当然、戦闘力に関しても最強のロボットであり、襲ってきた刺客ロボットPLUTOに対しても最初の戦闘では、鎧袖一触にして退ける。エプシロンは、警備担当のロボットが感嘆して言うように、「強い…」のである。
 エプシロンが戦闘を続行すればPLUTOは破壊されて、それでこのロボット連続破壊事件は一件落着になるはずであったが、エプシロンは敵にダメージを与え、退散したことのみに満足し、深追いすることはしない。エプシロンにとって、闘いは勝つためのものでなかったからだ。

 PLUTOを逃がしたことを責められたエプシロンが、「PLUTOは何度戦っても私の敵ではない」と宣言するように、エプシロンは作中で無敵の存在である。しかし無敵だからといって、現れる敵をいちいち倒す必要はない。エプシロンは、強かったので、自分の強さを誰よりも自覚していたし、誰よりもその恐ろしさを知っていた。

 戦闘能力があるからといって、それを利用してバトルに勝って喜ぶような能力は、ほんとはたいした能力ではない。ちょっとした感情の高ぶりで、町が都市がぶっ壊れるような能力こそ、真に畏るべき戦闘能力であり、エプシロンは自分にその能力があることを知っていた。そして、エプシロンはロボットが人間に近づくことにより、本物の憎悪・絶望がロボットの心に生まれ、凄絶な行為を起こしうるということも知っている。
 だからエプシロンは必死に感情を抑制し、闘いも断固として拒否する。自分の感情の暴走で、とんでもない災害が起きるようなことは絶対にしてはならないからだ。エプシロンの非戦主義は、周囲の者が揶揄するような「平和主義」などというような、生易しいものではないのだ。


 エプシロンは敵の策略によりさらわれた戦災孤児を救出に行き、またPLUTOと戦うことになる。PLUTOは呪われたロボットである自分を殺してくれと嘆願する。エプシロンの力では、それは容易なことであった。しかしエプシロンは敢然とそれを拒否し、他者の憎しみにまたも制御されたPLUTOに破壊されてしまう。
 エプシロンの悲しみの感情は、空間を越えて、眠れるアトムに届き、アトムが目覚めるところで7巻終了。

 最強の力を持ち、崇高な精神を持つ孤高のロボット、エプシロンの物語。
 原作のときもエプシロンは強く気高かったが、浦沢版リメイクでもエプシロンの魅力は健在であった。

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PLUTO7 浦沢直樹 著

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March 10, 2009

ラーメン:かどや@都城市栄町

 ラーメン好きな人が都城を訪れたとき、個性的なラーメンを食べたいと思ったときは、「かどや」を訪れるのがよいように私は思う。

 「かどや」のラーメンの看板メニューは、醤油味ラーメンということになっている。このラーメン、出汁は魚介系でとられているけど、その出汁が強烈である。いろいろな魚の出汁が、それぞれの味をとんがらせながら、渾然一体となり、複雑にして力強いスープを形成している。このスープ、一口飲むだけで、尋常でない手間隙がかけて作られていることが分かります。

 「かどや」には宮崎のラーメン屋らしく、豚骨ラーメンもメニューにある。こちらも強烈。このラーメンのスープたるや、脂がたっぷりで、とろとろにしてクリーミィであり、スープというより薄めのシチューのような感じ。脂たっぷりといえど、豚骨独特の臭みやえぐみはなく、香りよく食感はまろやかです。
 麺は中太で、つるつるもちもちした食感。スープとよくあっていると思う。

 醤油も豚骨も、他の店ではちょっと味わえないような、練りに練り上げられた、独自のラーメンである。個性が強いだけあって、人によって好みが分かれるであろうけど、都城では一度は食べてみるべきラーメンだと思います。

【黒豚豚骨ラーメン】
Ramen

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かどや 都城市栄町17-1 TEL 0986-22-2288

