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February 2009の記事

February 28, 2009

2月のサーラカリーナ

 天気図を見ると、典型的な菜種梅雨の等高線になっていて、ぐずついた天気の日が続いている。週末も天気予報では、雨が降るようなので自転車での遠出は無理みたいだ。それでは、買いたいものがあったこともあるので、福岡に出て、買い物ついでにサーラカリーナで食事を楽しむことにする。

【アンティパスト】
Antipasto

 パルマの生ハム、五島の鯖の燻製、焼きハマグリ、黒米、穴子のフリット。
 いつものごとき、白い皿をキャンパスに画かれた、水彩画のような美しさ。

【鮑】
Abalon

 前菜は、鮑を焼いたものに、鮑の肝と白インゲンのピュレを和えて。
 純粋に鮑の美味さを引き出すような焼き加減が素晴らしい。白インゲンの香りも、鮑とよく調和しています。

【パスタ1 カラスミ】
Deied_mullet

 カラスミの味が、パスタそのものの旨さをさらに引き立てています。

【パスタ2 アンティチョーク・生ハム】
Artichoke


 
ほろ苦い、少し変化球っぽい味つけのパスタ。流れとしてはこれでいいと思う。

【パスタ3 白アスパラガス・トマト】
Whiteasparagus


 
 今回の白眉のパスタ。白アスパラガス、それにソースから立ち上る香りが尋常でない香ばしさ。このパスタばかりは、今井シェフが小走りで駆けて来て、テーブルに置いてくれました。パスタそのものの食感、ソースの味の奥深さ、白アスパラの歯ごたえ、すべてが素晴らしい。

【北海道の子羊】
Lamb

 パスタシリーズを一休みして、メインの肉料理を。

 この店は素材にとてもこだわっており、そのこだわりが分かる良質の子羊。かみしめると、じみじみと肉そのものの旨さが口中に広がる。

【パスタ4 浅蜊と蛤 】
 Clam

 〆のパスタは浅蜊と蛤。
 浅蜊の個性をより重視したもので、まず潮の香りを感じ、よく煮込まれた浅蜊のスープが存在を強く主張している。コースの〆のパスタとして、ふさわしい出来。


 全コースを通じての、京都の和料理にも似通った、研ぎ澄まされた、完璧さを追求するような、緊張感のある料理は、もはやイタリア料理という範疇を超えた、今井シェフの独自の創作料理に思えます。
 本日も、十分に今井シェフの芸術のごとき料理を堪能させていただきました。

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February 27, 2009

読書:マリオネット・エンジン 西澤保彦 著

 西澤保彦の新刊短編集であるが、収められているのは近頃の作ばかりではなく、10年くらい前のものも含まれている。ミステリものは意識して除外されており、SFやホラーから6編選ばれている。

 最初の「シュガー・エンドレス」が、おもしろい。
 この編の主人公は甘いものが大好物で、甘いものを食べるときに、至高の幸福を感じる。
 しかし、しつけに厳しい母親は、息子が菓子や清涼飲料水などの甘いものを摂取することを許さない。母親が怖い主人公は、甘いものを渇望しつつ、それを得ることが出来ず不満の日々を送っている。
 主人公は高校中退のプータローで、忙しい母親に代わって、家庭の料理を担当している。
 ある日彼はひらめく。料理には味付けで砂糖を必要とするものがある。それなら、料理の味付けに使う砂糖を、少しずつ増やしていき、家族がその味に慣れていけば、ついには大量の砂糖を使った、すごく甘い料理を家で出すことが出来るに違いない。そうなれば、自分は正々堂々と甘いものを家庭で食べることができるではないか。なんというグッド・アイディア。
 主人公は、本人は自覚していなかったのだが、じつは料理の腕に関しては天才的なものがあり、砂糖が過剰でも、味付けのバランスを整えることにより、素晴らしく美味しい料理を次々に作り出すことが出来た。そして作中の解説にあるように、白砂糖は麻薬的魅力のある調味料なのであり、とんでもない量の白砂糖を使った料理は、主人公よりも家族の者に魅了を及ぼし、家庭にとってもう止められない官能的な料理となってしまった。そして、その結果、彼の料理は家族の健康に多大な悪影響を及ぼす。それどころか、その料理はレベルが高いことから、ワールド・ワイドな魅力を持ち、世界規模な災厄をもたらすことになる。

 以上が、だいたいのあらすじ。

 ただ甘いものを食いたいという欲望が、己の料理人としての職人魂から、いつのまにか砂糖を過剰に使った美味い料理を作りたいという欲望に昇華してしまい、それが周囲に深刻な悪影響を及ぼしてしまう。
 最初の動機のつまらなさと、それに対応する被害の甚大さの対照が印象的。
 作中述べられているように、白砂糖は過剰に取ると、じっさいに麻薬的な働きを持ってしまうそうで、小さな範囲では、現実に起きてもおかしくないホラー劇ではある。

 最初の短編の出来がよかったので、あとも期待したけど、その他の短編は、どれもこれも、ところどころいいところはあれど、全体としてはまとまりが悪く、着地がうまくいっていないものばかりな感じ。消化不良だな。
 どんな奇想天外なことを書いても着地はうまく決められる人だったんだけど、どうしたものなんでしょう。
 これは、西澤保彦の旬が過ぎたというわけでもなく、きちんとしたSFを書くには、作風が向いていないんでしょうな、と思います。

……………………………………………………
マリオネット・エンジン 西澤保彦 著 講談社ノベルス

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February 22, 2009

寿司@一心鮨光洋

 雨のなかのサイクリングを終了。30キロ程度しか走っていないが、それなりに腹は減る。今日は光洋に行って、たらふく鮨を食うことにする。
 宮崎市は今週はWBCキャンプのおかげで、たいへんな人出でにぎわっていたのだが、さすがに最終日の本日は落ち着いているであろう。店主に今週は繁盛していたでしょうと聞くと、残念ながら、WBCの恩恵にはあずかれず、通常どおりの客の入りであったそうだ。場所が悪いのか、客層がずれていたのか。でもWBC参加の選手たちは訪れていたそうである。

 つまみと鮨をお任せで頼む。

【白子焼き】
Urchin

 ふっくらした河豚の白子を海老芋に乗せて。
 九州で海老芋を見るのは珍しい気がする。
 河豚にはウニを和えている。白子とウニの組みあわせは、どちらも個性の強い食材なので、調和しなさそうに思えるが、このウニはおとなしめの味だったので、うまく白子を引き立てていた。白子のもっちりした食感と、エビ芋のほくほくした食感の対比も面白い。

【甘鯛兜焼き】
Bream

 甘鯛の兜焼きというのもあんまり見ない料理だなあ。初めて食べる気がする。
 通常の2倍はありそうな巨大な甘鯛を用いての兜焼きで、ここまで来るとさすがに食べ応えがある。このサイズの甘鯛の松傘焼きというのも、一回くらい見てみたい。一人で食うのは無理だろうから、多人数で来たときなど。

【赤貝】
Ark_shell

 赤貝は閖上のもの。これだけ肉厚だと、堂々と閖上産ですと主張できるレベルの赤貝です。噛めば弾力よい歯ごたえとともに、海の味が口いっぱいに広がってくる。


 光洋は3月から、午後10時~午前1時に、店主一人で仕切る、新しい形態をとるそうだ。その営業時間は、店の名前を「趣味鮨 一(はじめ)」と変え、カウンターのみの営業となる。いわゆる鮨の名店に多い、店主一人で仕込み、握るスタイルとなるわけで、店主のより望むかたちで鮨を供することが出来るようになる。なかなか思い切りのいい話である。ただし問題点は営業時間か。午後10時は、普通の人にとっては、鮨を食べはじめる時間としては、ちと苦しいのでないかな。午後10時からとなると、どこかで飲んでから、「よし、次は鮨でも食いに行こう」との乗りで、流れてくる客が多くなりそうな気がする。というか、そういう客をある程度あてにしないと、客数の確保は難しそうだ。そうなると、場所がちと悪い。飲み街である橘通りから離れているだけに、あそこで飲んでいた人たちが来るには距離がありすぎる。普通は来ない。
 となれば、飲んだあと、「よし、次は店主の鮨が食いたい」という人がメインに集まる鮨屋になるんだろうなあ。…なんか、マニアックな鮨が楽しめそうだ。

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安久温泉探索~金御岳

 せっかくの休日なのに、天気はよくなく、午前中は曇りで午後は雨とのこと。こういうときは映画でも観に行こうかなとも思うが、ネットで調べると、食指をそそられる映画が上映されてなく、ならば雨が降るまで、近場をサイクリングしてみようか。
 ならば定番の金御岳~鳶ヶ岡方面。以前に鼻切峠から鳶ヶ岡に登ったけど、その逆のコースで平地から鳶ヶ岡に登ってみることにする。鳶ヶ岡への平地からの入り口は分かりにくく、場所はよく覚えていないが、とりあえずこのへんだろうと思った道を曲がり、山に向けて行く。すると「光明寺」なる寺があって、そこがこの道のほぼ終点になっていた。

