会席料理@無量塔(由布院)
久住登山を終え、登山口に到着。午後からの登山であったので、牧ノ戸登山口にたどりついた頃はちょうと夕日が山に落ちるころであった。それから、やまなみハイウェイを通り由布院へと向かう。日も暮れて、暗いなかでの無量塔着。道沿いに並ぶ灯篭に明かりが灯され、それが点々と並び、きれいであった。
荷物を車から出していると、宿の人が駐車場まで迎えに来てくれる。いつもいつも日が暮れてやってくる変な客ですみません。
なにはともあれ風呂に入る。無量塔の部屋風呂は、広々としたつくりになっており、ゆったりしたスペースのなかで、手足を思いっきり伸ばしてリラックスできる。湯質も単純泉でやわらかく、山登りと寒さで疲れた身には、心身ともに癒してくれる優しい湯だ。じんわりと、芯から、身体がぬくもってきて、疲労がどこかに溶けて消えていってしまった。気持ちいい。この気持ちよさを感じるとき、冬山に登ってよかったなあとしみじみ思ったりする。(←無量塔の風呂をほめなさいって)
風呂ののちは夕食。泊まった部屋は「袍」なので部屋食である。料理のうちのいくつかを。
最初はこの皿から。まずは器の落ち着いた色に、赤・黄・緑の食材の華やかな色が映える趣向がよろしい。見た目の印象とおり、海老のプリプリ感、牛蒡のシャキシャキ感、ほろ苦いタラの芽のさくっとした食感、いずれ訪れる「春」の溌刺さを感じさせる料理でした。
1月下旬といえ、まだ1月。睦月の八寸は、稲穂と水引を演出に用い、造りとともに御節風酒肴が供され、正月風。初めてみるけど、新趣向なんでしょうね。去年の1月の八寸は、以下のごときものだっし。まあ、こちらも、ピンクの花びらが利いていて、正月ふうめでたさは感じるとはいえるけど。
具材は虹鱒。これを京都風(?)に白味噌と酒粕仕立てで鍋に。
白味噌の上品な甘さと、酒粕の旨みがよく調和して、大人しめの味の虹鱒をうまく支えている。野菜の味は相変わらず力強い。
定番の牛肉五葷もろみ焼きに加え、地鶏焼、根菜焼き、芽キャベツ。
鶏肉が入ってきたのは新機軸だな。鍋で地鶏が出なくなったので、その代わりというわけなのだろうか?
無量塔の料理は、2~3年前までは、良質な素材、高度な技術を用いながら、出てくるのは見た目も味付けも「田舎料理」ばかりという、「高級田舎料理」とでも称すべく、一種特異な料理であり、面白かった。
しかし、無量塔併設のレストラン「アルテジオ」の料理人の影響とか、あるいは秋桜の元料理長新江氏の影響とか、あるいは客人の要請の多さからとか、あるいは、というかこれが最もな理由だろうけど、木村料理長の元々の志向ゆえか、ここ2・3年料理が、創作系会席料理に変化してきている。
旅館の創作系料理は、原価と技術のせいで、たいていは「なんちゃって創作系料理」になってしまうのだが、無量塔の木村氏は実力のある人なので、華やかで、広がりがあり、愉しい、(時々すべることはあるが)、見事な料理を出している。九州の旅館の料理では、ここがトップじゃないのかなあ。
似たような料金で「なんちゃって創作系料理」を出す宿を、2軒ほど知っているけど、そこの料理長は無量塔に一度飯を食いに来てもらいたいものだ。どこの宿とかはいわないけど。
ゆったりしたペースで、飲んで、食っていると、3時間かかり、10時半に。
Tan’s Barのラストオーダーぎりぎりの時間である。あわてて、Barに出かけることにする。
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