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February 27, 2009

読書:マリオネット・エンジン 西澤保彦 著

 西澤保彦の新刊短編集であるが、収められているのは近頃の作ばかりではなく、10年くらい前のものも含まれている。ミステリものは意識して除外されており、SFやホラーから6編選ばれている。

 最初の「シュガー・エンドレス」が、おもしろい。
 この編の主人公は甘いものが大好物で、甘いものを食べるときに、至高の幸福を感じる。
 しかし、しつけに厳しい母親は、息子が菓子や清涼飲料水などの甘いものを摂取することを許さない。母親が怖い主人公は、甘いものを渇望しつつ、それを得ることが出来ず不満の日々を送っている。
 主人公は高校中退のプータローで、忙しい母親に代わって、家庭の料理を担当している。
 ある日彼はひらめく。料理には味付けで砂糖を必要とするものがある。それなら、料理の味付けに使う砂糖を、少しずつ増やしていき、家族がその味に慣れていけば、ついには大量の砂糖を使った、すごく甘い料理を家で出すことが出来るに違いない。そうなれば、自分は正々堂々と甘いものを家庭で食べることができるではないか。なんというグッド・アイディア。
 主人公は、本人は自覚していなかったのだが、じつは料理の腕に関しては天才的なものがあり、砂糖が過剰でも、味付けのバランスを整えることにより、素晴らしく美味しい料理を次々に作り出すことが出来た。そして作中の解説にあるように、白砂糖は麻薬的魅力のある調味料なのであり、とんでもない量の白砂糖を使った料理は、主人公よりも家族の者に魅了を及ぼし、家庭にとってもう止められない官能的な料理となってしまった。そして、その結果、彼の料理は家族の健康に多大な悪影響を及ぼす。それどころか、その料理はレベルが高いことから、ワールド・ワイドな魅力を持ち、世界規模な災厄をもたらすことになる。

 以上が、だいたいのあらすじ。

 ただ甘いものを食いたいという欲望が、己の料理人としての職人魂から、いつのまにか砂糖を過剰に使った美味い料理を作りたいという欲望に昇華してしまい、それが周囲に深刻な悪影響を及ぼしてしまう。
 最初の動機のつまらなさと、それに対応する被害の甚大さの対照が印象的。
 作中述べられているように、白砂糖は過剰に取ると、じっさいに麻薬的な働きを持ってしまうそうで、小さな範囲では、現実に起きてもおかしくないホラー劇ではある。

 最初の短編の出来がよかったので、あとも期待したけど、その他の短編は、どれもこれも、ところどころいいところはあれど、全体としてはまとまりが悪く、着地がうまくいっていないものばかりな感じ。消化不良だな。
 どんな奇想天外なことを書いても着地はうまく決められる人だったんだけど、どうしたものなんでしょう。
 これは、西澤保彦の旬が過ぎたというわけでもなく、きちんとしたSFを書くには、作風が向いていないんでしょうな、と思います。

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マリオネット・エンジン 西澤保彦 著 講談社ノベルス

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