【光明寺】
Temple1

 派手な仏像やら仁王像やらが立ち並ぶ、にぎやかな雰囲気の寺である。
 寺なのに、なぜか傍に鳥居があり、小高いところに社があるみたいだ。

【頂上からの眺め】
Temple2

 せっかくなので上まで登ってみる。高いところがあると、つい登りたくなる男なのです。
 眺めはこんな感じ。よく手入れされている植林がきれいだな。

【農道】
Road

 元の道に戻り、鳶ヶ岡あたりを目指す方向へバイクを進める。あじさいロードなる名前がついており、たぶん広域農道なんだろうけど、じつに立派な道路だ。路面も道幅も高水準。おしむらくは、あまり使用する人がいないみたいで、車はまったく通っていない。宮崎では、もう見慣れた風景であるが。
 インフラ未整備と県知事がいかに力説しようが、宮崎の道路整備はとても進んでいると思うなあ。
 ここを進めると、いつのまにか安久温泉に入っていってしまった。ここは鼻切峠に行くさい、いつも横目で見ていたところで気にはなっていた。それで、せっかくなので探索してみることにする。自転車の一番の魅力は、この機動力だな。車で移動していると、あちこち立ち寄る気はしない。

【標識】
Uresino_village

 右に行けば「うれしのの里」との標識につられ、とりあえず「うれしのの里」を目指す。途中に元旅館のような建物があり、そこに「安久温泉」と書かれてある。もっとも温泉の文字は消去されていて、もはや温泉として機能していない模様、今は真向かいの、湯治宿みたいな建物「養浩館」が温泉場となっています。安久温泉は、温泉紹介本などでは、秘湯のように紹介されているけど、雰囲気はたしかに秘湯だが、地理的に秘湯じゃないな。この奥に「うれしのの里」があるはずなので、進めていくとやがて山の中に入り、養鶏場に達したところで、林道になってしまった。「うれしのの里」なんて、ねえぞ。

【安久温泉】
Yasuhisa_hot_spring

 道を元に戻り、先の「うれしのの里」の標識のあるところに戻り、「ごんたの館」なる標識の指す方向へ行く。その方向には、六角形の特徴ある建物が見えるので、たぶんあれが「ごんたの館」であろう。

【六角の館】
Palace

 その建物に到着して、これが「ごんたの館」であろうと思ったら、今は使っていない電光式の看板があり、そこに「うれしのの里」と書かれてある。ここが「うれしのの里」だったのだ。標識は、方向がまったく間違ってた。

【ごんたの館】
Hot_spring2

 「うれしのの里」からは渡り廊下が、対面の建物へつながっており、そこが「ごんたの館」であった。おそらく湯治宿だったのだろうが、今は営業をやめているようだ。人の住む気配はほとんどなかったが、まだ廃墟にはなっていない。
 結局、安久には3軒温泉施設があったみたいで、しかし今は1軒しか営業を行っていない。各建物の痛み具合からは、廃業したのはそれほど昔の話ではないようである。おそらくは、近年この地でたくさん建てられた、おしゃれできれいな(でも湯は凡庸な)公営温泉センターみたいな施設に客を取られたのでは。こうして地方の貴重な文化が、衰退していくわけか。

【湯屋谷の滝】
Fall

 「ごんたの館」を過ぎて、さらに道の奥に進み、国道にも標識のあった「湯屋谷の滝」へ向かう。道は林のなかに入っていき、細くなっていく。難路であり、普通車でここを通るのは大変に思える。やがて舗装が途切れ、荒れた林道になってしばらくすると、滝への入り口が見えてくる。50mほど下ったところに滝はある。落差10m程度、流量も少ない滝だ。来る苦労のわりには、滝の規模はたいしたことなく、滝マニアくらいしか訪れることはない類の滝と思われる。

【金御岳登山道】
Entrance

 まだ雨は降ってこないので、ここから国道222号線に戻って、金御岳に登ることにする。
 金御岳には登るルートがいろいろあるけれど、ラブホテル街のそばから出ている登山道が一番傾斜が急である。距離は短いけど、登る高さはかなりあり、平均斜度は10%を余裕で越えていると思われる。

Park

 途中の看板のあるところが、行程の半分くらいに位置する。ここからは傾斜も少しはゆるくなる。でも並の坂ではなく、スタンディングでないと登っていけない。都城の舗装道で、この金御岳登山道が一番傾斜がきついのではないだろうか。

【山頂下広場】
Park2

 山頂下の広場にとどりついたところで、雨が本降りとなってきた。雨具を着て、さっさとサシバ林道経由で下っていった。

本日の走行距離 32.0km

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February 21, 2009

高千穂河原~えびの高原~小林

 雨の降る日が続いていたが、本日だけは高気圧が九州をおおい、素晴らしい快晴。
 自転車で遠出をしたくなる天候である。今日は100kmくらい走ってみようか。ついでに1000メートルくらい登ってみよう。えびの高原が標高1200mなので、そこを目的地とすると1000mは登れる。霧島を周回するルートをとれば、全行程100kmくらいにはなるであろう。

 いざ、発進。
 外は本当に素晴らしい天気である。
【高千穂峰】
Mttakachiho

 霧島バードラインより眺める高千穂の峰。雲ひとつない晴天のもと、堂々たる山容がでんと据わっている。
 県境を越えたところで、いった下りになる。昼飯時なので、蕎麦屋「かわぐち」で腹ごしらえをすることにする。

【手打ち蕎麦 高千穂】
Shop2

 霧島神宮に行く道をいろんな標識がある道を左折すると、まずこの店が現れる。
 蕎麦を挽き、打っている人形(オートマタ?)がトレードマークの店で、山のなかにこのような妙なものがあるのは、なかなか見事な不思議物件ぶりである。
 この店の蕎麦は、かなり特殊な蕎麦であって、「うどんのように太くて、腰がある」蕎麦が好みの人にはお勧め。駐車場にはよく車が停まっており、ま、そのような蕎麦が好きな人がけっこういるみたいです。

【かわぐち】
Shop

 「かわぐち」は、「高千穂」の奥から少し左に曲がったところにあります。霧島に登山するときは、私はたいていここで昼飯を食っている。

【月替わり蕎麦】
Soba

 この店は、メニューにざる蕎麦のほかに、月替わり蕎麦がある。
 蕎麦というものは、「蕎麦・つゆ・薬味」で完成している食い物であり、ラーメンやカレーみたいに他のものを加える余地はない、と私は思うのだが、店主は通常の蕎麦を供するだけに飽きたらず、種々の食材を加えた創作系蕎麦を月替わりで出している。
 私としては、月ごとのものをぜんぶ食べたわけじゃないから断定は出来ないけど、これって、店主の道楽以上の域には達していないと思う。それでも、ついつい頼んでしまうのは、ヒットするものがあるかもしれないという期待と、それに怖いものみたさ…なのかなあ。
 2月は「霙蕎麦」とのことで、蕎麦に、豆腐・葱・蕪の卸しを合えたもの。蕪を霰に見立てているらしい。蕎麦は美味しいし、豆腐も美味しいけど、敢えて混ぜる必要性なさそうだな。1+1が2以上にはなっていない、と思ふなり。

 店主としばし雑談したのち、(今年で開店八周年だそうだ)、再出発。

【天孫降臨への道】
Entrance

 この霧島スカイライン入り口から、まずは高千穂河原を目指す。
 高千穂河原は12月に来たさいに、疲労で途中で自転車が漕げなくなった、いやな思い出があるけれど、今回はグライドがカンビアーゴに変っているので、バイクの性能が格段に上がっている。楽勝とはいわないまでも、高千穂河原までは普通に行けるであろうと予想する。

【高千穂河原】
Takachiho_riverbed

 平均斜度7%の坂道を7kmたんたんと漕いでいき、予想通り 途中で足をつくこともなく、高千穂河原に着。やはりバイクの性能が上がると、楽できるなあ。
 ほんとは脚力を向上させるためには、重いグライドで登ったほうがいいのだろうけど、人間って、一回楽を覚えると、もとには戻れないんだよなあ。もう、グライド乗りたくない。

【霧島スカイライン】
Fall

 高千穂河原からはいったん150mほど下る。せっかく稼いだ高度がもったいない。
それから登り返しの道となる。この道沿いは広葉樹が多いので、春や秋はきれいであるが、今は冬ゆえ枯木のみだ。

【大浪池登山口】
Onami_pond

 登り返しのときから、劇坂をいくつも越えるけど、ここまでくればほぼ一段落。標高は1100mくらい。ここからは坂もゆるくなり、林のなかを、ぴょんぴょんと飛び跳ねる子鹿たちを眺めながら、快適に自転車を飛ばす。

