イタリア料理@トラットリア・デル・チェーロ(福岡市薬院)
福岡市のイタリア料理といえば、ワンパターンのごとく「サーラ・カリーナ」ばかり私は利用している。ここしか知らないというわけではなく、5~6年前に福岡市の主だったイタリア料理店を食べ歩き、最も気に入った店であったから通いつめているわけだが、いつもいつもというのも、私のイタリア料理に対する感性の幅が広がらないため、たまには違った店に行ってみることにする。
「トラットリア・デル・チェーロ」は3年ほど前に薬院に開店した店で、それよりめきめきと評価を上げ、すでに福岡市のトップレベルの店の一つに数えられるようになっている。ま、メディアの評価はともかくとして、この店は福岡在住の食通のH氏が勧めている店で、H氏の舌は信頼できるゆえ、初めての店では常に感じる一抹の不安もなしに食事に臨むことになる。
ランチを、チェーロセットにて。
アラカルト方式で、コースを組み立てるものである。
前菜には店の個性の全てが現れているというけれど、見た目の彩りの良さがまずよいですね。うまく調和が取れており、鮮やかではあるが、出すぎてもいない。味については、穏やかで、とんがったところもなく、普通に美味しい。
手打ちの生パスタのもちもち、つるつるした食感が素晴らしい。味付けもこれも穏やかで、素材の良さを引き立てている。
的鯛そのものも良いが、焼き方もほどよく、野菜との調和もとれている。確かに技術を感じる一皿。
これは面白い。ジビエといえ食材になるとは思いがたい羆を、食材の見極めにおいて信頼おける猟師から直接仕入れて、料理にしている。熊肉は独自の臭みがあるけれど、ほどよい温度で出されると、それが独自の香りとなり、ハープの香りに対抗できている。噛み応えある熊肉は、かみしめるたび「上質の熊」としか言いようのない味が広がる。この料理、温度が下がるとだんだんと「ケモノの肉」の味と食感に化けてくるので、最良のタイミングで出てくるわけであり、テーブルに出ればさっさと食べる必要あり。瞬間芸のごとき料理です。
野菜、魚、肉ともいいものを使っています。技術も当然確かです。
そして、料理の全体として、温和,柔和というところにうまくまとめていると思います。ようするに作り手の、もてなし、あたたかさを感じる料理です。
家庭的というべきか、料理自慢の母親が、一族の集まるハレの日に、存分に腕をふるって出してくれた料理、そういう印象を受けました。そして、イタリア料理とは、本来そのような料理なのでしょう。
店の名前にある「トラットリア」の意味が十分に納得できる、料理、空間、サービスでした。
坂井シェフはサーラ・カリーナで10年ほど勤めたのち、本場イタリアの料理店で修業して、今の料理の方向性に目覚め、日夜、美味しいイタリア料理を作ることに研鑽を重ねている人です。
福岡市の貴重なイタリア料理店であり、季節ごとに楽しみたくなる店です。
トラットリア・デ・チェーロ (Trattoria Del Cielo)
http://members3.jcom.home.ne.jp/trattoria_del_cielo/
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