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March 08, 2009

国道10号線 帰宅道

Miyazaki_city_1

 天気予報によれば、曇り時々雨とのこと。
 見上げる空はこんな感じであり、宮崎市での雲は厚く、今にも雨が降り出しそうである。というか、ぽつりぽつりと雨粒が落ちてきた。自転車で走るには問題になるような降り方ではないが、途中で雨足が強くなり、豪雨になってしまったら進退窮まってしまう。
 ここで昨日の教訓、ロングライドには輪行袋。
 国道走っていれば、いざとなれば自転車を輪行袋に詰め込んでバスに乗ればなんとかなる。そういうわけで、「りんりん館」に行き輪行袋を購入して、ザックに入れた。これがあればアクシデント発生時も対応できる。

Oyod_river

 本降りを心配しながら国道10号線を走っていったが、雲は薄くなってきて、だんだんと空が明るくなってきた。3分の1ほどの行程をおえて、大淀川を渡るときは、写真で見るように、雨の心配のない薄曇りの天気となる。寒くも暑くもなく、日にも照らされない好条件の気候のもとで、快適に自転車を走らせ2時間半くらいで帰宅。宮崎市も案外近いな。

 昨日・今日と、180km近く自転車で走ったけれど、その行程で見かけた自転車乗りは、「道の泉」で休憩していた初老の人と、10号線本八重の坂ですれ違ったロードレーサーの計2名のみであった。宮崎は自転車乗りが少ないのかなあ。それとも私の選定したコースが、マイナーなのか。

 本日の走行距離: 56.1km

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寿司 「光洋」→「趣味鮨一」

 7時間近く自転車に乗り続け十二分に腹が減り、「美味いものを腹いっぱい食うぞ」モード全開で光洋へ。リタイヤしたF君は先に着いており、次回の完走を祈念して、さっそくビールで乾杯。次々に出てくる肴で、冷酒をぐいぐい空けていくうちに、10時を過ぎて、「趣味鮨一」の時間となる。
 奥のテーブルの明かりは消され、カウンターのみに照明が当たり、ショー開始という感じ。

 光洋の鮨は、白酢・赤酢を用いた2種類のシャリで握られている。九州では珍しい方式。ネタによりシャリを使いわけるこの方式は、一品一品の鮨の完成度が高くなる利点があるけど、しかしながら、コース一連の流れのなかでアクセントがつきすぎて、全体としての統一性が失われてしまうのが難点と、私には思える。

 鮨の主役はシャリなので、ダブルキャストでやるより、魅力ある主役が一人で仕切るほうが、劇の統一性は保たれるし、個性もより浮き出る。
 …まあ、そういう考えなのか、どうなのかは知らないが、店主がより自分自身の目指す鮨を握りたいと、「趣味鮨一」という時間限定の鮨屋を開き、そこで一種類のシャリを用いて鮨を握るようになったのである。

 ここでのシャリは、酢と塩のみで砂糖を使わない、純江戸前スタイルのシャリである。食した感じでは、あまり酢も塩も強めでなく、やさしい味のシャリであった。かえって、赤酢を使った光洋のシャリのほうが個性が強いといえば強い。
 だから、ネタもシャリにあわせて、光洋とは違うやりかたで仕込んでいる。それは、けっこううまくバランスがとれていて、一体感を感じることができた。とくに良かったのは、白身やイカ、昆布締めなど。煮ハマや穴子には、シャリが負けているようにも思えたが、これもぼちぼち改良されていくのでしょう。

 写真はキスの昆布締め。相変わらずの美しい姿の鮨です。

Shillago

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March 07, 2009

都城~日南~宮崎市(1) 飫肥街道:都城~新上熊トンネル~飫肥

 今回は2名でのサイクリング。
 職場の見習いF君(20代の好青年)は自転車好きなので、以前に新矢立峠を越えて広渡ダムまでの往復ルートを一緒に走ったことがある。このときF君は高い峠を越える全行程60km強を楽々とこなしたので(あとで聞くと、「すごくきつかったっす」とのことだったが)、今回はもう少し距離を伸ばしたサイクリングをしてみよう。
 自転車で100km以上を走って宮崎市に着、その夜は、のどが渇き腹も減った状態で、「光洋」で宴会し、たらふく飲んで食うという、なかなかに魅力的なプランを立てる。コースとしては、日南まで出てそれから宮崎市に向かうことにする。F君は100km越えには自信がないというけど、彼はフルマラソンを三ヶ月連続で走るような男なので体力的にはまったく問題なかろう。どう考えても、自分の足で42km走るより、自転車で100km漕ぐほうが楽に決まってる。自慢じゃないが、私はフルマラソン完走なんてまず無理だ。
 日南に出るまでは、鼻切峠と新上熊トンネルの二つの峠を越えることになる。それから一挙に海岸まで出てしまうと、もう峠はなくなり少々ものたりない。だから海岸まで出ずに、飫肥で90度向きを変え、北郷へ北上すると、椿山峠を越えて宮崎市に入ることになり、こっちのほうは峠をもう一つ越えられ、面白そうだ。しかしその案はF君に断固拒否され、結局日南海岸コースを行くことにする。