【えびの高原】
Ebino_hights

 ようやくにして、えびの高原に着。「足湯の駅」なんて設備が新設されており、観光客および登山客が、足湯を楽しんでおります。

【韓国岳】
Mt_karakuni

 えびの高原からの、韓国岳の眺めは、勇壮そのもの。ここで眺める韓国岳は、双耳峰ふうの山容になり、二つの巨大な耳を、青空に突き立てています。

【不動池前】
Kannon_pond

 霧島公園線の最高点は、さっきのえびの高原ではなく、ここからさらに韓国岳に向けて進むこと約1kmにて到着する、不動池前である。標高1250m。おそらく舗装道としては、九重の牧ノ戸峠に次いで、九州で2番目に高い場所だと思う。
 ここから、小林方面に向けて、一気に下っていく。
 しかし下る途中、問題出現。すごく寒いのである。今年の2月は暖冬だったので、なめきっていたが、今日は寒かったのだ。自転車で登り道を漕いでいるときは、体温上がるので気にならなかったが、ただ下るだけの道では、吹き付ける寒風と、気温の低さにより、身体が凍え上がってしまう。だいたい、高度1000mを越えているんだから、それだけでも気温が下がるのに加え、こちらの斜面は北向きなので、日もささないので余計に気温が下がる。両手が冷たくなり、ブレーキ握る力も出なくなってくる。防寒具、持ってくればよかった。
 寒い、寒いとふるえながら、なんとか平地まで出る。ここまでくれば、日が当たり、なんとか身体に温度が戻ってくる。太陽って偉大だ。

【みやまどり苑】
Miamadorienn

 不思議物件の宝庫のような、みやまみどり苑を横目に見て、自転車を進めていく。本来は御池まで登り返して、そこを少し過ぎたところの広域農道を下る予定であったが、登るのはいいけど、日暮れが近づき、気温がどんどん下がるなか、とても御池から下っていく気力は出ず、平坦な国道221号線を使い、おとなしく帰宅した。

本日の走行距離 110.2km

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February 20, 2009

山の中のカレー屋@ドワーフ(阿蘇郡高森町)

【ドワーフ】
Shop_2

 阿蘇根子岳の麓、鍋の平の近くに、別荘が集まっている地区があり、そのなかにカレーの店ドワーフがある。標識などなく、かなり奥まったところにあるので、店を探すのは難しい。私ももう一度道に迷わずたどりつく自信はない。
 このような地で、一般客を相手にカレー店が成り立つとも思えず、たぶん別荘地の人たちを主に相手にしている店なのではないでしょうか。

 「ドワーフ」という店名、おそらく「指輪物語」から来ているものと思われるが、店のなかにそれをにおわせるものはなし。少なくとも、髭面の店主が斧を片手に現れるというような、ちょっと期待したシーンは出現しなかった。期待するほうがおかしいか。

【エビフライカレー】
Curry_2

 カレーは、トッピングをカツやエビフライから選ぶもの。辛さは一定である。
 店主は熊本市のレストランで料理長をやっていたとのことであるが、そこから予想される欧風のものとは異なり、野菜をじっくり煮込んだ、甘めで柔らかな、家庭的なカレー。小国のBEARもそういうタイプのカレーだったから、阿蘇の人好みのカレーなのかな。

【日暮れ】
Shop2_2

 日が暮れると、山小屋ふうの店に明かりがともり、周囲の風景と溶け合って、いい感じとなる。しかし、すでに「closed」の看板が。
 閉店の早い店のようですので、夕方訪れるなら早い時間に行く必要があるようです。

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February 19, 2009

山の中のカレー屋@BEAR(阿蘇郡小国町)

 カレー屋と蕎麦屋はけっこう辺鄙な山のなかでも存在しているので、山のなかで見かけてもさほど驚くことはないが、さすがに小国のカレー屋「Bear」だけは、少々常軌を逸した場所にあり、…好みである。
 おそらく九州のカレー屋では、この店が最も山の奥に存在している店と思われる。
 山奥にありすぎるゆえ、店主を店を建てるさい、山小屋を建てる要領で、みずから建築資材を運んで、そして組み立てた、じつに味のあるハンドメイドの店なのだ。

 店には「ファームロードわいた」から分かれた舗装道を、Bearに至る標識に導かれ、山の方向に向かっていく。そして未舗装路に入り、そこの急坂を登っていくのであるが、この道がハードだ。横には沢が流れており、路肩は一部崩れていて、そして道が狭いので下手をすると沢に落ちてしまう危険がある。おそるおそる車を進めていくうち、小高い丘に出て視界が広がり、ようやく山小屋風の店が見える。

【Bear】
Bear

 手作りの店。建築材は周囲の林の木も使っているみたいで、切り株がいっぱいあります。涌蓋山の山麓にある店なのであるが、北側は林が邪魔して、展望が利かないのがちょいと残念。

【テラス】
Terrace

 店にはテラス席もあり、暖かい日は外で食べるのもいいでしょう。こちらは林が整理され、眺めがいいです。阿蘇小国の雄大な風景が広がっています。

【カレー】
Curry

 カレーは玉葱と野菜をじっくりと煮込んで、甘味と旨みが広がるもの。スパイスもほどよいぐあいの利き具合で、穏やかな味でまとめています。

 店主は福岡市でカレー屋を開いていたのだが、大自然のなかでカレー屋を営みたいと決意し、この山林を買って、店を建て、以前と同じ名前をつけて開店したとのこと。その実行能力ってすごいなあ。
 BEARは田舎の店にしては珍しく、夜9時まで営業している。なぜかといえば、周りに明かりがなにもないこの地では、夜になると、漆黒の夜空には満点の星がまたたき、それが絶品だそうだ。「今度は夜にも来てくださいよ」とのことであるが、あのダート道を夜中に車で通るのはいやだなあ。

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BEAR 阿蘇郡小国町北里1308-6-9 TEL 0967-46-6177
    開店 11:00 閉店 21:00

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February 18, 2009

アルコール依存症の恐怖

 中川昭一氏が泥酔による醜態をさらしたことによって、財務相を辞任する羽目に陥った。各先進国の財政担当者トップが集まる場での会見が、国辱ものであり、国の威信を激しく損ねたというのがその理由のようである。
 …国辱ねえ。隣の大国ロシアにおいて、財務大臣どころか、国のトップである大統領が正真正銘のアル中であったのはそれほど昔の話ではないはず。

 アル中であろうが、なかろうが、仕事をきちんとやれればべつにいいように思うけど。今度のG7での中川氏の働きがろくでもないものであったのならいざ知らず、その面の話は聞こえてこず、たかがTV会見の失敗程度で、まだ若い前途のある政治家の政治生命を絶つのは感心しません。
 もっとも、泥酔してTV会見に出られない状態が分かっているのに、氏を会見に出す、周囲の者の危機管理能力のなさにはあきれます。もしかして周囲が止めるのを、本人がきかずに出演したというのなら、論外の話ではあるが。

 これはよく誤解されているけど、酒を止められずに、自分の健康・生活までを破壊するまで飲んでしまうアル中(正確にはアルコール依存症)は、本人の意思の弱さにより生じるものではなく、純粋なる病気なのである。
 アルコールを長年飲んでいるうち、脳のなかに何かのスイッチが入ってしまい、ONになってしまうと、飲酒を止めることができなくなってしまい、際限なく飲み続けてしまう。当人は飲みすぎて、他人に迷惑をかけることを自覚しており、そのことに反省・後悔をするものの、もはやスイッチが入ってしまっているので、制止することができない。
 この怖さは、吾妻ひでおや西原理恵子の漫画で、微にいり細にいり、克明に画かれており、私のような酒飲みは読んでいて、おそろしくなってしまう。

 酒を飲む人はたくさんいるけど、多量に飲めばアル中に必ずなるというわけではなく、アル中になるかならないかは、運としかいいようのない、脳内のスイッチのONOFFにある。そのスイッチの入る確率は、4~5%というから、決して低い確率ではない。運悪くしてこのスイッチが入ると、悲惨な人生が待っているわけで、…酒って、けっこうこわいぜ。

 客観的に考えて、私は大酒飲みに分類される種類の人間なので、時限爆弾かかえて生きているようなものである。いや、もしかして知らずに、すでにアル中になっているのかもしれない。

 不安になり、ネットにある「久里浜式テスト」で自分のアル中度をチェックしてみる。
 …幸いながら、私はなんとかアル中にはなっていないようだ。

 とりあえず、安心して、これから飲みにでかけることにする。スイッチが入らぬことを祈りながら。
 酒ほど人生を豊かにしてくれるものもないとは思うが、その価値と同程度に付き合うのに厄介な存在なのである。

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February 17, 2009

イタリア料理@リストランテ「星の空」(都城市菓子野町)

 見習い職人F君がひょんなことから「星の空」のオーナーと知り合いになり、ぜひとも食べにきてくださいとのことで先週訪れたところ、たいへん美味しかったという。
 「星の空」、名前は知っていたけど、けっこう辺鄙なところにあり、車で行くとワインが飲めない。それゆえ行くことはなかったのだが、都城一美味いイタリア料理店という噂もあり、F君の話を聞いて、やはり一度は訪れるべきだと思った。とりあえず酒を飲まない(飲めない)ものを誰かつかまえて運転をさせ、行くことにしよう。人気店で、予約を取るのが大変らしいゆえ、F君に予約を頼む。「了承。自分も参加ですね」との言葉に、「待て、なんでおれがイタ飯屋に野郎を連れて行かないといけないんだい」との私の当然の返しに、いささか不満顔。それでも無事に予約がとれ、ディナーへと。
 …ちなみに、和食屋とか寿司屋なら、野郎を連れて行くのにぜんぜん抵抗はないが、レストランに野郎を連れて行く気にまったくならないのは何故なんでしょうね。日本の洋食屋が男女で食べるような仕組になっているからかな。(たま~にレストランで男ばかりで食べている席をみかけることがあるけど、そういう人たちはすごく食に詳しく、またそういう席が成り立つ店って、とてもレベルが高いのが普通だ)

