久住山撤退記
今年は11月末くらいが紅葉の盛りであろうと予測し、そこに宿を予約して、久住に登山に行くことにした。九重の紅葉は、私は赤川登山口のコースのものが好きだ。赤川方面の久住山は雑木林となっており、色鮮やかに山肌が染まるし、山道には落ち葉が敷き詰められてまるで極彩色の絨毯のようになる。
そういうのを期待して行ったのだが…
紅葉の時期の予想は難しい。今年は寒波の訪れが早く、すでに落葉樹はすべて葉を落としており、枯木林となっていた。落ち葉の絨毯も、もう色を失い、ただの枯葉の山。まあ、こういう冬枯れの山はきらいじゃない。枯葉を踏みしめ、まずは扇ヶ鼻へ向かう。
【11月にしては、あまりに寒すぎる久住登山道】
しかし、頂上に近づくにつれ天候が悪くなってくる。頂上近くは雲がかかっていたのが見えていたので、天候が悪くなるのは予想していたが、なんと雲の中は霰であった。天気図によると今日はシベリア寒気団が張り出していたけど、もろにその寒気が九重を直撃している。その霰が横殴りの強風とともに顔にぶつかり、顔が痛くなる。顔が痛くなるのは我慢するとして、寒さはたいそうなものだ。風に体温がどんどん奪われてしまう。途中で、ノースフェイスのゴアテックスの雨具を着込んだから、楽にはなったが、それにしても尋常な寒さではない。
霰はいつしか雪になり、吹雪といっていい状態。視界が悪くなるなか、なんとか扇ヶ鼻頂上に着。
【なにがなんやらわからんが、扇ヶ鼻山頂】
さて、問題はここからだ。赤川口登山コースは、扇ヶ鼻に登った後、西千里ヶ浜を通って、久住山に登ることになる。今までは林のなかを通ってきたので、なんとか強風は緩和されていたが、ここからは寒風吹きっさらしの中を歩いていかねばならない。しかも視界は極端に悪く、下手したらホワイトアウトの危険あり。難易度の高い山行になる。
でも、なんども通ってる道だし、地図もコンパスもGPSも持っており、道迷いする可能性は低いと思う。そして「吹雪の久住」というスチュエーションは、それなりに進むのにそそられるものがある。ただし、装備に問題あり。紅葉登山の予定のため、秋用の装備しか持っていない。行動中はなんとか体温は維持できるが、休んだりしたら凍えてしまう。
11月とはいえ、今日の久住は冬山以外のなにものでもない。それも十分にハードな部類の。
進むべきか、退くべきか。
一昨年の10月、秋用の装備で猛吹雪の白馬岳稜線につっこみ、遭難事件を起こしてしまったTさんのことを思い出す。あれは悲惨な事故だったなあ。知ってる人も亡くなってしまったし。
吹雪の久住、なかなか経験できないから、つっこみたいのだが、万が一、素人が装備なしで遭難してしまったら、みっともないし、世間に多大な迷惑をかけることになる。それはよくない。
まったくの不完全燃焼であったが、ここは扇ヶ鼻で引き返すことにする。
それにしても久住山を撤退するなんて、…初めての経験だよ。
たかが久住、されど久住というところか。(久住さん、ごめんなさい)
下りは身体の筋肉を使わないから、身体が冷えたままである。どんどん体温が奪われていくのが分かる。寒い、寒いとわめきながら、なんとか登山口に到着。雪まみれで汚れてしまったズボンをはきかえ(スパッツさえ持ってきてなかった)、車に乗る。
はやく温泉に行って、身体を温めなくては。
さあ、急げ。
無量塔の極上の温泉が待っている。
【無量塔の部屋風呂】
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