【鼻切峠】
Hanakiri_pass_2

 最初の峠は鼻切峠。F君は元気いっぱいにペダルを踏んでいる。
 鼻切峠を過ぎてからはしばらく下りが続き、日南方面に左折してもさらに下りが続く。やがて登り坂が始まると、それからはだらだらした登りが続き、そのまま新上熊トンネルへと到る。この登りの途中で、F君が右足の膝が痛くなったとのことで小休憩。休憩後は回復し、それから新上熊トンネルへと到着。トンネル内は車道を走りたくないので、都城側から見て右側の歩道に移動して自転車を漕ぐ。こちらの歩道のほうが左より広いのだ。

 トンネルを抜けて市が都城から日南に変ると、道の状態が断然良くなる。日南市、道路整備に力を入れているようです。新上熊トンネルからと、新矢立トンネルからの下り道は、「自転車で走って気持のよい道路 九州100選」なんて企画があれば、かならずエントリーされる道であると思われる。道の状態はいいし、道幅は広いし、車も走ってなく、爽快に自転車を走らすことが可能。F君は45~50kmでかっとんで行き、ハイスピードが苦手な私は付いていくのがやっとだ。

【深瀬 大谷橋】
Otani_bridge

 いつのまにこんなに登ったのだと思うくらいの距離をえんえんと下っていき、ようやく下りの傾斜がゆるくなるころ、深瀬地区に出る。走るときに注意をすれば、左手に、頑丈に造られた、地方文化財になりそうな石橋があるのを見つけることができる。その手前、この石橋を守るかのように、変な案山子が立てられている。これは十分に不思議物件と認められる奇妙な案山子のため、改めて別項で紹介したい。

【酒谷ダム】
Sakatani_dam

 道を進めていき、坂の下りの底は、酒谷ダムということになる。二段階構えで水を調節しながら落とす、面白い形のダムだ。ここを過ぎて、平坦な道を飫肥へ向けて、自転車を漕いで行く。

【すごい自転車】
Bike

 飫肥街道、酒谷から飫肥の間に、「道の泉・種子田」という休憩所もどきの所がある。天然の湧水が豊富に流れているところで、ここで一休みして水でも飲んでくださいとの趣旨の場所と思うのだけど、「道の泉」という名称のわりには、「この水は自己責任で飲んでください」みたいなことが書いている野暮な注意書きがあり、なんだかよく分からん「道の泉」だ。
 ここで、すごい自転車を止めて休憩している初老の人がいた。この自転車、通常のロングサイクリングの簡便かつ合理的パッケージと異なり、あるものいるものなんでもかんでも強引に詰め込んだ、迫力ある荷造りをしている。傘、サンダル、替えタイヤ(チューブではなく)、宿泊道具一式、なんでもござれだ。言っちゃ悪いが、自転車移動のホームレスといった感じで、…なんか憧れてしまう。
 京都を出発して、あちこちの道の駅でテント泊をしながら旅をしているとのこと。日本一周旅行中とかなのでしょうかと尋ねると、日本一周自転車旅行は、22才のときと24才のときにすでに2回しているとのことでした。
 焼酎を飲んで自転車漕ぐときつくなるんだよねえ、でも休憩しているときはこれが楽しみだからやめられないんだよねえ、とか言いながら、コップ入り焼酎を飲んでおりました。自転車乗りも、ここまで達人になると、ある種の貫禄を感じてしまう。たぶん、このお方は、その道では有名な人なのだろうと思う。