 それはさておき。
 この店、事前に地図で調べていても、一発でたどり着くのは困難です。標識もないし、県道から店が見えるわけでもない。それで一回行き過ぎてコンビニ近くまで行ってしまったところで引き返し、このへんだろうと思う道を曲がり、なんとか無事到着。
 夜なのでまわりの風景はよく分からなかったけど、敷地は広く、植えられた木々は林となっており、店も広く、オーベルジュの雰囲気があります。

 ディナーのコースは5000円と7000円のがあり、今回は7000円のものを頼む。
 そのうちのメインのものを。

【手長エビ】
Skampi

 都城でこのサイズの立派な手長エビが食べられるとは。新鮮で、ナマのまま食べるエビに、香草、ソースで味付け。それに炙ったタイラギが添えられています。見て分かるように、美しい料理です。

【魚介類・野菜の蒸し焼き】
Bouillabaisse

 この店の看板料理みたいです。エビ、アサリ、イカ、サーモン、ブロッコリー、エリンギ等々が、紙で包まれて蒸し焼きされ、いいぐあいにそれらの旨みが混ざったスープができて、焼き物というより、ブイヤーベース風のすべてがうまくまとまった料理となっています。とくにスープがよく、パンをひたしてぜんぶ食べます。

【宮崎牛・リゾット】
Beef

 肉料理は宮崎牛。当たり前のことながら、そのへんの焼肉屋よりずっとよい牛を使っています。その牛を、スープのしみた大根と、リゾットがしっかり支えています。

 素材も、調理もなかなかの高レベル。こういう店が宮崎は都城の山の中にあるのは面白い。
 料理は、全体として、ほどよい華やかさを感じさせます。なにかの記念日や、祝い事があるときなど、とくに適しているのではないでしょうか。
 部屋のつくり、インテリア、雰囲気もセンスたいへんよし。たぶん風景も良いであろうので、次は日が長くなってディナーでも、風景が窓より眺められる時期に来たいと思いました。

……………………………………………………
リストランテ「星の空」
宮崎県都城市菓子野町1070-17  TEL:0986-37-2992

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February 16, 2009

土産@バレンタインデーの義理チョコ

Valentine


 バレンタインデーの義理チョコも広義の意味では土産になるのであろうか。よくわからんが、とりあえず、土産のカテゴリに入れておく。
 2月14日は、私のごとき生活活動範囲の広くもない人間でも、世のしがらみから義理チョコをいくつかもらうことになる。このブログは私の備忘録的役割をはたしているものゆえ、いつしかどこかへ消えていく義理チョコを、消える前に写真に撮っておく。
 モロゾフ、ロイス、札幌グランドホテル、フランス製と、けっこう本格的なチョコばかりだな。こんなの都城のどこに売ってるんだろう。ミエル? 大丸?

 義理チョコばかりが世間を席巻しているけど、本来は、誰でも知っているように、本邦において、バレンタインのチョコって、内気な女性の愛の告白のためにものとされている。そして、そういう本来の使い方として用いられているチョコもごくわずかには、あると思う。相思相愛の関係だったが、お互い奥手で言い出せず、でもバレンタインデーで勇気を出して告白し、それが見事に実り、晴れて恋人の関係となる、世の中広いからそういうことを経験した若いカップルも、実際にいるのだろうな。おじさんとしては、うらやましく思うなり。

 そして、もしチョコに気持があるのなら、バレンタイン用のチョコとして生まれた以上、恋が成就するかどうかはともかくそういう本来の用い方に使われたいでしょうな。
 そういう甘酸っぱくも微笑ましい用い方とは縁がなく、義理チョコに使われるはめになった、このチョコたちにちょっと同情。

 …さて、このチョコどうしたものか。私はチョコレート食べないし。
 ふだん甘いものを貰ったら、職場の女の子たちに配るのだが、こればかりはその手は使えない。
 結局は、例年のごとく、職場の冷蔵庫に放り込んでいて、自然に誰かが食ってなくなるのを待つのみか。

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February 15, 2009

読書:幕末史 半藤一利 著

 日本の歴史のなかでは、幕末が、個性豊かな人物が輩出し、資料も多く残っていることから、読んでいて最も面白く感じる。
 近頃出版された半藤一利氏の「幕末史」が評判がよいので、読んでみた。

 冒頭、著者は自らを反薩長史観の持ち主として、明治維新を偉大な改革などはなく、薩長一派の暴力革命と決め付ける。また西郷隆盛は毛沢東のような人物であり、坂本竜馬には独創的なものはない、と論じる。
 ふ~ん。
 明治維新は必要でもない無駄な血を大量に流した暴力革命であり、西郷隆盛は日本史上まれにみるマキャベリストであり、坂本竜馬の行動は師匠の勝海舟の考えに基づくもの、というのは、幕末史の研究が進んだ現代では、ごく常識的な意見となっているのではないだろうか?

 冒頭部読んだだけで、続きを読む気が失せたが、せっかく買ったので読み進める。
 全体的に漫談調の語りで書かれており、分かりやすく、読みやすい。幕末史の概要を知るには、いい入門書のような気がします。
 ただし戊辰戦争について章で、東北諸藩が薩長主体の新政府に対し、「成りあがりどもに対して、懲らしめてやる」との意思から国内戦争を決意したと書いているけど、をいをい、それはないでしょう。

 戊辰戦争(東北戦争)の開戦の流れは普通は以下のようになっている。
 京都で守護職をやって治安を守っていた松平容保が、新政府より「朝敵」に指定される。どう考えても100%朝敵であるはずはない容保が、朝敵との罪で首を切られるのは理不尽である。同情した仙台藩を盟主とする東北諸藩が容保公の助命を行うが、新政府は聞き入れない。それどころか、新政府の東北を管轄する総督府の長、世良修蔵とその一派は仙台で乱暴狼藉のかぎりを尽くし、それに切れた仙台藩が世良を処刑する。総督府のトップを殺したからにはもう引き下がれない。東北諸藩は奥羽列藩同盟を築き、新政府への戦争に踏み切る。
 要するに戦争などする気もなかった東北諸藩が、新政府の理不尽な要求と、総督府トップ以下の無礼な振る舞いによって、切れてしまい、望んでもいない戦争に巻き込まれてしまったというのが戊辰戦争でしょうに。

 このときの東北の恨みは強いものがあった。福島白石には世良修蔵の墓があり、その墓には「賊軍により命を失ってしまった云々」の文字が刻まれていたのだが、その土地の人によって賊軍の文字は削り取られている。地元の気持ちもよく分かるので、そこはいまだ修復されていない。
 歴史好きの私は、わざわざ現地まで行って、世良修蔵の墓を見てきた。たしかにその文字を削り取られた墓碑は、当地の人の無念と恨みを、しっかりと感じさせるものであった。

 話はもとに戻るが、「幕末史」は多くの個性豊かな人物が活躍し、それゆえ複雑でごちゃごちゃしている幕末史を、うまく読みやすくまとめている書であり、これから幕末史を知りたいと思う人に、勧められる本である。

 ついでながら、幕末史について今面白いのは、週間新潮で連載している野口武彦の「幕末バトルロワイヤル」です。幕末に活躍する中心人物から少し外れた人たちが多く登場し、その右往左往するさまを、観察力鋭く書いており、面白いし、教えられることが多いです。

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幕末史 半藤一利 新潮社

世良修蔵についての参考web

世良修蔵暗殺事件の周辺
世良修蔵

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February 14, 2009

ラーメン@長浜ラーメン いってつ

Ittetu


 九州のラーメンは豚骨ラーメンが主流であると思うけど、熊本系豚骨は、臭いが強いのと麺が太いので、「濃いラーメン」となってしまい、私は苦手である。宮崎系ラーメンも濃いラーメンの系等の店が多いように漠然と思っている。ま、都城駅前の「かどや」くらいの濃いさになると、その味の豊かさ・クリーミィさが個性になって、あれはあれで素晴らしいものだと思うが。

 私は豚骨ラーメンでは博多ラーメン、いわゆる長浜ラーメンが好きである。ほどほどの臭いに、ほどほどの味、歯ごたえある細麺、少なめの具財で味をまとめるバランスの良さ。全体として、食べやすく感じる。
 もっとも長浜ラーメンと名がついても、スープが駄目、麺が駄目、両方とも駄目という店は本場福岡でもいっぱいあり、福岡より遠く離れた宮崎で、きちんとした長浜ラーメンが食べられれば、それは有り難いことであり、そして、きちんとした長浜ラーメンを出す店が現にある。

 国道10号線の「長浜ラーメンいってつ」がそれで、丁寧につくられた豚骨スープは、やわらかく奥ゆきのある味で、麺も本場風の細麺。私は長浜ラーメンは固さはバリカタが好きだか、いい麺でないと、バリカタでは食えたものではないけど、この店はバリカタが十分に美味い。
 本日もバリカタでラーメンを頼み、替え玉も注文する。うまかった。

 宮崎での福岡ラーメンであるが、この店のラーメンを美味いと思う人は多く、いつも客がいっぱいの店で、狭い店のなか多くの従業員がきびきびと働いています。

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長浜ラーメンいってつ

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母智丘公園~くまそ広場

 2月の半ばというのにポカポカ陽気。どう考えても4月なみの気候。地球温暖化進行中か。
とりあえず自転車日和なので、近場を走ってみることにする。

【母智丘公園へ】
Mochio_hill

 母智丘公園入り口から坂を登っていく。う~む、ペダル漕いでいると暑くなる。ほんとに今は2月なのかい。
 母智丘のゴルフ場への入り口が見えると最高点近く。ここから多目的広場まで下っていって、それからくまそ広場まで登り返す。今日はいい天気なので、熊襲広場は家族連れでにぎわっていました。

【くまそ広場】
Kumaso_park

【桜】
Cherry

 母智丘名物の桜は、ソメイヨシノは当然まだつぼみもつけていないけど、八重桜は七分咲きでした。きれいです。

【下り坂】
Down_hill

【登り坂】
Hill_crimb


 熊襲広場から下りて行く道は13%の傾斜で結構な坂。眺めれば13%という数字以上の勾配を感じる。ここをいったん下ってみる。登りを振り返れば、やはり13%の標識が。ここからは関之尾方面に抜けることになるが、そちらの道はあんまり面白くないので、坂を登り返すことにする。体感的には13%以上の坂だよなあ。カンビアーゴはローギアがあんまり甘くないので、途中で立ち漕ぎを使って登坂。座って登れる筋力を身につけたいなあ。それにはトレーニングあるのみか。

 登ってからは元来た道をおり返し、桜並木に抜けて帰宅する。

本日の走行距離:30.4km

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February 13, 2009

河豚料理@笑福(都城市牟田町)

【笑福】
Shop_2

 冬といえば河豚である。
 寒くなると、テッサ、テッチリ、白子焼き、雑炊…食いたいくなるなあ。
 都城でも、和食屋や居酒屋で河豚の刺身は出てくることはあるけど、コース料理で出てくる店はないと思っていた。しかし牟田町をぶらりと歩いていると、看板に「ふぐ」の文字のある店がある。戸を開け、河豚ありますか?と訪ねると、予約してないと用意できなとのことだ。
 それゆえ改めて日にちを決めて、予約をする。コースは5000円からとのこと。料金はともかくとして、河豚刺し、河豚鍋、唐揚げに加えて、白子が出てくるコースにしてほしいと要望すると、白子は当日市場に出ていないといいものが出せないとのこと。だから当日なければ、冷凍の白子になりますとのことであった。をいをい、という気もするが、ま、海から離れた都城市では仕方ないか。

 そして当日を迎え、河豚料理コース開始。

【ヒレ酒】
Hirezake

 なにはともあれ、まずはこれ。
 じつのところヒレ酒を美味いと思ったことも、河豚料理にあうと思ったこともぜんぜんないのだが、アルコールを飛ばす点火とか、蓋をとったときに立ち上る強い魚の香りとか、冷めるとともに魚くさくなって飲めたものではなくなってしまう欠点とか、いろいろと個性の強い飲み物であり、冬に一度は体験しておくべき風物詩的なものと思っているのだ。

【河豚刺し】
Globefish_raw_fish

 この店ではあまり寝かしていない新鮮な河豚を切っているようで、河豚刺しは少し厚めで、歯ごたえがよい。甘味をほんのりと感じます。カワハギの肝も付け合せに出ており、ときどき肝を巻いて食べると、味にアクセントがつく。
 今日連れてきた2名はこんな大皿に盛られた河豚は食ったことがないから食い方が分からないという。(なんじゃ、それ)とりあえず、5~10枚ごそっとすくって食べるのは反則だから、それだけはしないようにと説明しておく。

【河豚唐揚げ】
Fried_globefish

 トラフグの身は大きく、その大きめの身の唐揚げは、ぷりぷりと弾力豊か。いい河豚を使っています。味付けは少々塩味が強かったか。

【白子焼き】
Testis

 河豚料理のスター白子。
 本日は、運よく2個いい生の白子が入ったそうで、たしかに丸々と太った白子です。客は3人、白子は2つ。白子を切って焼くわけにもいかず、焼き白子は2個出てきた。当然スポンサーの私が一つを食べ、もう一つを2名で半分ずつにして食べることにする。
 遠火でじっくりと焼かれた白子で、パリッとした皮の食感、ほどよい温度のねっとりとした白子、上手な焼き方です。旨みも十分。みなさん、美味い美味いと、喜んでいます。

【河豚鍋】
Boiled_globefish

 肝心の河豚は出汁のために最初に放り込んだので、よく見えず。野菜の多い鍋であったな。野菜は人参、春菊、葱、椎茸、えのき、白菜それにマロニー。

【雑炊】
Porridge

 〆は雑炊。私が鍋奉行のようなことをやっていたせいか、材料のみを持ってきてくれて、セルフで雑炊をつくることに。材料は、御飯に卵に葱にポン酢に塩。
 河豚の雑炊は、河豚の出汁を楽しむためにあるわけで、卵と塩少々でつくるのが私の好み。葱やポン酢を入れるとせっかくの繊細な河豚の香りがと味が邪魔されてしまう。そういうわけで、こういうシンプルなものに。

 雑炊後はデザートに苺が出てきて、腹いっぱいとなる。
 全体的にきちんと調理された河豚料理を楽しむことができた。ふらりと入った和食屋の河豚料理で痛い目にあったことが数度あるけど、この店のはしごく真っ当な河豚料理です。

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笑福(活魚・ふぐ・寿司) 都城市牟田町18-3-1F TEL0986-23-8788

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書評:ローマ亡き後の地中海世界(下)

Ruins


 ローマ帝国が滅び、地中海が無法の地となり、アフリカ北部に海賊を業とする者たちが現れて地中海を荒らしまわり、地中海沿岸に住む人は恐怖の日々を迎えることになった、というのが前巻の内容であった。

 本巻では、今までは一応は非合法的存在であった海賊が、なんと合法化され、海賊組織が拡大されるという、由々しき事態が生じた時代について語られている。

 16世紀前半、オスマン帝国にスレイマン大帝という傑物が現れる。領土獲得に燃える大帝のもと、オスマン帝国はヨーロッパ東部を飲み込んでいきながら、領土を拡張し、その結果地中海沿岸は3分の2がオスマン帝国の地となる。
 当時のオスマン帝国は、ヨーロッパに対し、文化・文明ともに圧倒していたため、ヨーロッパ全土がその支配下に陥ってもおかしくはなかった。しかし、基本的に内陸国であるオスマン帝国は、強い海軍を持ってなく、正規の海軍はあきれるほど無能であり、そこがネックとなって、ヨーロッパの侵略は一定以上進まなかった。
 スレイマン大帝は海軍強化のために思いきった手をうつ。自国では優秀な海軍は組織できない。そこで海の戦いのプロである海賊の頭領を軍総司令官に招く。傭兵ではなく、公式に正規海軍のトップに据え、海軍を組織しなおしたのだ。これにより地中海の海賊は、オスマン帝国公認の存在となり、その略奪行為は加速度を増し広範囲となり、大規模になる。
 オスマン帝国の海賊海軍は、当然ながら略奪行為に加え、国家レベルでの海戦を、ヨーロッパに対して挑むことになる。これに対抗すべきヨーロッパ諸国は、合従連衡なんて言葉はなきに等しく、お互いに足の引っ張り合い、引きずりあいにばかり力をいれ、強大なオスマン帝国に対する共同戦線をはることができない。
 ヨーロッパがオスマン帝国の海軍をなんとか退けることができたのは、ひとえに、当時のヨーロッパのなかで唯一まともな戦術、戦略をもつ海軍を有するヴェネツィアという国が海戦の司令塔となっゆえである。
 ヴェネツィアという国は、他の国々が、宗教やらイデオロギーや面子やらにこだわり続けるなか、一貫して現実的思考をする国であった。国を益することに対して、生々しいまで現実的思考を行い、行動する。…だいぶ前に塩野氏の「海の都の物語」を読んだとき、泥の干潟のうえに生まれた人工国家が、欧州のなかで最も富を得、最も美しい芸術を生み出す栄光の日々を送り、やがてゆるやかに衰亡していく物語に、ロマンチックで幻想的なものを感じたが、じつはこんなに現実的な国だったことを知って、少し驚いた。というより、「海の都の物語」でもそのことは書いていたはずなんだけど、読み方が甘かったか。