【飫肥の町】
Obi

 飫肥街道、酒谷ダムを下りてからは、飫肥までずっと平坦である。
 橋を越えると飫肥の町が見えるが、風景が今までとがらりと変ります。
 白い漆喰壁と本瓦が特徴的な建物が、国道沿いに立ち並んでいます。通りに電柱や電線はないので、すっきりとした外観になっており、かつての城下町の風景を模しているのでしょう。建物の数軒は、飫肥名物厚焼き玉子を売る店で、土産を求める人たちで賑わってる。
 飫肥は城址が名物なので寄ってみたところ、人力車が幾台も走っている。由布院などと同様の観光サービスかと思いきや、本週末のみの「人力車サミット」なる催しで、たまたま飫肥を人力車が走っていると、あとでニュースで知った。珍しいものを見たわけだ。

 飫肥は観光名所であるが、観光客が多く、自転車でうろつく雰囲気でもなかったので、飫肥の滞在は少々にとどめ、222号線に戻って日南海岸を目指した。

 その(2)へ続く。

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都城~日南~宮崎市(2) 飫肥~油津~日南海岸~宮崎市

【油津への道】
Aburatsu

 道を進めていき潮の香りがするころ、ついに海岸線に突き当たり、国道220号線に入る。ここをそのまま北上することはせず、いったん油津港へ寄ることにする。油津港はマグロで有名な漁港なので、寿司好きの私としては、どのような港か見てみたかったのだ。
 この海岸の眺めが今回のサイクリングでいちばん良かった。ちょうど天気が良くなってきて、空が晴れ渡っている。その空のもと、青い海をバックに、奇岩・巨岩のたぐいが迫力ある景色を作っている。
 ほどよいアップダウンのある海岸沿いの道を進んでいき港に着いた頃、アクシデント発生。F君の筋肉痛がひどくなり、休憩しないと自転車を漕げないと言う。無理してよくなるものではないので、ここで休憩。

【油津港 休憩中の、というかダウン寸前のF君】
Down

 F君、今回は休憩しても筋肉痛はひかず、とりあえずは痛んだ右足をかばい、左足をうまく使いながらだましだまし自転車を進めていくが、220号線に戻ってバス停を見つけたところでリタイアを宣言。とてもあと60km走るのは無理だと言う。残念ながら65km走ったところで今回は自転車行終了。本来この距離で筋肉がだめになるようなF君ではなく、マラソンやら、近頃猛練習しているゴルフのせいで、慢性的に筋肉に疲労がたまっていたらしい。
 バスは自転車そのものは持ち込めないが、ばらせば持ち込めるはず。バス停にて、自転車をばらして、F君は宮崎市行きのバスを待つことにする。私は、そこでF君と別れサイクリング続行。あらためて宮崎市の光洋で合流する予定にした。

【鵜戸神宮】
Uto_shrine

 日南では是非寄ったほうがいいといわれた「鵜戸神宮」に寄ってみることにする。宮崎有数の観光名所のわりには、離合も困難な細い道をたどっていかねばならないのに少し閉口した。ま、自転車でいくぶんにはどうでもいいんだけど。この細い道から、海岸線に鬼の洗濯岩が見える。ずっと進めると、鵜戸神宮駐車場の手前はけっこうな勾配の坂。全行程、ここのみ立ち漕ぎが必要であった。その劇坂を越えると鵜戸神宮の全貌が見える。
 鵜戸神宮には初めて来たけど、こんな辺鄙なところになぜこういう広大かつ立派な神社があるのか、驚いてしまった。驚きついでに、自転車を駐車場にとめ、海沿いの洞窟のなかにある本殿まで行ってみる。赤い太鼓橋を越えると、有名な亀岩があり、参拝客が大勢、運玉を投げていた。観光ガイドとかではおなじみの風景であるが、ここにあったんだ。