 地中海の海賊は、オスマン帝国の弱体化と、産業革命に成功したヨーロッパ諸国の興隆によるアフリカの支配によって、ようやく終焉する。

 地中海世界がローマ帝国亡きあと、海賊が跋扈する地になってしまったのは、「犯罪行為は罰せられる」という、人間社会の法ルールが機能しなくなったからであった。
 ローマ帝国が地中海世界に与えたものは法秩序である。国家が国民の安全を保障し、法体系を整備し、国民に遵法精神がいきわたれば、国家はかならず繁栄する。国家の衰退は、国家が安全を保障できなくなり、国民に遵法精神が失われたときに起きる。

 そして、今なお北アフリカの地は、ローマ亡き後の世界である。

 上下巻をそろえて初めて全容が見える表紙の遺跡は、北アフリカ、リビアのレプティス・マグナである。この地中海交易の拠点地として栄華を極めたローマ時代の都市は、今は砂漠のなかの廃墟となっている。はるか昔のローマ時代はここには法秩序があり、地中海のあらゆる人が集まる繁栄の地であった。しかし、今、国家がまともに機能しないこの地では、人は訪れることも、定住することもなく、かつての大都市は砂に埋もれていくしかなかった。
 砂から掘り出された遺跡のあまりの壮大さと美しさは、国家というもの、政治というもの、法というものが、いかに人間にとって大切かを物語って余りある。

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ローマ亡き後の地中海世界(下) 塩野七生著 新潮社

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February 12, 2009

寿司@紫光(鹿児島市)

 天文館にある寿司の名店、「紫光」にて鮨を食う。
 光もの、マグロ、穴子などは江戸前で、白身系統は塩や柑桔系を用いた小倉系の寿司と、ハイブリッド形式の寿司屋である。
 本日はまずおまかせで頼む。白身、貝類、光もの、赤身、ヅケ、中トロ、大トロ、穴子、玉子等々。そのうちのいくつかを。

【コハダ】
Kohada

 〆ものは、〆すぎず、素材の香りをうまく残した九州風のもの。丁寧な仕事をしています。
このコハダは2枚づけ。これくらいのサイズが一番美味しいと思われるが、今の時期にこういうコハダをきちんと仕入れているのはたいしたものである。
 握りは、ふんわりやさしく握られ、口の中にいれると、ほろりとほどけていくタイプのもの。上手な握り方です。

【中トロ】
Tuna

 マグロは三厩(みんまや)のもの。近頃三厩のマグロの名前をよく聞くなあ。同じ津軽海峡にいても、大間や戸井のものとは、食べるものが違うので微妙に味が異なるそうだ。
 紫光ではマグロを築地から仕入れており、以前は藤田水産のものを使っていたそうだが、この店のスタイルには合わないと判断し、別の業者のマグロを仕入れているとのこと。
 業者はともかくとして、この店のマグロはよいです。九州の寿司屋のマグロでは、私はここのマグロが一番好きで、いつもマグロは追加して頼んでいます。

【イカ】
Squid

 イカは河庄風に松傘切りをして、それを少々炙る。みためも、歯ごたえもよし。

【穴子】
Conger

 穴子は柔らかく煮られ、それを炙って香りをつけた、伝統的江戸前のもの。
 鮨屋の技術はだいたいコハダと穴子で分かりますが、見事なものです。

 紫光を初めて訪れたとき、まずは鮨ネタのレベルの高さに感心した。これは、福岡市でトップレベルの素材を出す店…たとえば田可尾とかに十分に張り合えるレベルだと思う。これほどの素材を用いた鮨が出るからには、鹿児島市の住人の求める寿司のレベルが高いのであり、鹿児島市おそるべしとの感想をまずもちました。(似たような人口の熊本市に以前住んでいたことがあるけど、ここまでの店は残念ながら、なかった)

 この店の寿司は美味いですね、腕も素材もたいしたものですと私が言うと、店主は、「寿司職人は美味い寿司を出すべき努力はしても、習得できる技術には限界があります。美味いものが好きな客がいて、その客の求めるものによって、職人は引き上げられていくので、美味い寿司を出す店には、なによりもいい客が必要なのです。当店の寿司が美味いのなら、それはお客のおかげです」と謙虚に述べられる。
 鹿児島市で店を開いて22年、客とともに成長してきた店なのである。
 そして店主は、自分の寿司をわざわざ食べに来る人がいるのはたいへん有り難いことなので、店はいつでも開けていたい、だから祝日にも店は開けているのです、と言う。そういうわけで、紫光は日曜・祝日も開店しています。休日に寿司を食べたいと思ったとき、とても便利です。

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紫光 鹿児島市東千石町9-22 TEL 099-227-2388

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February 10, 2009

映画: 007/慰めの報酬

 冒頭いきなりの激しいカーチェイス、いったいどういう理由で行われているのか分からぬまま、アルファロメオの攻撃を受けたボンドカー・アストンマーチンがぼろぼろになりつつ敵を撃退、命からがらボンドが基地に到着。トランク開けたところ、Mr.ホワイトが縛られて入っており、前回からの続きであることが分かり、カーバトルの意味がようやく判明。Mr.ホワイトの足を撃って身動きできなくしたのち、尋問のためアジトに連れて来る途中で、敵襲にあったわけですね。
 しかし、そんなの最初から分かるわけなし。少々不親切な映画である。

 Mr.ホワイトは圧倒的な力を持つ所属組織の庇護によりあっさり脱走。その手下を追いかけ、ボンドはイタリアの観光地シエナで大活劇を演じる。文化遺産を破壊しながらの追いかけっこって、このシリーズの約束事になっているのかな?

 舞台は、ハイチ,オーストリア,ボリビア,ギリシャ,ロンドン等々、めまぐるしく変化し、各国の観光案内をしている。それぞれ、その国の良さと悪さが、よく描出されています、はい。

 ボンドは前作で、スパイを辞めても得る価値のある、一生一緒に暮らせる恋人に出会えたつもりだったのだが、その恋人の裏切りにあい、なぜ自分がそういう羽目に陥ったとの私憤と、それと、おおげさに言えば「世界を救う」公務の遂行と、そのどちらに対しても凄い精神のエネルギーを発散させて、全編で(半ばやけくそ気味に)活躍する。
 あまりに活躍ぶりに、雇い元のMI6および英国政府が怖気をふるい、ボンドの行動を制約してしまう。その制限のなかで、どれだけ非情に、ボンドが腕をふるうかが、後半の見所。私のような一般人は、「いくら任務のためといえ、お前の恩人・関係者をむやみに犠牲にするなよ」と言いたくなるが、ボンドは諜報員のプロだから、任務の遂行に関しては、なんら妥協がないのである。

 このシリーズは、英国最強のスパイ、ジェームズ・ボンドの誕生劇をつらつらと語っていくものだそうだが、2作目にして、ボンドは既に最強に近い。あれだけの憤怒(恋人を殺された)を心にしまいながら、やってることは過激にみえて、きちんと感情を(なんとか)コントロールしながら、任務を最適なレベルで達成している。

 ダニエル・クレイグは、歴代のボンドのなかでも、ショーン・コネリーを越えて、最も適役だと思う。
近年の007シリーズの映画に出てくるボンドは、妙に優男ばかりであったが、スパイは肉体が強くて、女たらしであれば、いいというはずはない。スパイ(≒intelligence agent)は、あらゆる職業中、最も知性的な職業であり、スパイには第一義に知性が要される。
 それに、だいいち原作のジェームズ・ボンドは、なにより知性の人であろう。

 ダニエル・クレイグは、強力な知性を感じさせる俳優であり、それに加えて肉体的な力強さも十分に感じさせくれる俳優だ。
 007シリーズは、しばらくは彼に演じてもらえば、安泰ではないでしょうか。

<見終わっての雑多な感想>
 ・飛行機内のバーでの、ボンドの「眠れない男」の描写が鬼気迫るものがあった。
 「眠れない男」といえば、文学史上では、誰しも「マクベス」を思い浮かべるしかないけど、「悲劇マクベス」は、タイトルロールの「マクベス」の、王位簒奪の野望から、大きな罪を犯し、その罪を背負いながら突っ走る、あの絶望的な疾走感が印象的な劇であるが、比較するに、ボンドも同様に、己の私生活と任務の懊悩と焦燥から、必要以上に突っ走ってしまう。「眠れない男」は、どうしても突っ走ってしまうのだ。(徹夜経験あるものは誰しも同意するだろう)
 そして、ボンドの知性と理性は眠っていないので、(マクベスも同様だったけど)、その行為の流れは正しいのだが、必要以上に性急さがあるので、周囲の誤解を招いてしまう。その、自分の意識と、周囲の認識とのアンバランスが見ものとなっている映画ではある。
・この映画、今までの007の映画へのオマージュが、数多くある。私は5つくらいは確実に指摘できるけど、あといくつか、あやふやなものがあった。マニアな人は、10以上は指摘できると思う。


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007/慰めの報酬

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February 08, 2009

映画:余命

 現役外科医である主人公は、結婚10年目にして子供を授かったことを知るが、その喜びは束の間であった。しばらくして10年前に患い、手術を受けた乳癌が再発してしまう。それも炎症性乳癌型の再発という極めて悪性度の高い形式での再発であり、根治は望めず、いつかは必ず乳癌で亡くなることになる。彼女は自分には2つの選択枝があると考える。一つは、妊娠を継続し子供を生むこと。そうすると出産するまで癌に対しての治療は出来ず、また妊娠継続により癌の進行が速くなる可能性が高く、彼女の死期は早まる。もう一つは妊娠継続をあきらめ、ただちに癌の治療を行うこと。子供は望めないが、病状の進行を抑えることにより、子供を生むことを選択した場合よりも、長く生きることが出来る。
 彼女は子供を生むことを選択する。いずれにせよ乳癌で必ず死ぬ運命なら、せめて子供を残したいと願ったのである。
 現実的には、映画のあとのほうで、主人公の病状を知った友人の女性医師(かつ治療担当医)が、主人公を平手打ちして、「自分一人で決断するな。ほかにも方法があるだろう」と叱り飛ばすように、これは二者択一しないといけない問題ではなく、二つの方法のあいだにもう少しましな落としどころがあるはずだが、主人公は、やけに思い切りがよく、潔い人なのである。

 子供を生むということを決意した結果、彼女の残された時間は少なくなる。医師という職業のせいで、彼女は自分が助かるのはノーチャンスであることを知っている。残された日々は貴重だ。その日々に、なにをすればよいのか。
 ここで彼女にプロジェクトの立案が課せられる。

 彼女には夫がいた。その夫は医学部は卒業したものの、医師免許を取得せず、趣味のカメラ好きが高じて、カメラマンとなっている。しかしそれで食っていける腕はなく、妻の収入に支えられての、主人公の親戚のなじるごとく、ヒモのような存在となっている。いわゆるダメ亭主だ。
 彼女は夫がそうなってしまったことに、自分にも責任があると感じている。そして、このままのダメ亭主には、とても子供を遺していけない。だいいち子供を育てる収入さえないではないか。

 彼女は、夫を再生させるべく、一人立ちさせるべく、ハードプロジェクトを発動させる。それは妻が最初の子を妊娠しているときにはありえないようなプロジェクトであるが、主人公はやけに思いきりのいい人なのでそれを決断する。
 そして、当然それは夫にとっては、いささか厳しすぎるプロジェクトである。はたして彼は、蘇って、戻ってこれるのか。
 そのプロジェクトにより、夫は、妻の初めての妊娠・出産という、夫としては一番妻の傍についてやりたい時に、太平洋はるか南のはての孤島、鳥島へ3ヶ月間のアホウドリ観察という、あらゆる状況のうちの極限に近い仕事をさせられるのである。

 映画は主人公の視点から撮られているので、主人公の気持ちになって観てしまうけど、これよく考えると夫からすれば不条理劇である。
 活発に働く女性のもとで、彼女を支えながら、ぬくぬくと専業主夫(いや、カメラマンとして多少の収入はあったみたいなので、いちおう兼業主夫か)を一生やるつもりが、妊娠した女房から、(今まで精神的に、家事的にサポートしてきたはずの女房から)、いきなり穀つぶし呼ばわりされ、離島へと飛ばされる。こういうことされたら、普通は女房から縁切りを迫られたと思うよなあ。じっさいに映画では夫は、離島で縁を切る決意をしたわけだし。

 映画は進み、主人公は出産後、癌の進行で全身状態は悪化し、とにかく精神的にどうにもならなくなってしまう。一番支えてほしい人は自分が荒治療で離島に追いやってしまい、3ヶ月たても戻ってこない。周囲の者も精神的に参ってしまい、もうこうなると夫に頼るしかないと、夫をヘリコプターを使って八丈島まで運び、それから強引に連れてきた。
 病床に横たわる妻は帰って来た夫を見るや、殴りかかって激怒する。「なんで、今まで帰らなかったんじゃ~!」 夫からすれば、「なに言っとるんじゃ」と返したくなるだろうけど、そこは我慢して謝罪する。できた人なのです。

 私が思うに、主人公の行動、言動は空回りしている。一人で考え、一人で決断し、一人で全てを負い込む。いままでそういうライフスタイルを貫いてきたからそうしたいのだろうけど、結婚したからには、妊娠したからには、一人ではないのだ。妊娠継続に反対するに決まっているからと夫には癌の再発を秘密にするが、それを秘密にしたことがどれだけ夫を傷つけるかに対して考えた気配がない。それこそ夫が逆のことをしたら、自分はどう思うのかくらい想像できないものだろうか? 互いに支えあってからこそ夫婦だろう。そうじゃないと、夫婦の意味がない。

 とりあえず、夫再生、夫婦再生の物語はこのへんで一段落して、残りは、夫の妻を支える日々の話となる。

 映画のクライマックスは、故郷の海を眺めながら、車椅子に乗る、死に近き主人公が、息子を頼むとせつせつに夫に語るところ。彼女がほんとに欲しい思い出は未来にしかなく、自分が決して得られないその思い出を、夫に語りだす。それに、ただうなずく夫。
 カメラワークは妻の視点となっている。故郷の夕日の海、死を前にした人が見る風景は、なんと美しく、なんと切実感を持って、胸に迫ってくるのであろう。
 ここのシーンは泣けます。この5分間の、松雪泰子畢生の演技だけでも、「余生」という映画見る価値あり。というか、今年の邦画は、たぶんこの映画がトップの座を得ると思う。

 そうして、エピローグ。
 主人公が亡くなったのち、夫は再婚せずに男手一つで子供が立派に育ったことが語られる。子供は海の夕日を見て、夕日への感動を述べる。命はつながっている、確実に。


 <見終わっての雑多な感想>

 ・日本の映画、役者のレベルが上がってきたなあ。主役も脇役もほんとにいい演技をしている。一時期の低迷期を邦画は抜け出していると思う。
 ・松雪泰子は前の映画のデトロイト・メタル・シティの女社長役があまりにはまり過ぎていたため、あのエキセントリックな印象がまだ残っていたけど、この映画みると、気鋭の外科女性医師、それに末期癌の患者にちゃんと見える。さすが、女優。
 ・主人公の故郷の設定の「加計呂島」、普通の島であって、あまり観光名勝っぽくなく、それゆえかえってその自然な美しさが、主人公の最期の時を過ごす地としてふさわしかったと思う。

……………………………………………………
映画「余命」公式HP

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February 07, 2009

黒石岳森林公園

 1月の寒さからいって今年の冬はかなり寒いのではないかと思っていたが、2月になるとすっかり寒気がゆるんでしまい、暖冬に突入である。自転車乗りには有り難いけど、スキーヤーとか山登りする人にとっては困った現象しょうな。
 2月7日は晴天でポカポカ陽気。小春日和である。
 本日は黒石岳にでかけることにする。以前陣ケ岡に登ったとき、北西方面の山並みが自転車にほどよい高さに思え、地図で調べるとそれは黒石岳森林公園のようなので、ここを目的地とした。

【交差点】
Sign_board

 2号線、右へは大川原左へは牧之原の標識のある交差点で(ここに来るまで20km走る)、左へと曲がり491号線に入る。ここからの道は、川沿いであったり、田圃のなかであったり、いかにも田園的風景が続き、サイクリングコースとしてお勧め。だんだんと高度をましていき、右に曲がると黒石岳森林公園という標識がようやく現れるので、そこを右に曲がって黒石岳に取り付く。

【川沿いの道】
Riverside_road

【頂上近く】
Summit_view

 取り付いてすぐは激しい坂が続くが、そこを越えるとだらだらした坂になり、あっさりと森林公園駐車場に着いてしまった。このコース、取り付くまでに高度をかせいでしまっているので、ヒルクライムとしては、あんまり面白くないコースだな。

【森林公園駐車場】
Road_to_summit_2

 駐車場からは黒石岳頂上に向かう、未舗装の歩道と車道(?)がある。車道のほうは、石がかなり出ていて、自転車に乗ったまま登るとパンクしそうだったので、降りて自転車を押して登ることにする。まあ、よく考えればわざわざ自転車を押して登る理由などないのだが。駐車場に自転車置いて、空身で登るのが普通のやりかただ。

【不思議物件】
Water_tap

 途中で不思議物件発見。頂上より10メートルほど下の高さに、水道蛇口があります。ひねればちゃんと水が出ました。登山者用なんだろうけど、べつにこんな中途半端な位置に設置しなくとも、山頂か駐車場にありゃいいと思うのだが。どこから水を引いているのだろうと思ったら、頂上に貯水槽みたいなものがあったので、そこから引いているのでしょう。

【黒石岳山頂】
Summit

 意味もなく自転車を連れてきて、頂上着。見晴らしよいはずだが、冬なのに温暖な気候のせいで空気が霞んでおり、遠くの山はくっきりとは見えず。さすがに黒石岳そのものはよく見渡せるが、森林公園という名前のわりには、さして木は生えていず。

【北永野田駅】
Station

 帰りは木原方面に下りる。登ってきた道はひたすら上りの道だったが、こちらはアップダウンの多い、疲れるコース。いったんは2車線のまともな舗装路に出るが、そこからはどんどん田舎道になっていき、ほんとにこの道が駅に出るのだろうか不安になるうち、線路が見えてきて北永野田駅に到着。これで終わりというわけでなく、駅から2号線に入る道が、激坂。なかなか楽をさせてくれないコースでした。