【玉橋 亀岩】
Uto_shirine2

 
 あとは寄るところもなく国道220号線を宮崎市目指して北上するのみ。平坦な道を進んでいると、後ろから来た車が並走し、私に声をかける。誰かと思えば、あれ、F君であった。F君、バスに自転車を載せるのを断られ、またタクシーもトランクに入らないと拒否され、いろいろ考えた結果、宮崎市在住の友達にヘルプを頼み、運よくヒマであった友達にレスキューに来てもらったのだ。
 自転車はばらせばバスに載せられるというわけでなく、輪行袋に収納しないと、載せられないそうだ。これは鉄道も一緒とのこと。…知らなかった。
 今回の教訓。
 (1) ロングライドのとき、輪行袋は必須の携帯品である。
 (2) 持つべきものは、親切な友達である。

【海岸線】
Sea_side_line

 それにしても日南海岸沿いに走る220号線、見晴らしがとてもよいのは利点なんだろうけど、いつまで行っても同じような風景である。曲がり角を曲がるたび、また同じような風景が広がり、風景をリセットしながら進んでいるような妙な感覚を受けてしまう。
 さすがに、この道は長すぎる。

【掘切峠トンネル】
Horikiri_pass

 海沿いの道にうんざりするうち、堀切峠トンネルに入る。峠のトンネルって、普通は峠の山のなかを、水平に掘っているはずだが、このトンネルは峠越えの道そのものの勾配で、どんどん上に登って行ってる変なトンネルである。そしてトンネルを越えたところが峠の頂点になっており、ここから下りとなる。
 堀切峠トンネルからは青島、宮崎市と人の多く住んでいるところを通ることになり、車の交通量も多くなってくる。道路の交差・合流も複雑になってきており、自転車で走るには楽しくない道となってしまう。

【宮崎市夜景】
Miyazaki_city

 日も暮れたころようやく宮崎市市街地に到着。あとは車と人に気をつけて、宿にたどりつこう。そして、光洋で宴会だ。

 本日の走行距離 125.0km

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March 05, 2009

山の中の蕎麦屋@かわぐち(霧島町)蕎麦会席

 私は山のなかで蕎麦屋を見つけると、ついつい訪れてしまうのだが、よく考えると街の中でも美味しそうな蕎麦屋を見つけると訪れてしまうので、ようは私は蕎麦が好きなのである。
 ところで山の中の蕎麦屋と、街の中の蕎麦屋には、明確な(たまに例外もあるけど)違いが一つある。街中の蕎麦屋は、酒のアテが、板ワサなり豆腐なり鴨肉なり卵焼きなり天麩羅なり、豊富に置いているのに比べ、山の中の蕎麦屋はそのたぐいのものを置いていることが少ない。これは山の中の蕎麦屋を訪れる者が車で来ることが多いことや、従業員が少ないことからそのてのものに手がまわらない、とかの理由によるものと思われる。
 私は蕎麦屋の素朴なアテで酒を飲むのは好きなのだが、山中の蕎麦屋ではそれが楽しめず少々残念に思っていた。

 さて、霧島周辺には蕎麦屋が数軒あるけど、どこも事情は同様で、酒のアテは少なく、酒を飲む雰囲気の店ではない。しかしながら、霧島の蕎麦屋「古式手打ち かわぐち」が、店の開店記念日の週は、一週間の期間限定で酒のアテを豊富に出す蕎麦会席を出すということを、2月に訪れたときに聞いた。
 人里離れた山の中の蕎麦屋で、酒肴を頂きながら酒を飲むのは、オツなものであろう。「かわぐち」の蕎麦は好みであるし、話のネタにもなることだし、行ってみることにした。

 蕎麦会席のメニューを、メニュー表より書き写す。

 <蕎麦会席>
 湯葉豆腐
 茸と蕎麦米の梅肉和え
 雲丹の蕎麦米時雨
 イクラの蕎麦米時雨
 蕎麦いなり
 里芋団子
 蕎麦の天麩羅
 蕎麦雑炊
 古式手打ちそば
 香の物
 デザート

 会席料理は、蕎麦の実をいろいろな調理法で用いた、さまざまな料理が出てきます。
 酒は「越の誉」の樽酒。店主が熟成の度合いによって、瓶に移しています。

 写真をいくつか。

【湯葉豆腐】
Yuba

 どこが湯葉なんだ、という突っ込みをいれたくなるような分厚い湯葉。大豆の香りが豊かで、もちもちした食感もたいへんよい。しかしこういう湯葉って、どうやって作るんだろう。