本日の走行距離63.2km

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February 06, 2009

不思議物件@城たいが氏のカレンダー

 不況の影響はあちこちに現れており、当職場では、まずカレンダーに現れた。
 職場にかけられているカレンダーは、いつもは出入りの業者がサービスで企業名入りのを持ってきてくれるのだが、今回は、経費節減のためであろう、どこの業者もカレンダーを持ってこない。

 年が明けても、新しいカレンダーが来ないので、職場にはカレンダーがない。いや、あることはあるのだが、それは平成20年度のものであって、12月のがそのままだ。12月のには、1月のが小さく載っているので、いちおう今年も使えることは使える。しかし、その使える寿命は短い。
 カレンダー、ないとどう考えても不便である。
 それで、誰かが新しいのを持ってこないといけないはずである。こういうのは我慢比べみたいなもので、最も我慢できない者がどこからか持って来るであろうという、いいかげんな考えのもと、職場にカレンダーが来るのをみな待っている。

 そして一番我慢できないのはどうやら私のようであった。
 いくらなんでも2月が近いのに、新しいカレンダーがないのは変であろう。カレンダー、買おっと。
そして、どーせ買うなら、普通と違うカレンダーがいい。きれいな風景とか、きれいな人とか、きれいな絵が載せてあるありきたりのものより、一年間職場に妙なインパクトを与える、そんなものがいい。
 なにがあるか。
 すぐに、ひらめいた。

 由布院に行くので、あそこの妙な店に面白いカレンダーが売っていたはずだ。

【妙な店】
Poemhouse


 その妙な店は、「心の詩人城たいが 詩の館」である。
 店名からは、なんのことやらよく分からん店と思われるであろうが、中に入ってもよくわからん店である。ようは、城たいが氏という「詩人」が、詩を書いた色紙とか、カレンダーとか、あるいは酒とかを売っている店である。

 その詩は、いちいち紹介するのはやめとくが、一見すれば、出来の悪い相田みつを風の詩くらいにしか見えぬが、じつは奥が深い。(はずだ)
 この世の生きとし生けるものの、その存在、行動を肯定している詩だけど、その楽観的人生感の裏にあるやけくそさが、変に心を打つ。
 このやけくそさは、好きだ。

【とりあえず、そのカレンダー】
Calender

 城たいが氏は、私は一度ナマで見たことがある。
 城たいが氏は、小林・えびの地区では伝説的な人であって、この地区で幅広く事業を行っていたが、バブル崩壊の影響で全ての職を失い、それでも不屈不蟯の努力で、えびの市に「日本一怪しい公園」を開いた。豚が歌い、木に登り、水を吐く。そんなオブジェが園中所狭しと並べられているまことに怪しい公園であった。しかし、その怪しい公園で最も怪しい存在は、当時は私が名も知らなかった公園の管理人城氏であり、日本風ヒッピースタイルの城氏が、公園の売店の奥からぬっと現れたときは、この怪しいオブジェの作者がこの人であることを、まったくもって納得したものであった。

 怪しいけどとても愉しい「日本一怪しい公園」は、残念ながら閉園してしまい、荒地となって放置されている。
 ただ、このたぐいのものを愛好する人が、webに記録として残してくれている。そのwebページを紹介したい。

日本一怪しい公園


 ついでながら、このwebページの作者のHP、私のようなB級スポットが好きな者にとっては、宝の山みたいなものであって、重宝させてもらっています。

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February 05, 2009

土産@B-speakのPロール (由布院)

 ロールケーキなんてどこにも売っているし、つくり方にそんなに差はないはずだが、由布院のケーキ屋B-speakのロールケーキは別格の存在みたいであって、これを土産に持って帰ると、たいへんに喜ばれる。

 Pロールは私の周囲の者だけに人気があるというわけではもちろんなく、B-speakは由布院屈指の有名店であって、休日など、ケーキを買える整理券を求める人の列がずらりと並ぶのは由布院の名物(?)ともなっている。
 並んで待たなくとも、予約をすればちゃんとケーキは買えるのであって、予約を私は勧めますな。5日前から予約を受けつけていると、店のHPには載っている。

 B-speakは無量塔の関連施設である。
 もともと無量塔でアルバイトをしていた人が、都会のケーキ屋に修行にでかけ、自分はB級の腕ゆえB級の菓子しか作れないけど、ロールケーキだけにしぼって頑張れば、美味しいロールケーキを作ることができるはずという信念のもとに独自のロールケーキをつくり、そしてその最初の信念をもとに、Bの文字をつけた店を出した。なんとも弱気のようで強気のような、奥ゆかしいようであつかましいような、そういう妙な由来を持つ店名なのである。
 B-speakは今では抜群の知名度を持つ店となったわけで、店の名前をA-speakに変えてもよさそうなものだが、ずっとそのままである。イチローが背番号51をつけ続けているのと同じようなものなのかな。

 無量塔に泊まると、前日にPロールの予約を受け付けてくれて、そして出発日に宿に持ってきてくれるので、便利である。宿からそのまま車に詰め込み、土産に持って帰られる。

 Pロールは、甘さおさえめ、クリームも上品な味で、生地はふわふわに柔らかい。あまりに柔らかく、ナイフを入れると生地が沈んでしまい、すぱっと切るのが難しい。きれいに切るには、温めた、切れ味のいいナイフが必要であります。

【Pロール プレーン】
Plain

【Pロール チョコ】
Chocolate


……………………………………………………
B-speak

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February 03, 2009

不思議物件@豆めき用ピーナッツ

【落花生】
Been

 2月3日は、あたりまえのことながら節分の日である。
 「鬼は外、福は内」との掛け声とともに、豆を撒くという、季節感あふれる行事を行う日ということになっているが、…それって、普遍的やってるものなのかいな。
 あれは小学生の授業の一環か、あるいは神社の商業的行事としてやるか、くらいかしか、やっているのを見たことがない。
 社会人が勤める職場で、各年度ごとに豆まきをやっている姿など想像できないし、一般的な家庭でも、毎年豆まきやってる家ってのは、珍しいと思う。

 不肖私も豆撒きは小学生のときにしかしたことはない。
 あの頃は、宿題を忘れたとか、忘れ物が多いとかの生徒を、鬼役にして、他の生徒が豆を鬼役の小学生に目掛けて投げて、鬼を教室の外に追い出すという、そういう豆撒きをやっていた。
 今考えるに、かなり過激で、かなり残酷であると思えるが、昔はそういうことを平気でやっていたのです。今じゃ考えられないでしょうけど。
 そんな時代もあったのです。よかったのか、悪かったのか知らないが。(たぶん、悪かった)

 それはともかくとして、2月3日の節分の日に、職場の休憩所の机に、青鬼の面をつけた落花生の袋があった。

 これは職場で豆まきをしろとの総務からのお達しなのかな。
でも、落花生?
 落花生で豆まきをしろというのか。それはおかしい。こんなものを鬼にぶつけても痛くもないし、それゆえ、鬼は外とか言われても、鬼は出て行かないぞ。

 それで、私は、落花生などまくこともせず、ぽりぽりとお茶あてにして、食っていたのであるが、…つい、心に思ったことがある。
 落花生とは、いちおう豆だ。もしかして、これをまくのが豆まきの正解かもしれない。私はガキの頃の豆まきしか経験がないから、豆まきの豆は、大豆とばかり思ってたけど、それは地方の風習で、豆まきは、「落花生」が正解かもしれないのだ。

 今は、ネットという便利なものがあるので、さっそくGogleで検索。
Google豆まき・画像」
 やっぱり、豆は大豆だよなあ。配られた落花生はなにかの間違いに違いない。
 
 それで、私の心の中では、一件落着した問題だったのだが、PCでガチャガチャやってる傍で、見習いのF君が、やってきた。
 F君は宮崎生まれ、宮崎育ちの、完璧な宮崎人である。
 念のため、聞いてみる。

(私 )「宮崎は、節分の豆撒きは何を投げるんだい」
(F君)「落花生ですよ。もちろん皮付きの」
(私 )「(ガーン) …ふーん」

(妙な結論は出たので、ここでおしまいのはず)

(F君)「……………………………………………………?
先輩、言いっぱなしはないっすよ。いったいなんなんですか?」
(私 )「いや、宮崎で豆撒きが落花生でやってることがわかればいいんだ。
おれのところは、生の大豆投げていたんで」
(F君)「ええ? 大豆なんか投げているんですか? それじゃ投げたあと食えないでしょ。落花生なら、投げたって、あとで拾って皮むいて食べるわけだから」

 どうやら、宮崎では落花生を豆撒きで投げるのが、定例となっているみたいです。
 そしてその理由を知ると、じゅうぶんに納得できます。
 宮崎人は優しいから、鬼を傷つけることない柔らかい豆を投げ、さらにその豆を回収して食っていたわけです。

 「不思議物件」。全然不思議ではないわけでした。不思議物件の奥は深い。まだまだ勉強しなくては。

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