【山菜のごま和え 蕎麦雑炊】
Wild_plants

 こちらも香り豊かないい山菜を使っている。味はうまくアクを抜いていて、ほどよい上品さ。甘さ抑え目のゴマ和えとよく調和している。蕎麦雑炊は、すっきりとした鰹の出汁が印象的。

【蕎麦稲荷 蕎麦寿司】
Soba_inari

 良質な蕎麦を使っていると、こういう料理もできるなんだなあというもの。蕎麦の弾力ある食感を楽しめる。

【手打ち蕎麦】
Soba

 蕎麦は相変わらず、整った切り口で、出来上がりの形が美しい。喉越しの感触も良好。

 山の中の和料理にしては、予想以上にレベル高かったなあ。普段でも、こういう料理を出してよ、とか言いたくなるが、かかる手間ひまを考えると期間限定がやっとなんでしょうな。
 「かわぐち」は、家庭的な雰囲気のある店です。その料理は、まじめに、細心に作られており、でも、妙な緊張感なしに、やさしさ、おおらかさを感じさせてくれます。田舎の家を訪れたとき、そこで採れた材料を用いて、心をこめて、丁寧に料理をつくって歓待する、そういう雰囲気の満ちた会席料理であった。

……………………………………………………
霧島蕎麦処かわぐち 鹿児島姶良郡霧島町田口2638-47 TEL 0995-57-4321


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March 03, 2009

イタリア料理@星の空 3月

 2月に訪れてけっこう良かったので、月も替わったことだし、3月のディナーコースをまたも食べに行くことにする。コース料理は5000円・7000円のもの2種類だけかと思っていたが、1万円のコースもあるとのことで、それを選んでみた。
 前来たさい、代行を頼んでも問題ない距離と分かったので、今回は酒を飲める者と共に訪店。2人で飲んだのは、シャンパン ハーフボトル1本 白ワイン1本 赤ワイン1本。さすがに、一人で白赤一本ずつ空けるのは苦しい年齢になってきたので、酒を飲める者と行くと赤白両方が楽しめるのがいいです。(ハーフボトル1本ずつ空ければいいという説もあるが、ハーフは種類が少ないんだよなあ)

【前菜】
Ham

 パロマの生ハムに、野菜や果物を添えて。まあまあの質の生ハム。

【魚料理】
Spny_lobster

 前は手長海老だったけど、今回は伊勢海老を主役に、車海老や貝類、雲丹などを用いての、新鮮な海産物の盛り合わせ。素材がくっきりと出てくる系等の料理。

【海産物の包み蒸し焼き】
Boiled_marine_products

 これは2月にも出たもの。この店の看板料理みたいです。今度は白子などが加えられて、味がより豊かになっている。

【パスタ】
Pasta

 前回はリゾットだったので、今回はパスタを注文。茹で野菜にチーズを添えて。パスタの茹で加減はアルデンテ、オリーブオイルをからませて。本道をいくパスタです。

【肉料理】
Meal

 宮崎牛の薄切り、香辛料で味を調えて。よい牛肉を使っています。

 全体として、素材はいいけれど、どうもなにかしっくりこない。ときに素材が出すぎてしまい、料理としてのまとまりが悪く感じる。
 2月の7000円のコースのほうが素材と料理のバランスがとれていて、流れも良かった。たぶん、この店の主力が7000円コースあたりに設定されて、そこらあたりが店としても安定した料理を出せるのでは、などと思った。

 料理は、味付け、調理、盛り合わせ、どれも繊細かつ本格的なもので、南九州では、希少価値のあるイタリア料理であろう。予約のさい、マスターと料理内容についてよく相談すれば、さらに満足のいく料理を食べられると思いました。

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March 02, 2009

読書:「透明人間の納屋」 島田荘司 著

 島田荘司の新刊と思って買ったら、2003年にジュニア向けに書いたも単行本をノベルス化したものであった。この本、読んでいて文体・内容に少々違和感を感じたが、それで納得。

 本書では、女性の失踪事件が語られる。そのメイントリックは、密室もので、それにいくつかの謎がからむ。
 (1) はめ殺しの窓しかないホテルの一室、ドア前には作業中の人がずっといて、その人たちに気づかれずにドアから出ることは不可能。しかし、その部屋から忽然と一人の女性が姿を消した。
 (2) 女性は後に遺体として、海岸から発見される。しかしその場所はホテル(海に面している)からは、潮流の関係で、遺体がそこに流れることはあり得ない場所であった。女性は人為的あるいは超自然的に動かされたようだ。
 (3) 女性が亡くなる時間に、主人公は自分の部屋の中で、この時間にいるはずのないその女性を見た。しかも女性は、なぜか半透明の姿であった。

 以上のように、それなりに魅力ある謎が盛り込まれた事件ではある。

 ミステリの本道「密室もの」は、ありとあらゆるトリックが考え出され、もう新しいトリックはないだろうと言われている。それゆえ、現代の密室ものをテーマにしたミステリは、パロディか、トンデモものになるしかないとされているが、島田御大が久々に挑んだ密室ミステリーのトリックは、…つまらんな。
 それこそ、今までに考え出されたトリックをいくつか組み合わせただけのもの。御大は、トンデモ系が得意であったはずだが、今回は平凡すぎる。
 その他の謎(2)(3)についても、解答は、ふ~んとしか言いようのないもの。

 本書では、この事件に、朝鮮半島から来た工作員の物語が副筋(こっちが本筋?)として語られる。自らを、所在なき透明人間として認識し生きるしかなかった種類の人の悲劇を書いているつもりなのであろうが、…現実的には、彼らは意味もなしに災いをもたらし、そしていまだに災いが続いている悪霊のごとき存在だったのであり、ちっとも同情する気が起きなかった。
 島田荘司の社会ものは、まったく同情できない人たちを対象に書いているものが多いけど、これもその一種なんでしょうな。

 読後感はいいものではなかったが、退屈はせずに読み通せた。
 いつもながら、作者は筆力のある人だと思う。

……………………………………………………
読書:透明人間の納屋 島田荘司 講談社ノベルス

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March 01, 2009

寿司@近松(福岡市薬院)

 日曜日の昼は「近松」にて寿司を。
 福岡市は日曜に営業している美味しい寿司屋が少ないので、この店の存在は貴重である。

 12時スタート。8席のカウンター席は満席。流行っています。
 この店は照明を落とした暗めの店のなか、カウンターのゲタひとつひとつに照明が当たっていて、その明かりのなかに、握られた鮨が出てくるという、独特の趣向。

 つまみは、蛸の柔らか煮、空豆、ワカメ。
 鮨は、水イカ、鯛、平目昆布締め、サヨリ、コハダ、サヨリ、ヅケマグロ、白子焼き、車海老、蝦蛄、煮蛤、雲丹、穴子、玉子。追加で、貝柱と干瓢巻きを。
 まず水イカが素晴らしい。厚い水イカを、中の身を削ぐようにして捌き、それに包丁目を入れて、水イカ独自の弾力はわずかに残しながらも、全体として、とろけるような食感の鮨となっている。近松でしか見たことのない鮨です。
 〆ものの丁寧な調理もよく、マグロの身質も良好。煮蛤のやわらかさもほどよい具合。どれもこれも高水準の鮨。

 近松の寿司は、全力投球なのが特徴です。
 どの鮨も、細心の工夫と高度な技術が込められており、店主の「美味い鮨を握りたい」という精神がひしひしと伝わってくる。しかも、美味い鮨の追求のため、常にシャリやネタの調理法が変化しており、まさに「進化し続ける寿司屋」である。

 これほど美味い鮨を出していても、コストパフォーマンスはたいへんよく、(店主いわく、「夫婦二人でやっている店なので人件費がいらないから値段を抑えることができるのです」、とのこと)、おかげで交通の便がよいところでもないのに、客の多い人気店で、予約をとるのが大変。今回は直前の予約だったのに、予約ができて、じつにラッキーであった。

……………………………………………………
近松 福岡市中央区薬院2丁目6-19-1F TEL 092-716-5855

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